それぞれのアレコレの続き。蛇足。

露鈴
ジョセシー
承花
ジャイジョニ

受け側が女体。
妊娠要素とかあり。


『それからのアレコレ』

露鈴:世界で一番美しい

「ベリーペイント?」
露伴が走って帰ってきたかと思いきや言われた言葉をつい繰り返す
「あぁ。」
「何?それ」
「妊婦の腹に絵を描いて元気に生まれるようにってお願いをするおまじないさ」
「ふぅん……もしかして露伴ちゃん、そのために画材買ってきたんじゃあないでしょうね?」
む、と眉を寄せる露伴の手にはここらへんでは一番大きな書店の袋が下げられている。書籍の他にも文具類も数多く扱っている店だ。
おそらく携帯のネット掲示板で読んだかなにかで衝動的に買い物をしてきたのだろう。
「当たり前じゃあないか」
「んもう!余計なお金渡すんじゃなかったわ!」
「いいじゃあないか!ちゃんと言われた通り買い物もしてきたさ!」
「そぉだけど〜!」
確かに頼んだ通りに買い物は済ませてある。そこは有難い。確かに有難いが
「そんな私のためにお金使わなくても…」
「いや、カラー原稿用の画材も減ってたから、それもついでに」
「………」
くそ、余計なことをいうんじゃなかったと数秒前の自分に舌を打つ。
そんな鈴美をよそに露伴はその場に座り込み画材を取り出し始める。
「ほら、そこ座って。足冷やさないようにブランケット掛けてさ」
「い、今からァ!?」
「なんだよ。嫌なのか?」
「嫌っていうか……」
嫌なわけではない。鈴美だってこのテのおまじないは好きだった。ただ、なんとなく気恥ずかしいものがある。
「なんかこう、お腹出すの恥ずかしくない?」
そう言いながらちらりと露伴を伺うと眉間にシワを寄せて不機嫌な顔をしている。
「お、怒ってる?あれ?なんでぇ?」
「どこが恥ずかしんだよ?」
「ふぇ?」
「それの何が恥ずかしいのさ。人間の神秘だぜ?妊娠てのは」
語りながら露伴は隣接された自分の部屋からおおきめの筆洗い用のバケツとパレットを持ち出してバケツに水を貯めるためキッチンへ行く。
「妊娠して強くなるってのはあながち嘘じゃあないんだろうな男には理解できないような痛みも苦しみもちゃんと耐えて、子供が生まれてきたら頑張ったねーって、一番頑張ってるのは自分なのに笑って。」
水が流れる音がしばらくして甲高い音が一瞬して水音が止まる。
なんでもない顔をしてキッチンから出てきた露伴はまっすぐに鈴美を見る

「ほら、恥ずかしくもなんともない。世界で一番強くて美しいじゃあないか」

普段口にもしないような言葉に胸が苦しくなる。そして次に漏れたのは笑いだ
「ふふ…」
「なんだよ」
「だって、露伴ちゃんの口から信じられないようなセリフが、あははは…」
「ッおまえなぁ!」
「うん。わかってる。大丈夫、嬉しい」
そう伝えると恥ずかしさで真っ赤になった露伴は黙り込んで戻ってくる。
ソファに座る鈴美の前にどこから持ってきたのか丸椅子を置いて座る
「…元気なコが産まれるわ」
「あぁ、」
「露伴ちゃんみたいに絵が上手くて、ひねくれたところは似なくていいけれど…」
「ハンッ!誰がひねくれてるって?」
「貴方よ」
「……何を描いてほしい?」
「そうだなぁ。ワンちゃん!」
「じゃあ昔君んちにいたアーノルドでも描こうかな」
「わ!嬉しい。」
嬉しそうに頬を染めて笑う鈴美をみて無意識に笑みが溢れる。不敵な笑みじゃない、幸せそうに笑う。

きっと目の前の彼と、これから生まれる子供と過ごす未来は世界で一番美しのだろう
かしゃかしゃと水を掻き混ぜる筆の音がした。


ジョセシー:天使が生まれた日

間に合わない

「っ…っはぁ!は、っはぁ」
自転車のペダルを我武者羅に漕ぎ続ける。息は既に上がっているがこんなところで止まっている場合ではない。
ジョセフは夢を見た。はっきりとは覚えていないがシーザーがいなくなってしまうという内容だけが頭の中を巡っている。
ただの夢だ。夢なんだと思いつつも落ち着いてはいられなかった。
病院から電話があってもう既に3時間経っている。電話に気づいた時にはすでに10件を登る数の留守電が母や兄妹、さらには友人のスージーQから入っていた。
朝よりは片付いたが溜まっている仕事をその場で投げ捨てて自転車で家を出た。

「ッこんなときに、車もバイクも、動かねえしよおおあああああっ!!!!」
苛々と不満が募り声を荒げる。家を出ようとしたタイミングで来客があった。しつこく帰ろうとしないのを無理やり帰ってもらいやっと家を出たら車もバイクもバッテリーがあがって動かなくなってしまった。
仕方なく自転車を使ったもののとうとう雪まで降り出した。

間に合わない。間に合わせなければ。
早く早くと自分を急かしやっと見えた病院にさらに足に力が入る。
駐輪場で自転車を投げ捨てるように降りて入口に向かう。正面玄関に行きかけてこんな時間に開いているわけがないと思い深夜入口に走る。
「っクソ…!!」
開ききっていない扉の間から縫うように入り廊下を走る。暗いフロアを横切り階段に向かう。向かう先は産婦人科3階だ
「っは……っはぁ」
切れる息をこらえながら階段をかけ上がる。ほぼ倒れ込む形で重いドアを開けてナースセンターに向かう。
ナースセンターのある場所は暖かい光が漏れている。今から行くと電話をしたからきっと残ってくれたのだろう。
「ッあの!!!」
「ジョースターさん!来られたんですね!!」
「遅れて、っすいません……あの、妻は」
「こちらです。」
やんわりと微笑みながら看護婦が出てくる。歩いていく後ろを小走りでついていく。
「あの……子供は…」
「落ち着いてください。昨日から個室に移ってもらったのはご存知ですよね?」
「えぇ、少しだけ顔を出したので」
「ならよかった。奥様ったら、ジョースターさんが来るまで寝ないで待ってるなんていうんですよ。自分も体力使って疲れてるのに。」
クスクスと笑う看護婦の言葉を聞いてわずかに落胆する。
体力使って疲れてるのに、ということは恐らくもう産まれたあとなのだろう。でなければいま病室のある廊下を歩いているわけがない。
間に合わなかった。と思った瞬間に緊張の糸が切れて涙腺がじんわりと緩み始める。
「さぁ、どうぞ。」
静かに扉を横に引き室内が徐々に見え始める。まず目に入ったのは姉と母だ。
「ジョセフ……」
なかにはいると母が歩み寄ってくる。
「ほかのみんなは……?」
「スージーQはさっきディオ君が送ってくれたわ。あとはみんな休憩室で休んでるわ」
「そうか……」
ベッド横のカーテンは締められていてシーザーの姿は見て取れない。
「お疲れ様……」
「ごめんな……姉ちゃん」
ジョナサンが小さく首を横に振る。
「シーザー、ずっと待ってたんだよ……赤ちゃんも一緒。」
「いつ、産まれたの」
「一時間くらい前かな。」
「そっか……」
1時間。たった1時間だ。
それでも悔しさがこみ上げる。
「僕たち、もう少ししたら帰るから。」
「ほんとに、ありがとう。」
「いやいや。それじゃあ、おやすみ」
「ん……」
背後で扉の締まる音がしたのを確認してからゆったりと足を踏み出す。数歩でカーテンの前にたどり着く。テーブルランプがほんのりとついて薄明るくなっている。

「シーザ、」
「ジョジョ…」
恐る恐るカーテンに手をかけて静かに開ける。
開けた先には起き上がったシーザーがこちらを向いていた。その手には小さな小さな子供が大事そうに抱かれている
「寝てなくて、いいのかよ」
「今まで寝てた。」
力なく笑うシーザーをみて枕元に座り込む。子供を抱いた腕は、この一日で痩せてしまったような気がした。
「ごめん。」
「しょうがないよ。こんな時間に来てくれてよかった」
「また、間に合わなかった………」
「また?」
「……夢を、っみて…」
「……聞かせて」
シーツに顔を埋めるとシーザーの細い指が髪を梳く。
「シーザーが、いなくなった」
「……いるよ」
「違う、そうじゃあないんだ……俺は間に合わなかったんだ。」
「……」
夢の中でシーザーはいなくなった。既のところで間に合わなかった。今回も間に合わなかった
「こんなことならっ……昨日帰るんじゃあなかった……!!」
「………ジョセフ」
不意に名前を呼ばれ顔を上げる。涙が頬を伝い落ちたのが冷たさでわかる。
「ほら、女の子」
「……」
シーザーに抱かれている子供の顔を見る。まだ短い茶色の睫毛で、俺に似たんだなぁと思う。穏やかな寝息を立ててはときどき口をもごもごと動かす
「こんなに可愛い。」
「うん、うん」
「髪の毛はお前似だな。」
「あぁ。」
「どんな子になるかな」
「……シーザーに似て可愛くなればいいね。」
「お前に似て、破天荒過ぎても困るな」
「元気って言って?」
シーザーが笑うのを見てつい笑いが溢れる。
「誰もいなくなってない」
「……」
「それどころか、こんなに可愛い娘が産まれてる」
「……あぁ」
「なんにも、お前は悪くない」
「……ん」
シーザーによりかかるようにして子供ごとシーザーの肩を抱いた。
「シーザーちゃんあったかい」
「お前が冷たすぎるんだよスカタン、外大雪だぞ」
「うっそん。」
締め切ったブラインドの向こう側にちらちらと白い光がぼやけて見える
「やだもー……」
「何できた?」
「自転車」
「はあっ!?」
声をあげてから焦って子供に目を向けるが以前眠っている。安堵した表情をしてからすぐにこちらに目を向けた。
「なんでまた……」
「車もバイクもバッテリーあがったぁ」
「うわぁ。」
ぐりぐりと頭をこすり付けるとくすぐったそうに身体を捩る。
「なまえ決めなきゃ。」
「そぉねー天使から天使が産まれたからなぁ。」
「バカ言ってんな」
軽く叱られたところで真剣に考え始める。
名前は考えてはいたがやはり今となってはどの名前もピンとこない。
「……」
もう一度目を窓に向ける。まだ雪は降り続いているだろう

「……ホリイ」
「え?」
「ホリイ、ホリイだよ!」
これだと言わんばかりにシーザーに嬉々として話す。
「雪が降ってこんなに静かで!クリスマスも近いし!天使から天使が産まれて!」
「待って!最後だけわかんない!」
「こんなに可愛くて……ほんとに…神様のこみたいだ」
ふと子供の頬に指を触れる。なめらかな肌を静かに滑る。
シーザーが小さな声でホリィ……と繰り返す。
「いいじゃあないか。うん。」
「でっしょー!」
「ホリイ、ジョジョにしてはセンスがいい。うん、可愛い。」
ジョセフの言葉も聞かずに嬉しそうに名前を繰り返す。目が幸せそうに細められていて金色の髪が目元にかかる。

「………俺頑張るね。」
「うん。幸せになろう。」
もう一度、力は込めずに肩を抱く。
先程までの焦りはどこかに消えて代わりにあるのは幸福感と満足感だけだった。

部屋は静まっている。きっと街も静かにねむっているだろう。

幸せに包まれながらジョセフはそっと目蓋を下ろした。



承花:君を待ってる

承太郎は家に帰って寝室のドアをあけた瞬間に怪訝そうに眉間にシワを寄せる。
「あ、おかえりー」
「何してんだてめえは」
ベッドの傍に座り込んで花京院が絵を描いている。肩には布団がかけられていて、どこから出したのか簡易テーブルの上にあるスケッチブックにペンを走らせる
「暇だからお絵かき」
「寒みぃだろうが布団入れよ。体冷やすな」
「大丈夫、座布団敷いてるから。それより見て!」
そう言いながら嬉しそうにスケッチブックをこちらに向ける。正直それどころじゃなかったがどうせ聞きもしないだろうとスケッチブックに目をやる。 可愛らしいタッチで海の生物が描かれている
「ヒトデだよ」
「見りゃわかる。」
「えへへ」
何が嬉しいのか笑う花京院はそのまま続けた。
「この子が生まれてくるまでにいっぱい絵を描いてね、絵本にするんだ。それで大きくなったらこれを見せて君のお父さんはこんな生き物を調べてるんだよー。って教えてあげるんだ」
「……あぁ」
「僕はいつでもそばに居れるけど、君はどうしても仕事でいないことが多いからこの子が君を嫌いにならないようにね!」
「うるせぇ」
ぐりぐりと頭を撫で回すと笑い声をあげて身を捩る。
手を離すと見上げて目を細めて笑う。
「楽しみだね」
「…そうだな。」
答えを聞くと満足そうにしてまた筆を取る。

あとどれくらい出会えるだろうか。ずっとずっと先のことを考えて思いを馳せる。

「元気で僕らのところに来るんだよー。」
「元気で生まれてくるんだぜ」
ふと口に出した言葉が重なってまた花京院が嬉しそうに笑う。


「僕らは君を待ってるよ。」


ジャイジョニ:おかえり

「ジョーニーィ……」

落ち着けって。そういうのは今日何度目だろうか。部屋の中を車椅子でうろうろしているジョニィは朝から落ち着かない様子だ
「これが落ち着いていられるか!?緊張とかしないのか!?」
「そりゃするけど落ち着いて茶飲めるくらいには冷静だぜ」
ニョホホ、とわざとらしく笑うと恨みったらしく睨み上げられるが何も怖くない。
「大丈夫だって、挨拶行った時も仲良くしてくれたろ?」
「そうだけど、あああもう!」
耐えられなくなったように声を上げる。お前さん面白いな。
「こんな母親で、いいのかな」
「……」
テーブルにカップを置いてジョニィの所まで歩いて目の前にしゃがむ。
「大丈夫だって。お前は立派な母親になる」
「……」
手を握ると微かに指先に力が入る。
そういえば養子をとる話をした時もこんなふうにあやしたなと思い返す。
「心配すんなよ。ジョニィ・ジョースター」
「…籍入れたからジョニィ・ツェペリだ」
「あ、そう?いやぁ慣れなくてなァ。ニョホホ」
「……えへへ」
照れくさそうに笑うジョニィを見て安心する。
そろそろじゃないかと時計に目をやる。施設の役員が子供を連れてきてくれるのは11時の約束だ。
11時まであと5分。

「…お昼ご飯は」
「ん?」
ジョニィに目をやる。
「お昼ご飯はあの子の好きなものを作ってあげるんだ。」
「……おう」
そういったジョニィは手を強く握って嬉しそうに笑ってみせる。

いつも思うのはなんだかんだいってこの子は強いなということだ。
心配していても知らないうちに強くなって、自分の知らないうちに歩いていってしまう。
手を引かれているのは自分の方なんじゃないだろうか。

「ジャイロも手伝ってね!」
「おう」
そんな話をしていると呼び鈴が鳴り響く。ジョニィはパッと手を離して車椅子の車輪を転がす
「ジョニィ、」
つい、引き止めるとジョニィが驚いたようにふりかえる
「何?」
「あ、えーっとぉ。」
何をいうか考えていなかった。気恥ずかしくて目線を外した。


俺のことも、構ってな

小さな声で途切れ途切れにそういうとジョニィは瞬きを繰り返している。失敗した
「何言ってんの?」
ですよね、と数秒前の自分を後悔していると言葉が続く
「当たり前じゃん!」
は、と顔を上げるといたずらが成功した子供のように笑ってからまた出て行ってしまった。
残されたジャイロは火照っている顔に手を当てて小さく呟く
「オーノー……」
してやられた、と思っていると廊下から自分を呼ぶ声がする。
よし、と気合を入れてリビングを出て玄関に向かう。


こんな話をしたのはいつだったろう

ねぇ、ジャイロ
ん?
もし、あの子が……僕らの子供になる子がね?うちに来たらまずいう言葉はいらっしゃいじゃあないんだよ
じゃあ、なんていうんだよ。
あのね―――


扉に手をかける。ジョニィに目配せをしたら小さくうなずかれたので押し開く


あのね、その子が来たら、こう言ってあげるんだ





「「おかえり」」




それからのアレコレ、おわり。
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