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	<title>文 - 多分、明日も</title>
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	<description>主に絵と文。多分明日もきままに更新。初めての人は説明文どうぞ。</description>
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		<title>銀のにさよなら</title>

		<description>Goodbye silver garden.

 冷たい感覚、…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ Goodbye silver garden.

 冷たい感覚、逆光で表情の見えない男のシルエット。鈍い痛み。――暗転

 白い天井、自分を覗き込む女性の顔。
――暗転

 病室…恐らく同じ場所。スーツの男。
――暗転

 染みるような痛み、痛い、痛い、痛い、緑色の泡
――暗転

 自分を見る深緑色の瞳が二つ
――暗転

暗い部屋

暗い部屋

 開かれる頑丈そうな扉、背の高い男

「おはようございます。シーザー・アントニオ・ツェペリ」
 凛とした声


――暗転




「――ふーん……で？」

 書類から目を上げた男の返答に表情ひとつ変えずに『ですから』と応える女。

「彼の処分を貴方に頼みたいのです。ジョセフ」
 ジョセフと呼ばれた男。ジョセフ・ジョースターは書類をもう一度捲るが、文を読んでいるわけではないだろう。

 【食人種】が食用として流通され始めてから三十年。【食人種】の効率的消費を見込んだ研究が始まったのもその頃で、ジョセフの就職先である研究所はその中でも大きな施設だ。
 最先端の培養液を利用した細胞復元。それを使って【食人種】の肉体を再生するというのが研究方針で、言ってしまえばただの人体実験だとショセフは常に思っていた。

 ジョセフが命じられたのはある被験者の処分。年月が経って、経過に変化が現れなくなった被験者が処分されるのは当たり前の事で、月に何人もの被験者が処分されて回収業者の手に渡るのを知識として知っている。
 しかしそれは専門の職員が行う仕事で、少なくとも入社四年の平研究員であるジョセフの任務ではない……いくら彼が目の前にいる女…研究所の最高責任者であるリサリサの息子だとしても。

  でもよぉ、と間延びした声は彼の癖だ。
「俺の仕事じゃあないんと思うんだけど？コレをお仕事にしてる部署の人達がいるでショ」
「これは貴方の為でもあるのですジョジョ」 
「俺のためだァ？」
 えぇ、と頷くリサリサに無駄な動きはなく美しい―それがジョセフを苛立たせる原因にもなっているのだけれど ]]>
		</content:encoded>
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		<dc:date>2014-11-25T09:42:06+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>ぜろからはじまる</title>

		<description>　その日は朝から雨が続いていて、ずっと…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　その日は朝から雨が続いていて、ずっと雨粒がそこら中を叩く音がしていた。

　廊下の隅で座り込んでしまった時も自分の息遣いと雨音しか聞こえなかったんじゃあないかと思うほどだ。

　その後、親切にも保健室まで連れて行ってくれた人がいて、保険医まで呼んでくれた。
　保険医がうちに電話をかけて、迎えが来るまでの間もずっと背中を撫でてくれていた。

大丈夫だ、大丈夫だと　知りもしない『その人』は俺の傍でそう繰り返しながら背中を撫でてくれていた。

　体育教師に支えられて保健室を出る間際、『その人』の名前だけでも聞きたくて足を止めて、力を振り絞って後ろを向いた。

　助けてくれて、ありがとうな、また、ちゃんと礼がしたいから、名前、教えてくれよ

　途切れ途切れに、聞き取りにくい声で伝えると『その人』は少し間があってからふんわりと笑った。

シーザー

…シーザー・アントニオ・ツェペリ、お大事にな

　少し低めの声で伝えられた名前を何度か反芻する。　この前の世界史の授業で同じような名前のやつが出てきたなとぼんやりと考える。
　あぁ、でも、こっちの方が断然いい。　天使のような、この人のほうが

　いつの間に雨が止んでいたのか、雲の切れ間から日の光が差し込んで、シーザーというその人は光に照らされる。金色の髪がとても綺麗に輝いて、自分の頬が不意に緩むのを感じた。

　そこから先、その日の記憶は残っていない。


ぜろからはじまる
■
　終業の号令が終えると一気に教室内がざわめき立つ。　昼休みになるとみんな、何人かで連れ立ってどこかへ行ってしまうからすぐに教室内は静かになるだろう。
　今まで使っていた教科書やノートをまとめているとふと視界に影が差す。
「シーザー、お昼にしましょう」
　スージーQ。高校で数少ない友人の一人だ。同性の自分から見ても可愛らしくて自分にとても良くしてくれる。
「あぁ、ちょっと待って」
　手早く教材を机の中に戻して鞄からコンビニの袋を持ち出す。

　　いつも天気がいい日は中庭に出ることが定番となっているので今日もその予定だ。
　教室から廊下へ出るとやはりここも人が多い。
　それほど歩かないうちにスージーQが『もう』とすねるような声を出す
「またコンビニご飯なの？」
「あぁー…」
　どうやらシーザーの手に持たれているものに文句があるらしい。学校へ来る途中にあるコンビニの袋だ。
「やっぱり一人暮らしだとお昼ご飯詰める時間もなくてね…夕食の残りとかを詰めれたりしたら良いんだろうけど…カレーとか煮物とか、作り置きできるものが多いからなかなかね」
「もう、だから私が作ってきてあげるって言ってるじゃない」
「だってスージーQだって受験、今が一番大事な時じゃあないか」
「そうだけど、ご飯作るのなんて一人分も二人分も一緒よぉ！」
　料理が得意な彼女は、一人暮らしのシーザーを気遣って何かと親切にしてくれる。シーザーとしてはとても助かるのだが、申し訳ないという気持ちとせっかくできた友人とは対等でいたいと思う気持ちからそれを丁重に断っていた。
「でも、お菓子作ってくるとちゃんと食べてくれるのよね」
「…仕方ないじゃあないか、スージーQのつくる料理が美味しいから」
「ふふ、嬉しい。そうやってもっと頼ってくれたらうれしいのに」
　クスクスと笑う彼女に苦笑を返しながら廊下を歩いている
　…その時だ

「――ツェペリ先輩ッ！」

　大声で呼ばれてつい肩が跳ねる。スージーQと『何事か』と目を合わせてから後ろを振返る。
　教室三つ分ほど向こう側、他の生徒も視線を向けるその先には一人の男子生徒がいた。高校生とは思えない高身長だが、指定された制服を着ているのでおそらく生徒だ。
　肩で大きく息をする彼の口が何か言ったように動くが、この距離では聞き取れるわけがない。

「シーザー…知り合い？」
「いやそんな…」
　学内に異性の知り合いなどいないシーザーは問いかけを否定しかけるが、ふと言葉を止める
「…まさか」

あの時の

■■

　その日、何限目かの授業が移動教室先で自習だったシーザーは授業中に参考書を置いてきたことに気づいた。
　移動教室から、普段使っている教室までは何かと行くのが億劫だ。階段を使わなければいけないし渡り廊下を使わなければいけない。
　普段なら面倒だと思うところなのだが、シーザーは特に嫌な気もなく教室を出た。

　連日続きの雨だ。ザァザァと音を立てる雨に濡れた中庭を眺めながらシーザーは渡り廊下を歩いていた。
　雨の日はいつもより静まり返ったようで新鮮だ。　シーザーは気分転換も含めて教室を出たのだ。

　決して長くはない渡り廊下を終えて再び校舎内へ入る。校舎内は蛍光灯はついているが外光がないため薄暗い。
　そんな理由もあってだろうか、廊下の隅にうずくまる何かに足を止めた。
　大きな何か。僅かに膨らんだり元に戻ったりするのは呼吸をしているようで、それが生き物であると気づく。
ただ、その大きさから一瞬熊か何かと思ってしまうがこんなところにいる訳がないと考えを振り払い、それが人だと…男だと気づく

「おい…」

　大丈夫か、と傍に駆け寄る。
　座り込んで背を撫でると一瞬こちらに視線を向けられる。深緑の、きれいな目だと思った。

「体調悪いのか」
「いや…ちょっと…まぁ、ね」

　ぜぇぜぇ、と息をしながら曖昧な答えを返される。　ここから数メートルも歩けば保健室だ。目的地前で座り込むほど体調が良くないのだろう。
　保健室まで彼を運んでこようと、一度立ち上がって保健室の扉を全開にする。それから半ば無理やり肩を貸す姿勢になって立ち上がる。その重さにくじけかけたが、趣味で武道をやっている性か、負けず嫌いの気が働いた。

　彼をベッドへ半ば投げ出すように座らせるとその衝動でベッドが軋む。

　落ち着いて彼を見る。整った顔立ちをしていて、長い睫毛は影を落とす。汗で湿っているブルネットは重くうなだれている。顔色は悪いのにどこか赤みをおびていて、見るからに具合が悪そうだ
　保険医がいなかったので職員室へ呼びに行くことを彼へ伝えて保健室を出る。

その後は保健医を呼んで全て任せたが、何となく放っておけずに『横になっていたら吐きそうだ』と言ってベッドに腰掛けたままの彼の背中を『大丈夫だ』と繰り返しながら迎えが来るまで撫で続けた。

帰り際に名前を聞かれたので答えてやるのと左程変わりないタイミングで室内が明るく照らされ始める。雨が止んだ雲が途切れたのだと思っていると不意に彼の表情が嬉しそうに崩れた。
　何が嬉しいのかと問いかけようとしたところで、彼はぷつりと糸が切れたように倒れこんでしまった。

　…結局、その後は先生たちも慌てふためいてしまって自分は教室へと戻された。

　それから一月経つが結局彼の名前もその後も知らないままだったのだ。

■■■

「そうか…あの時の」
　歩み寄ってくる彼にそう言うとその表情は安堵したように笑む。
「良かった、忘れられてないみたいで」
「いや、実は今の今まで半分忘れていたけどな…」
「嘘っ」
　そりゃあないぜと大袈裟に天を仰ぐ彼につい笑ってしまう。
「良く学年までわかったな。名前しか覚えていないだろう」
「先生に聞いたんだ。どうしてももう一回会って話がしたかった」
「そうか…元気そうでよかった」
　それは心からの思いで、こうして元気な姿で再び会えたことに喜びを感じていた。

「ねぇシーザー…」
「え、あぁごめんスージーQ」
　自分で納得してしまったが彼女の問いに答えていないことを思い出す。一月前のことはその時話しているので、細かいことは省いても大丈夫だろう
「ほら、具合の悪い生徒を保健室まで連れてったって話ししたろ？」
「あぁ、あの時の。授業には戻ってこないし、次の時間も遅れてくるからびっくりしちゃったわ」
「何か、まじで迷惑かけたみたいねン…」
「何言ってんだ！そんなこと気にしてる場合じゃあなかったろ！」
　軽く肩を叩くとそう？と首をかしげて嬉しそうに笑う。微笑むような表情ではない、幼さの残る人懐っこい顔。

「用事はそれだけか？お前も早くしないと飯食い損ねるぞ」
「ん？あぁ、いや、他に言いたいこともあるんだけどォ…」
　途端にばつが悪そうに口をとがらせる。何だろうかと思って、そう言えば名前を聞いてきたときに礼がしたいとか言っていた気がするなと思いだす。
　わざわざこうして会いに来るくらいだ。もしかしたら食事でもおごらせてくれとかなんとか言い出すかもしれない。もしもそうなったら丁重にお断りしようとシーザーは心に決める。

　よし、と姿勢を正す彼は何だか幼い子を見ているようでシーザーは微笑ましさに頬を緩ませる。


「ツェペリ先輩！」
「はい」
「俺と付き合ってください！」

…………は？

「は、え？はあぁッ!?」
「あの時助けてくれたのがすごい嬉しくて！俺、あの日の記憶ほとんど無いけど先輩の事だけは覚えてたんだ！」
「いや、待てッ！待て待て待てッ！何でそうなる!?頭を上げろ恥ずかしいからッ！」
　周りがざわざわとざわめき立つ。女子生徒に男子生徒が頭を下げている、という奇妙な光景に視線が集まるのを感じてシーザーは体温が上がるのを感じた。
「何でって……名前教えてくれた時の先輩がすっごいキレーだと思って」
「はぁッ!?」
「わざわざ保健室まで知りもしない生徒連れて行ったりするとこもそうだし、ずっと横いてくれたし…そのくせ文句ひとつ言わないし」
「恥ずかしいからやめてくれ、やめてくださいッ!!」
　ギャーギャーと一人騒ぎながら彼の言葉を遮る。　異性から告白されるという行為も、手放しで褒められるという事も初めてで恥ずかしい。きっと今自分は可哀想なほどに真っ赤なのだろうな、とシーザーは余裕のない頭で考える。

「……」
「……」
「…付き合ってくだ」
「嫌だッ！」

　どうやらこの男、引き下がるつもりはないらしい。頭二つ分ほど高い彼を睨みあげるが、それに効果が微塵にないことをシーザーは気づいていない。
「…悪いが、付き合うことは、できない」
「ちゃんと納得いく理由をくれ。こっちはちゃんと伝えたんだ」
「何で物理的にも態度もそんな上からなんだよくそ…」
　一度呼吸をして落ち着く。
「まず、知り合って間もない相手と付き合うというのはおかしいだろう…。知り合って、互いのことを理解して、付き合うのが普通じゃあないのか…」
「…」
　どうだ、と言わんばかりに自分の持論を突きつける。時間を重ねてお互いをわかりきった上で付き合っていくのが交際の正しい形だとシーザーは思っていた。
「……ツェペリ先輩さぁ」
「？」
「男と付き合ったこと、ないでしょ」

……

　うわぁ、とやじ馬から声が漏れる。それほど今の言葉はストレートすぎたのだ。
　初対面だからと言って、いくら心配していた相手だからと言ってこれで怒らないシーザーではない

「ッ！」
「痛ッ！何すんだこのアマッ！」
「こっちのセリフだスカタンがぁッ！お前、女性に対して失礼なこと言ったって自覚がないのか!?」
　彼の脚にきれいなローキックを入れたシーザーは高らかにそう叫ぶ。(黒のタイツが常装備の彼女にとってスカート姿で足を上げることに警戒心はそれほどない)
「そういうデリケートな発言は控えるべきだな、シニョーレ！お前こそそんな態度で、彼女が今までにいた事あんのか？ないだろうなぁ？あぁん？」
「あぁ？ずいぶんなめた事言ってくれるじゃあねえの…というか！否定しないところを見るとまじで彼氏なんかいた事ねえなッ!?まぁ、そんな男勝りな態度じゃあできる訳ないよなッ！」
「お前ぇ…それが恩人に対する言葉かよッ！」
「恩人ってテメェが自分で言っちまうのかよッ！」
　先ほどまでの告白はどこへ行ったのか、何故だか言い合いに発展した二人に周りはただただ眺めることしかできない。というか女生徒の方、さっきまでの照れ具合はどうしたと、ほとんどの生徒が思っているだろう

「うるさいッ！」

　怒鳴るような声に二人の喧騒がぴたりと止んでしまう。恐る恐る声のした方へ視線をずらすとそこには子供をしかる母のような表情のスージーQだ
「うるっさいのよ！お昼休みで人の多い場所で馬鹿じゃあないのッ!?」
「す、スージー…」
「そっちのアンタ！あのね、告白するのはまだ良しとして、もっと時間と場所を弁えるべきだわっ！本当に彼女なんかいたことないんじゃあないかしらッ!?」
「ぐぅっ！」
　思いもしない方向からの指摘で男子生徒が黙り込む。痛いところを突かれたようだ。
「シーザーもシーザーよッ！大きい声出さないはしたないッ！あと足も上げないッ！少しは落ち着いて話を聞くッ！」
「ご、ごめん、なさい」
　つい敬語になってしまうほど今のスージーQには迫力がある。一気に血の気が下りた二人はしょんぼりと黙り込む
「二人とも私おいて話進めるんだものッ！面白くないわ！」
　そっちが本音じゃあないかッ！とは口には出さずに心にとどめておく。
「で、でもなスージーQ…私の言ってること間違っていないだろう？」
「そうね、あなたの言う事何も間違ってないわ。でも、その人の言い分は聞いた？」
「…お前は、どう思ってるんだ」
「付き合い始めて…相手のことを知ってくっていうのも俺は間違ってないと思ってる」
　意外だ、と思った。むやみやたらに付き合いたいと言っていたわけではないのだ。具合が悪くて働かない頭で覚えていた記憶にフィルターが掛かって恋のように感じた。そんな風に思っていたシーザーは先ほどまでの大人げない態度が恥ずかしくなった。
「…失礼なことを言った。すまなかった」
「いや、俺も言っちゃあいけない事言った…」
　目線を合わせずに謝罪をしあう。なんとなく周りの空気が和らいだ気がする。

パンッとスージーQが一つ手を鳴らす。

「はい、じゃあ二人の意見のすり合わせも終わったところで、一つ提案があるわ」
「提案？」
　聞き返すと彼女は『そう！』と自慢げに胸を張る。いつの間にか彼女に主導権を握られてしまった
「お友達から始めたらいいのよ」
「友達から…？」
「っていうと？」
「言葉のとおりよ？シーザーは時間を重ねて互いを知っていくべきだと言っているから、友達として付き合えばいいわ。その中でそっちの彼はシーザーが自分を好きになってくれるように努力したらいいし、自分を好きになってもらえばいいの」

　どう？悪い話じゃあないと思うんだけど。

　この友人は時々驚く程の案を出してくる。文化祭のときのクラスの出し物だとか、生徒会だとかとにかく助けてもらったものだ。
「それは…とてもいい案だ」
「え？」
　シーザーがそう言うとは思わなかったのだろう、彼は意外そうな声を上げる。シーザーはそんな彼を見上げていたずらを思いついた子供のように笑った
「お前は乗る気はないのか？えぇっと……」
　そういえば彼の名前を聞いていなかったことにようやく気付いて言葉に迷う。
　それに気付いたジョセフの唇が弧を描くのをシーザーはみていなかった
「ジョセフ」
「え？」
「ジョセフ・ジョースター…ジョジョって呼んでくれ」
「…そうか。それで？お前はこの良案に乗らないのか？ジョジョ」
　再度聞き直すシーザー自身、何か変わるのではないかと期待していたのだ。ここで会ったも何かの縁だ…まぁ、相手から会いに来たのだから縁も何もないかもしれないが。

　ジョセフという彼は今日一番の笑顔でこう言った

「もっちろん！即効でオトモダチからランクアップしてやるよ！」

　こうして二人の奇妙な関係は始まったのだ。



■■■■

　期末試験を終えてから三日ほど経つ。いつも通り赤点もなくあとは進路に向けての準備と夏休みを待つだけだ。
　そして例の案を承諾してからすでに2週間。
「進展は？」
「…別に、普通に仲はいいけど」
　朝方コンビニで買ったランチパックを千切っては口へ入れていく。その手ごろな値段からは少ばかり予想の上を行く美味しさだ。
「ふぅん。でも一昨日映画見に行ったんでしょう？」
「……ちょうど土曜日で私のバイトが昼で終わった事と、そのタイミングであいつが連絡をしてきたことと、見たい映画が被った…それだけだ」
「へぇ？」
　どこまでも素直にならない友人にスージーQは笑いを堪える。何だかんだと楽しんでいるのは丸わかりなので、可愛くて仕方がない。
「ちょうどテスト終わった次の日だったから、ゆっくり遊べてよかったね」
「だから、別にそんなこと言ってないじゃあないか」
「もう！私に隠し通そうって方が無理あるわよォ？」
　クスクスと笑うスージーQにそれ以上強く言えずにシーザーは口を閉ざしてそっぽを向いてしまう。そんなことしてもただの照れ隠しにしか見えないというのに。

「あ、ほら噂をしてたら」
「…」
　渡り廊下から中庭へ、何かを探すそぶりを見せながら入ってくる影が一つ。見間違えることもない　ジョセフだ
　ふとこちらに気付いてジョセフの顔が綻ぶ。
「ツェペリせーんぱい」
「…よう、テストどうだったんだ」
「うげ…そこ聞くのぉん？」
　ジョセフは凛々しい眉を情けなく下げながらシーザーの横へ腰を下ろす。
「まぁジョセフ君の手にかかれば？あんぐらい何とも？」
「赤点いくつあった」
「…………物理と現代文」
「お前！何がジョセフ君の手にかかればー！だッ！私と映画観てる場合じゃあねえじゃねえか！」
「うるせえッ！休んでた一カ月のブランクあったし、映画はテスト終わった後だから関係ねーだろ！あとジョセフ君ってもっかい呼んで！」
　傍から見れば喧嘩か何かに見えるだろうが、二人にとってこれはデフォルトだ。ジョセフが何か言ってシーザーが荒い口調でそれを咎める。それがヒートアップしていくのだ。
　滅多な事がない限りスージーQはそれを止めない。何か良くない雰囲気を感じたら仲裁に入るが、それは最初のとき一度きりだ。

「そういうツェペリ先輩はどうなんですかーッ！赤点ぎりっぎりとかあったりして」
「あら？シーザーはいつも学年トップ10入るのよォ？」
「オーノー！まじかよ！」
　ちくしょう完璧じゃあねえかよとかなんとか言いながらジョセフは頭を抱えてみせる。彼のオーバーリアクションはもう見慣れたものだ
「ふん、学生の本分は学業だぞ？大体、高一の範囲なんて中学の応用だろう？」
「ぐぅ…社会史と経済は出来るんだぜ…？」
　おそらく教科の好き嫌いなんだろうなぁとシーザーは思いつつもそれを口に出さない。出したところで何も意味はないだろう。
　ジョセフもこれから昼食なのか、紺色の袋から弁当箱を取り出してふたを開ける
　中は色とりどりのおかずが詰められていて、良くある『茶色い弁当』とは程遠い。
「すごいな」
「んぁ？あぁ、弁当？」
「うん凄いわ…ちゃんとバランスよく詰められてる」
　つい女子二人の視線は弁当箱へと向く。栄養士志望のスージーQは何が入っているか、という点に自然に目を付けているようだ。
「そうかぁ？いつも上の兄ちゃんが詰めてくれるんだ」
「へぇ、お兄さんがいるのか」
「うん5つ上の兄貴が二人、で、俺が二男で、下に中坊が四人」
「…多いな」
　予想もしていない多さにシーザーがジョセフを見上げる。上目遣いに少しドキリとするがそれを悟られまいとジョセフは話を続ける
「兄貴と中防のうち一人が実の兄弟で、二人とも養子なんだ…まぁ二人が来たの俺がまだ小学生のころの話だけどねン」
「へぇ、賑やかそうでいいな」
「ツェペリ先輩は？」
「…今は一人暮らしだ。兄貴が実家で医者をしていて、妹が三人いるんだが皆そっちだ」
「なんだ、そっちも賑やかじゃん」
　ジョセフはふと箸を動かす。それから綺麗に巻かれた卵焼きの一切れを更に半分に割った

「はい」
「…？」
　本来ならジョセフの口へ入っているだろう箸を自分へ向けられてシーザーは目を瞬く。
「食べる？」
「…っい、良い！いらない！お前食えよ！」
　言われてやっと意味を理解したシーザーは手を振ってそれを拒否する。
どれほど恥ずかしい事をしているのかわかっていないのだろうかこのバカは！
『そう？』と言ってあっさりと自分で食べてしまうジョセフに呆気にとられながらシーザーは熱い頬に手を当てて足元に視線を落とす。
　ジョセフの顔が微かに赤いのを見たスージーQは小さく微笑む。

「…あ、そうだシーザー」
「ん？」
　ポン、と手を打つスージーQにシーザーは顔を上げる。
「明日私ちょっと用事があって昼休みいないのよ」
「うん、いいよ一人で大丈夫」
「あぁそうじゃなくって、ジョジョと二人でご飯食べたら？」
「え？」
「え？」
　二人が同時に声を出す。だがシーザーは言っている意味が分からないみたいな顔をしているし、ジョセフは喜色を表情に浮かべている。わかりやすい反応だ
「仲良くなるって目的があるんだから二人でお喋りしながら時間過ごせばいいわ」
「いやぁそんな事しなくても良いんじゃあないかッ!?」
「えー良いじゃん、最高じゃん」
　ジョセフはシーザーへの好意を隠そうという気持ちが微塵もないらしくとても素直だ。さっきの卵焼きは意図的な行動かそうじゃないのか知らないが。
「何が最高だッ！」
「シーザー？」
「だって」
　反論しようとしたがシーザーは口を閉ざす。ニコニコとしているスージーQに一種の危機を感じだ。無言の笑顔というものは恐ろしい。
「……明日だけだからな」
「マジでッ!?やっぴー！」
「はしゃぐな！弁当落ちるッ！」
　シーザーの叱りなど聞いていないようにジョセフは嬉しそうに笑う
「あ！じゃあ昼飯持ってくんね！ツェペリ先輩いつもコンビニだもんね！」
「流石にそれはお兄さんに迷惑だろう」
「今更一人分増えたとこでなーんも関係ねえよ！余ったおかずなんてそのまま朝飯に出るしねン」
「良いんじゃあない？シーザー」
　ね？と両サイドから答えを求められてシーザーの表情に困惑が濃くなる。
　ふぅ、と小さくため息が出る。
「…じゃあ、お願い、します」
　答えはsi.だ敬語なのはジョセフの兄が作ってくれるというのを聞いたからだろう
「おう、任せてくれよ！」
「そのかわりお前も手伝うんだからな！」
「えぇー…」
「えーっじゃない！」
　シーザーがまた怒るように彼を睨む。
　どうやら明日の予定は大丈夫そうだ。また始まってしまったやり取りに笑いながらスージーQはお茶を口にした

■■■■■

　勝負はこの一瞬だ

　シーザーは時計を睨む。あと3秒。

　終業のチャイムが鳴る
「はい、じゃあ今日はここまで。日直ー」
　日直の号令で立ち上がって礼をする。それを確認して教師が出ていくと同時に室内がにぎやかになる
今だッ！とシーザーは机の上を片付けることもせずに走り出す
　勢いよく引き戸を開けて、固まる
「あ、良かったー。上級生のクラスって顔出しにくいのよねン」
「………」
　扉の向こうにいたのは朗らかに笑うジョセフだ。シーザーは終わった、と思った
「どうせ先輩、俺が来る前に逃げようと思ってたんだろ？残念！予想済みでェす」
　俺こういうことは頭いいのよねン　とピースを作って見せかねないジョセフは完全に勝ち誇った表情だ
　だったらその頭を別に回せばいいのにッ！と思いつつ、自分の考えが完全に読まれたシーザーは悔しさに唇を噛む。
「ほら、行こう」
「…おう」
　素直にシーザーはジョセフの後ろをついて教室を出る。

二週間前のやり取りを見ていたクラスメイトに『頑張れ一年坊主…』という目線を向けられていることを知らないまま。


　中庭へ出るにはシーザー達のクラスがある三階から１階へ降りなければならない。
　足元を見ながら歩いていたシーザーはいつも通り階段を下りかけてジョセフがいないことに気付いた。
「どこ行くの？」
「え？」
　声が上から降ってきてそちらへ顔を向ける。ジョセフは４階へ続く階段の途中にいて、シーザーを不思議そうに見下ろしている
「今日こっち」
「何で…上なんて食べるところないだろ」
　こんなに天気がいいのにどこかの空き教室へでも入るのだろうか。その場合は身の危険を案じてここでジョセフを叩きのめす必要がある。
「中庭より全然おすすめの場所があんのよぉ」
「…嘘言ってたら帰るからな。お前の言う『オトモダチ期間』も終わりだ」
「そんくらい分ってるってぇ、良いから早く」
　嘘は言っていないようなのでシーザーは諦めて降りていた階段を昇り直す。どうやら自分は彼に甘いのかもしれない。

　おすすめの場所、と言われたものの前を歩くジョセフはどんどんと人気の無い薄暗い方へと入っていく。
「なぁ、本当に嘘ついてないんだよな？」
「なーんか俺信頼ない？」
「……」
「否定してよッ!?」
　こちらを振返ったまま歩くジョセフに『大丈夫だから前向いて歩け』と言うと拗ねたような顔をしたまま前を向いた。
　信頼していないかと言われたら半々だ。悪いやつではないというのは分っているし、初対面の時のことがあるから彼への好意はある…それが友人としてなのか恋愛としてのそれなのかは、また別として。
「まぁなんでも良いけどね…はい、到着」
　ジョセフが足を止めたのにつられて立ち止まる。ただ、まだ校舎の中で目の前には短い階段がある。
　その先に鉄扉
「屋上？」
「そう、チョーット汚い手使って、屋上の合鍵ゲットしましたァン！」
　そう言って人差し指に引っ掛けた鍵を回すジョセフはいたずらっ子のような顔をしている。
　正直な話途中からそんな気がしなかったでもない。校舎の中で教室以外の場所と言ったらあとは屋上くらいしかないだろう
　しかしそんな物語のような展開が起こるとは本気で思っていなかったシーザーは呆気にとられた表情でジョセフを見上げるしかない
「お前…まじか」
「マジです！びっくりした？」
「びっくりというか……ちょっと引いた」
「え？そこはもっと喜ぶところじゃあない…？」
　そういいながらジョセフは階段を一段飛ばしで上がっていく。シーザーが慌てることもなく階段を上がりきる頃には既に鍵を開け終えていたらしく、ジョセフはドアノブに手をかけたままシーザーを待っていた
「開けてもいい？」
「開けないでそうするんだ？」
「ンハハ、そりゃそうだ。はい、じゃあオープン」
　ギッと耳障りな音を立てて扉があいた。

「…」
　高校に通い始めて三年間一度も足を踏み入れたことのなかった屋上は、何の味気もない灰色をしている。
　万が一、という事なのか背の高いフェンスが四方に取り付けられていて、左側を見下ろせばグラウンド。その向こう側に街並みが見える。
「どう？きもちーでしょ」
「あぁ…」
　素直に肯定の言葉が出る。　梅雨真っ只中だというのに雨雲は見当たらず青空が広がっている。校舎は山の中腹と言っていいような位置に建てられているので他に背の高い建物はない。つまり文字通りの一面青空だ。
　気持ちがいい。

「んー、楽しんでるとここんな事言うのもすげえあれなんだけどォ、あんまし校庭側行くと下にいるやつからバレバレなんだ」
「…それを早く言えよ」
　いくら落下防止のフェンスがあるとはいえ、屋上は原則立ち入り禁止だ。誰かに見られでもしたらあっという間に噂が広まってしまうだろう。
　おとなしくジョセフの方へ戻るとそのまま彼は反対側のフェンスへ近寄っていく…グラウンドと反対側のフェンスの向こうにあるのは深緑のまぶしい山だ。
「こっちならバレないでショ」
「そうだな」
　フェンスに寄りかかって座るジョセフは『隣に座れ』と言わんばかりに地面をトントンと叩く。　距離を開けて座るのも何だかおかしいので、隣に腰を下ろす
「ちゃんと朝起きて料理手伝ったんだぜー…はい」
「ありがとう…本当に作ってきてくれたんだな」
　ジョセフが二つ持っていたうちの小さい袋をシーザーに手渡す。それを両手でしっかりと受け取ったシーザーはその重みに頬が緩むのを堪える。
「さ、さっさと食っちまおうぜー」
「…いただきます」
　小さく手を合わせそう呟くとどうやら聞こえていたようで『はいどうぞ』と返事が来た。それに少し恥ずかしくなりながら静かに蓋を開ける
「わ…」
　中身を見た瞬間につい声が漏れる。赤、黄、緑と色鮮やかな弁当の中は先が可愛らしいクマの形になった串が刺してあったりと、もしかしたらシーザーのためにアレンジされているのかもしれない。
「すごいな」
「デショー？下の妹は給食だから弁当いらなくて、ツェペリ先輩の事話したら兄貴凄い張り切ってたぜ」
　まぁそのせいで俺は朝からたたき起こされたんだけどねーと言いながらジョセフも弁当箱のふたを開ける。
「…嬉しい」
「なら、良かった」
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		<dc:date>2014-08-13T23:40:53+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
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		<title>時は七色 （承花）</title>

		<description> 
「春だなぁ、あのね桜の花びらって一枚…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[  
「春だなぁ、あのね桜の花びらって一枚で見ると白に近いピンクなんだ。それがいくつも集まってこんなに綺麗な色になるんだよ。」

自分の後ろを遅れてついてきている男がぼんやりと呟く。振り返ってみると男は立ち止まって桜の木を見上げている。

「花京院、男がそんなことしてても絵にならねえぜ」

声をかけると男は―花京院は見上げるのをやめた。目を細めて笑うと瞼の傷跡が見えた。

「誰も絵になろうとしたわけじゃあない。それとも何かい？可愛らしい女の子じゃあないと立ち止まって桜を見上げるのも許されないのかい？」

これは怒っているわけじゃない。ただからかっているだけなのだと思った。
どうやらこの男、自分をからかうのが好きらしく 何かしてはヘラヘラと笑いながら逃げていく。
 いつもならそれでもいいが今日はそうもいかない。

「そうとは言ってねぇ。ただ急げと言っているんだ。」

始業式から遅れるわけにはいかないだろう。去年だって転校してすぐに登校拒否――拒否というには問題があるが今はこの一言で済ませても構わないだろう。――になって、それから丸一年休学扱いになったのだ。それだけでも目立つというのに遅れたらさらに際立ってしまう。

「不良の君がそれを言うのかい？というか、顔見知りなんていないし、そもそも転校してきたばかりでいなくなった生徒なんてみんな忘れてるよ。他学年まで広まってるわけが無い。」
「なら余計に大人しくしやがれってんだ。」
「煩いなぁ。君エジプトから戻ってから不良というよりはただちょっと機嫌が悪くて、無表情でかなり捻くれただけの普通の人になったんじゃあない？」
「よくわからねえことをいうな。」

そもそもそれだけ問題が揃ってたらその時点で「普通の人」ではないだろう。と突っ込んだらまた何か言われそうだからそれ以上は突き詰めない。

「ほら、行くぞ」
「はいはい。あーあ、君と学年が違うなんて面白くないな。承太郎先輩なんて言わなきゃあいけないのかい？」
「俺はてめぇみてーな後輩はゴメンだな」
「こっちこそ、君みたいな頑固で怒っているのか笑っているのかわからない先輩は嫌だね。ずっと機嫌を取らなきゃいけないだろう？だったら、友達ぐらいでちょうどいいや」
「……お袋が、晩飯食いに来るかって言ってたぞ」
「ほんと？楽しみだなぁ。そういえばこの前頂いた肉じゃがね、母さんが作り方聞きたいって」
「俺に言わずに本人に言ってやれ。多分飛んで喜ぶぜ」
「違いないね。ウチまで来て教えてくれそうだ」
「その為にもまずは始業式とっとと終わらせるぜ」
「そうだね、承太郎先輩」

んふふ、と良く分からない噛み殺しきれていない笑いが聞こえる。何がそんなに楽しいのかわからない。

 

春だなぁ、と呑気な声が聞こえた。


春は七色 桜色





ジッジッ、と短い声がしてからジーーーッと長い耳障りな声が響く。これがここの所毎日続いている。
そんな声を耳にしながら扇風機を強に設定した畳張りの自室でガチャガチャとコントローラーを動かす。

蝉の声と扇風機の羽が風を切る音、コントローラーの音、ゲームの効果音 それ以外は何も音がない。

「…僕はね、じょうたろ、」
「っなんだ…っち」

画面の中では承太郎の操作する小さな車が曲がり切れずに崖から落ちてお助けキャラに引き上げれるところが映っている。

「漫画なんかで、蝉の声はミーーンって書かれるけどあれは違うと、思うっ、んだ」
「言いたいことはわからないでもないぜ」
「濁音が…ついてると思うんだよ、全体的に」

特にオチも見つからないような会話を繰り広げる。ちょうど二人とも最終コースに差し掛かるところだった。

「雑音に近いよ、部類的には」
「というかノイズに、近ェよな」

最終コースになれば、後は速さがモノを言う。邪魔キャラに当たらないように避け、アイテムも攻撃系と加速系以外は無視する。

「これを聞くと夏休みだ、って気に、なるけれど、どうしても朝早くからラジオ体操に、行かなきゃという倦怠感が湧くよ」
「俺は川で、ザリガニとった頃のことを思い出すぜ」
「君の家、そんな事できるところ、あるか？」
「チャリで、15分くれぇだな……っよし」

ゴールしたのを見届けた反射でコントローラーを床に投げ出す。花京院が隣でちくしょう！と言って倒れこんだ。

「なんで君最後になると強いんだい？イカサマか？」
「花京院、イカサマはバレなきゃあイカサマじゃねえんだぜ」
「君まじでか！スタンドにそんなことさせてたのか！」
「んな事してる暇があったら外の蝉を片っ端から黙らせてるぜ」

スコアが映し出される画面もそのままに二人して寝転ぶ。畳がひんやりとして気持ちいい。

「昼飯、どうするか」
「母さんが冷やし中華してくれてあるよ」
「そうか…」
「………」

会話がなくなって聞こえるのはまた先程と同じ、蝉の声と扇風機の羽が風を切る音、それからゲームの効果音だ。


「あ」
「ん」

急に起き上がった花京院の方に首を傾ける。すいか、と聞こえてそういえばと思い出す。

「持ってきてたな」
「それも丸々一個ね」
「持ってくる身にもなれってもんだぜ」
「まぁまぁ、お陰でこうしてグダグダしたあとに冷やし中華を食べて、それから冷やしたスイカを食べれるんだ。そのための労働なら安い物だろ？」
「ここがおめえの家で、おめえは待ってるだけだから言えるんだ。」
「……まぁ、何にしても」
「あっちぃな……」

この季節は全てが鮮やかな原色をしていて嫌いだ。
青い絵の具をそのまま溶かしたような空も、くっきりとした白い雲も深緑の山も全部うるさくて外に出る度うんざりする。
 それを見る度に今年の夏は何をしようかとワクワクしていた子供の頃が懐かしい。

「夏は絵としてはとても題材にしやすい。」
「絵？」
「そう。冬みたいに色がない訳じゃあなくて、春みたいにぼんやりとしている訳でもなくてクッキリと鮮やかで一色一色がちゃんとしていて、描きやすい」
「…だから去年あんなに外に行きてえとか言ってたのか」
「病院は白一色だから、僕は絵の具で手が汚れるのを見て絵を描いたなーって思うから」

つまり、つまらなかったんだよ。と花京院は座ったまま自分を見下ろしてニッコリと笑う。

「……飯食ったら出かけるぞ」
「どこに？」
「さっき言ってた川。山の方に行くから田んぼもあるし、程よく田舎だ。気に入ると思うぜ」
「……じゃあ、急いで支度しないとね」

そう言って花京院はゲーム機の電源とテレビの電源を切る。

「扇風機止めて窓閉めてきて、冷やし中華出しておくから」
「…おう」

それだけ言い残して花京院は部屋を出る。姿が見えなくなるときに緑色の触手が見えたのはあいつの親友も楽しみなのだろうかと思った。

「……夏は、そう考えると暖色がねえな。」

空も青、海も青、山は緑で、祭りは黒…の中にポツポツと黄色や赤が散っている程度
暑さを和らげるために寒色ばかりなのかと少し考えて馬鹿らしくてやめる。

「……」

扇風機のスイッチを足で切りながら窓を閉める。


きっと外に出たら花京院の赤髪はとても綺麗に映えるだろう。それを絵に残せなくて、本人は悔しいだろうなと承太郎は少し笑った。





夏は七色 青い色



 暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、昨日まで「本当に冬が来るのか」と思うほどの暑さはめっきりなくなってしまった。
もうそこら中紅葉して、以前の桜並木は次の春に向けて休業体制に入り始めている。

「秋はなんというか、ほんとーに通過点って気しかしない」
「そうだな」
「春はさ？寒い冬から夏にかけてじわじわと暖かくなって、景色も明るくなってするのに秋は夏から冬への通過点でしかないからつまらない」
「そーだな、でもな花京院よ」

そんなに旨そうに焼き芋を頬張りながら言われても説得力がないんだぜ、と言ってやると花京院は口をもごもごとしたままちらりとこちらに目をやる

「いいだろ、秋の楽しみなんてこれしかないんだ」
「お前さっき栗も買ってたな」
「だいたいさぁスポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋、読書の秋ってどんだけ体力蓄えさせて引き篭もらせたいんだい？完全に冬眠に入ってるじゃあないか。」
「そのくせお前はそれを全部楽しんでるよな。」

体育祭でもクラスの友人と笑いながら競技をこなしていたし毎日こうして秋の旬を楽しんでいる。絵の制作もしているようで手に絵の具がついたままなのをよく目にする。待ち合わせの度に何かしら読んでいるのもみる。

「お前は人生楽しそうだな」
「楽しいさ！こうやって元気なのはいいけどね！秋だけは！通過点でしかないのに魅力が多くて僕は悔しいんだよ！」
「嫌いになれねえからな。」

今日のこいつは面白いな、と少しばかり思う。機嫌が悪そうに怒りながらも頬張るのはやめず、既に二つ目に入っている。

「でもね、紅葉だけは好きなんだ。赤とか黄色が混じって、モザイクアートみたいで」
「……そうか。」

確かに上を見ても下を見ても辺り一面鮮やかで何とも言えないな、とは思う。

「ちなみに、今は何を書いてるんだ？」
「……モザイクアートしてる」
「そうか」

これはいつごろ出来るのだろうか。
いつ頃になるかしれないがしばらくは花京院がいう通過点とやらを楽しめそうだ



秋は七色 赤い色



 何十年ぶりの大雪、ともう既に何回も見た謳い文句に溜息が出る。
年末は全く降らなかったくせに二月に入ったと思ったらこの大雪だ。春が来るのかと思うほどに外は真っ白だ。
 そのせいで思いもしない休校になったのは、少しばかり喜びたいところだが。

「……」

チャンネルを回しても昼前なのもあってニュースか面白くもないバラエティしかやっていない。こんな事ならこの前こっちに来た祖父にゲーム一式を貸すんじゃあなかったと思う。

 どうせ母親も向こうに行ったっきり飛行機が全便運休で動けずにいないのだから、寝てしまおうかと思っていると呼び鈴が鳴った。
セールスならすぐに帰るだろうと居留守を使う。

１回

２回

３回、４回、5回

「……っくそ！」

怒りを原動力に立ち上がって玄関に向かう。追い返してやろうと勢い良く引き戸を引くとそこにいたのは、セールスではなく鼻の頭を赤くした花京院だった。

「なんだ。いるじゃあないか」
「……何しに来やがった」
「嫌だなぁ、せっかく遊びに来てやったのに」

入れて入れて、と自分を押しのけて入ってくる花京院を見て、随分気が置けるようになったなと思う。

「よし、承太郎 外行こう。」
「ぁん？」
「雪見に行こうよ。すごいぞー僕の腰下まで積もってる」
「見に行こうって…雪降ってる中行くこともねえだろ」

わざわざ降られに行く必要もない、と言うと花京院は呆れ顔になる。

「あのね、君のことだからカーテンも開けてないんだろうけど、今のところやんでるぞ」
「……」

花京院が閉めた戸をもう一度開けると素晴らしいほどに銀世界だった。 ただそれだけで空は逆に真っ青だ。

「今のところ降る予報もないから、ほら家の周り見に行こうよ」
「……ちょっと待っとけ」


反論する気にもならず一度部屋に戻ってコートを掴み取る。

なぜ外に出ようとしたかはわからない。ただ、この雪のせいでいつも以上に静かな気がして人恋しかったのかもしれない。



 確かに外はかなり積もっていて、承太郎の膝上までは少なくとも積もっていた。
音が立つわけでもなくさらさらとしている雪を蹴るようにして進むと花京院が静かなことに気づく

「おい、どうした」
「…あのね雪ってよく影を灰色で描かれるけど本当は水色だと思うんだ。」

また色の話か、とは言えなかったのはあまりに真剣な顔をしているからだ。

「だってもとは水なんだもの。水はその名の通り水色をしているし、これだって水色のはずだ」
「だが雨は透明だろ」
「あれは粒だもの。春頃言ったろ？桜の花びらは一枚だと白に近い色だけど、数が集まるから綺麗な色になるって。｣

シロクマの毛も、本当はグレーなんだよ、といいながら花京院は雪に手を突っ込んでしかめっ面をして引き抜いた。

「雨は粒だから透明、お風呂のお湯も、水道の水も集まりではあるけれど色になるにはもっと必要なんだよ。だから海は青いんだ」
「市営プールとかは」
「あれはどちらかというとプールの水槽自体が水色に塗られている場合があるから…」
「そうか」
「気になったのかい？」
「別に」

はぁ、と吐き出した息が白い靄になって消えていく。

「でも海が青いのは光の反射だからって聞いた気がするんだよね。そうなると雪も元が水だから、というよりは光の反射なのかな」
「花京院」
「なんだい？」

自分の世界に入りかけていたところを呼んでみたが、あっさりと反応が帰ってくる。
つい呼んでみたが、何をいおうか

「……餅があるから昼は雑煮にするか」
「いいのかい？」
「…雪見に来ただけじゃあねえだろうが」
「そうだね、じゃあ少し遠回りしてスーパーで飲み物とかつまめる物買ってこうか」
「あぁ」

それだけ会話をしてまた前を向いて歩き出す。花京院は横に並ぶわけでもなくまた後ろから着いてきているのだろう。
 色んなものに目をひかれる花京院を、後ろから見たら暇つぶしになるだろうかと考えるがそれをしたら、いつまでもタラタラと歩くことになりそうで承太郎は考えるのをやめた。
 空は青く、雪雲が漂っているわけでもない……もう降らないのだろうか。

帰ったらまた天気予報を見てみるか、と心に決めて承太郎はもう一度息を吐いた。



 また春がやってくるのだと、桜の木が言っている。


冬は七色 銀の色




おわり。


- - - - - - - - - -
承太郎進学はいいのかな。受験生よ。 ]]>
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		<dc:date>2014-02-21T00:17:36+09:00</dc:date>
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		<title>先生</title>

		<description>備え付けの呼び鈴を鳴らすと扉の向こうで…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 備え付けの呼び鈴を鳴らすと扉の向こうで人の動く気配がしてあっさりと扉が開いた。

「こんにちは、承太郎さん」
「……あぁ」

きっと俺は今笑っている。




先生


「コーヒーでいいか」
靴を脱ぐために屈んでいるとそんな風に声をかけられた。目線を上げると承太郎は既に申し訳程度の小さなキッチンに向かっていた。
「あぁ、イイっすよそんなにしなくて。そもそも俺が来たくて来てるんですよ」
「…俺も飲むから、ついでだ」
そう言って結局承太郎はシンクの下からインスタントコーヒーの袋を取り出す。それをみて仗助はつい笑ってしまう。
「承太郎さん、水道のしたに置いてたらシケっちまうっすよ？」
「いいんだ、どうせ俺と仗助しか飲まないんだから。」
承太郎と仗助だけというフレーズに自分の唇が歪むのを感じた。シンク横にある食器籠に伏せられたままのマグカップを二つ取り出す。一人暮らしでそれ程数のない食器を、わざわざ食器棚に戻すなんてことを承太郎は滅多にしない

でも俺は、と口を開く

「シケってない旨いコーヒーが良いなぁ。」
「…そうか」
仗助の出したカップに一匙分ずつコーヒーの粉を入れて袋の口を締めてから今度は壁際にある調味料の横に並べた。
「お湯はポットに入れてくれ。」
「はーい」
言われる通りに小さなポットに魔法瓶からお湯を移す。まったくこれじゃあどっちが客かわからないなと思った。

仗助が承太郎のいる街まで足を運ぶようになったのは二ヶ月前だ。
週末、学校が終わってからその足で電車に飛び乗る。着替えや何かは初めから持っていたが、休みの度に行くようになってからは承太郎の部屋に置くようになった。
帰るのは日曜日の夕方。月曜日が休みならもう一日余分に泊まる
する事といえば 仕事に熱心になる承太郎の身の回りの世話。風呂の湯の入れ替えや洗濯、基本的なことはそれなりにできたが料理だけはどうしようもなくて簡単なもので済ませていたが最近は手のこんだものも出来るようになった。
やる事がなくなったら静かに勉強をするかもしくは、本棚から何冊か抜き取って読む。テレビは付けなかった

最初のうちは「毎週来なくてもいい。朋子さんが心配するだろう？」と言っていた承太郎も「俺がしたくてしてる事だし、母さんには許可をとってある。それに、誰かいないと承太郎さんいつまでも仕事してるでしょ？」と返したらそれっきり何も言わなくなった。

「今夜は何がいいっすか？」
「今日は何を買ってきたんだ？」
質問で返してきた承太郎が目で見やったのは仗助の持っている近所のスーパーの袋だ。
「肉と、惣菜とそれからこの前ネギとじゃが芋使い切ったのでそれを。」
冷蔵庫の前にしゃがみこんで買ってきたものを冷蔵庫に詰め込む。承太郎は自分で買い足す事をしないらしく仗助が来てみると冷蔵庫は空に等しい。
承太郎はカップを持ったままその場で考え込んでから口を開いた。
「…カレーか」
「はいはい」
承太郎は何かと作り置き出来るものを好む。一人暮らしだから飽きてしまう点を抜けば数日は乗り切れる。そして承太郎は同じものを続けて食べることに苦痛を感じない。

ソファに座ってコーヒーを一口啜ってから思い出したように「あ」と短く吐いた。
「そういえば聞いてくださいよ」
「なんだ。」
「この前の試験、順位上がってたんすよ！」
「良かったじゃあないか｣
承太郎は表情ひとつ変えずにそういう。最初の頃こそ、この人は怒っているのか？と思っていたが承太郎が目立って感情を表情に出す人間ではないと今は知っている。そして今の言葉は喜んでいるのだろう。
「いやぁここに来ると静かに勉強できて快適っすよ～。家にいると母ちゃんがうるせぇし、外でやると何かと億泰と康一が合流して勉強どころじゃねえし。」
「だからわざわざこんなところまで来てるのか」
一瞬言葉が出ずに瞬きを繰り返す。それからやっと理解してやだなぁ、と笑う。
「承太郎さんに会いたくてきてるんだから」
「…やれやれだ。」

仗助は承太郎を慕っていた。
「慕う」というよりは「尊敬」に当たるかもしれない。不良が自分より年上の後ろをついていくような訳でもなく、恋なんかでもない。強いて言えば恩師とか自分の目指す人物への感情だった。
いつか仗助は承太郎に学校の教師はダメだと話したことがある。
「何故だ」と言われたので「ちゃんと俺の中身を見てくれない。外見の評価だけだ」と答えた。
子供のような言い分だがそれは本当に思っていることだった。
さほど大きな事件を起こしてもいないし勉強はできないが授業態度も中の下程だ。具合の悪い生徒を見かけて助けたりいい事をしたって評価しないのに悪いことに限って目くじらを立ててやってくる。そしてそれは小さな事だ。

承太郎だけは違うと考えた。
最初の出会いは奇妙なものだったが、時には力を借りることも、それに見合った褒美の言葉も初めてだ。
自分の事をただの頭の悪いヤンキーだと決め付けるわけでもない…と仗助は思っている。
そしてそこらの大人より凛々しく、逞しく頼りがいのある、悪い嘘をつかない大人だと思った。
時折相談事を持ち掛ければしっかりと返答をしてくれて、それで失敗しても成功しても自分のやったことだから、と褒めてくれた。

（承太郎さんは俺の人生の先生なんだ。優しくて、時にはちゃんと叱ってくれて、褒めてくれる）





「承太郎さん、徐倫は元気っすか？」 
「あ、あぁ。元気に向こうでやってるみたいだぜ」
デスクに向かったまま振り返りもしないがそれでもしっかりと返事は来た。
以前ここに来た時に今日と同じように承太郎がドアを開けてくれた。いつもと違ったのは、自分の膝よりも背の低い小さな子供がキラキラと目を輝かせていたことだ。
 緑色の瞳、艶やかな黒髪  承太郎の娘だと思った。
そしてその予想は外れることなく恥ずかしそうにその子は自己紹介をしてくれた。「空条 徐倫」舌っ足らずに教えられた名前は意味も字もその時にはわからなかったが、後日承太郎が嬉しそうに説明してくれていい名前だと思った。（その顔を見て苦しかった理由は未だに自分でも知らない）
「もうアメリカに帰っちまったんすよね？」
「向うがうるさくてな。まぁ、俺一人だと遊びに連れて出る事も難しいからいいんだがな。」
そういうこえは少しばかり寂しそうで、やはり会えるなら会いたいのだと感じた。
承太郎の言う『向う』とは徐倫の母親、つまりは承太郎の嫁のことで 離婚した今ではどう表せばいいか仗助にはイマイチわからなかった。
「父親がいないと子供は男親の愛を知らないまま育って寂しがり屋になるってなんかで読んだっすよ。あとはファザコンになるって」
「それはどうだろうな 俺も向こうも気が強いから、それを継いでたら寂しがり屋になんかなら無さそうだぜ」
「ファザコンは？」
「……年に数回会えるか会えないかでそれはないだろうな」
きっと言葉に間があったのはもしそうなったら嬉しいな、とか想像していたのかと思うと素直じゃないなぁと仗助は笑った。

承太郎の奥さん……今では『元』がついてしまうが、とにかくどんな女性だったのか仗助は知らない。
だが とても表情豊かとはいえず、無口で何かとどこかに行っしまう彼に付いていけずに別れたのかもしれないと勝手に予想を立てる。そして『気が強いから』と言っていたのが正しいのなら気が強くて簡単に離婚を決められるようなハッキリとした女性なのだろうと思う。
（こんなにいい人なのに、もったいね）
俺ならぜってー着いてくのに…と口にはしない。

「承太郎さんが引き取るって考えはなかったんすか？」
「…あまり、迷惑をかけたくないからな。面倒なことには関わらせたくないだろう」
そんな言葉が出ると思わずについ言葉をなくす。そんなことを考えていたのか
「つまり二人を危険なことに合わせることがないように別れるような真似をしたと？」
「言っちまえば…そうなるのか。」
承太郎の学生時代の話は聞いている。詳しい事も話してくれたような気がするが、なんせ自分の頭では処理しきれないほどの膨大で壮大な物語だった。それこそ命を落としかねない旅で、実際承太郎は仲間を何人も失ったみたいだ。
今も変わらずスタンド使いの承太郎は、また何か起きるんじゃあないかと思っているのだ。そしてそれに家族を巻き込みたくもないと。

思ってるからこそ遠ざけるなんてどんなにこの人は感情表現が下手なのだと仗助は思う。思ったことはだいたい口にしてしまうし、頭に血が上ってしまったらそれこそ自分では制御ができない時がある。
だからこそ承太郎は自分にないものを持っていると感じるのだ。

「だったら直接言っちまえばいいのに」
ほら、すぐに考えたことが出てしまう。
「…うまく言えないことだってある」
「そうっすか？俺はそこらへん考えないからわかんねぇなぁ」
「考えられない、の間違えじゃあないのか」
「……」
恐らくこの人は自分のことをばかにしているのだ。その証拠にいつもより声のトーンが少しばかり高い。
人は気分が高揚した時、機嫌のいいときに声のトーンが少しばかり上がる。それは本人も無意識に行っている癖で、大体の人がそうだろう。
その反対に機嫌の悪いとき、気分の優れないときは声が低く張りがない。

「ひっでぇ。俺だってそれなりに考えることだってありますよ」
「ほぅ？」
「今日だって、ずっとここに来ることだけ考えてたんだ」
「それで学業が疎かになるなら、俺はお前をもう呼ばない」
「アンタが呼んだことなんかないじゃないっすか。いつも来るのは俺の意志だ。」
承太郎から来て欲しいなんて言われたことはないし、この先もないだろう。それでも仗助は毎週ここにやってくる。
「今夜は何を作ろうとか、掃除とか溜まってるんだろうなとか。何からしようかとか」
「……まるで家政婦だな」
「俺はあんたの雇い人じゃあない」
「仗助、」
「俺はね、承太郎さん…あんたが好きなんだ」
思わず口角が上がってしまいそうだ。背を向けている承太郎は表情が見えないが面白いほど動揺した……計画通りに。

「俺はずっと好きだった…最初あったときは何だコイツって思ったけど、出来るならあの時まで遡って馬鹿なこと考えてた自分をぶん殴りたいくらいには今はあんたを尊敬してる」
そういえば、と吉良吉影が脳裏をよぎる。一定の時間を巻戻せる力があったがあれで戻れたりしないのだろうか…いなくなった今ではどうでもいいことだが。
ねぇ、と立ち上がって承太郎の背後に立つ。いつもより位置の低い背中を見下ろす。
「ここまでやって気付かないなんて、アンタの頭おかしいんじゃあないっすか？」
「仗助、今日は帰れ」
「今日は、ってことはまた来るのを期待してるんですか？二度と来て欲しくないならそんな言い方しない。結局あんたはそうやって」
「仗助！」

（かかった…！）

痺れを切らしたように椅子ごと振り返った承太郎に寄りかかるように、開かれた膝の間に肩膝をついて 肩に手をかけてバランスを崩さないように。

「承太郎さん、」
「…」
「俺の事どう思ってる？」
緑色の瞳が視線をずらすのが見て取れる。血筋なのだから似ていて当たり前なのだが、この人と同じ瞳の色であることが嬉しくて少しだけ父親の顔か浮かぶ。
「……ジジイの子供で、年の離れた親戚、それだけだ」
「嘘をつくときに、デコ触る癖直した方がいいっすよ」
「……」
逸らしていた視線をこちらに向けて驚いたような顔をする承太郎に笑顔を作って「嘘っすよぉ」と言ってやる。
もちろんそんな癖があるわけないし適当に言っただけだが、それで十分だ。今の発言が嘘であるという証拠が取れた。
「もう一度聞きます。俺の事どう思ってる？」
「…いい加減にしろよ、仗助」
「何ですか？そんなに嫌なら無敵のスタープラチナで何とかしたらいいじゃあないっすか。」
「……」
少しばかり揺れていた空気が落ち着くのを感じる。スタープラチナを出したところで恐らくスタンド自身が自分で静止をかけるだろうと仗助は踏んでいた。そうでないとあんな発言怖くてできる訳が無い。

とうとう俯いてしまった承太郎の顔をのぞき込むように見る。
「承太郎さん…最近の高校生ってませてるんっすよ」
答えが返ってこないのを確認して、続ける
「ヤったとか、誰と何したとか、女子までそんな話してる。」
ここから先は自分にとっても重要な賭けだ。覚悟を決めなくちゃならない。
一息おいてから それでね、と囁く
「恥ずかしいお話、俺そういうのしたことないんで話に入れなくって…ほらわかるっしょ？皆に置いてかれたくないって気持ち。」
変わっていく周りの中で自分だけ何も変われないような、自分だけ取り残されたような焦りと絶望感。
思春期特有の、後から考えたらそれほど重要でもないような悩み
最高の切り札じゃないかと仗助は隠しもぜず笑う。

「承太郎さん、俺より長く生きてるし大人だから教えてくれます？」

目を見開いて承太郎が顔を上げた。もうひと押しだ。

「承太郎さんが俺をどう思ってるか知らねえっすけど、そこらへんのガキと一緒にしないで欲しい」
「……ちょっと待て、おい」
「聞いてます？承太郎さん」

一緒にしないでって 言ってるじゃないっすか。



仗助は承太郎を慕っている。
それは「慕う」というよりは「尊敬」に当たるかもしれない。不良が自分より年上の後ろをついていくような訳でもなく、恋なんかでもない。強いて言えば恩師とか自分の目指す人物への感情だった。
そして仗助はそれを利用しようと考える。

仗助は渇望しているのだ

不良という括りからの脱却、じぶんを散々コケにした人間たちを見返すための功績を。
いつかは世界に出て、それこそ大きな仕事を、凡人では手の届かないような地位を手に入れたいと。こんな小さな誰も知らないような街で収まるつもりはないのだ。

そしてその為の一番の近道は承太郎の利用だ。
傍にいて慕い、彼の言う通りに動けば少なから周りの自分への評価は変わる。
承太郎に従順であることが唯一の近道なるのだ。

それと共に承太郎は自分へさらに手をかけるようになるだろう。少しでも力になれるようにと。
いつのまにか彼に埋め込まれた優しさ、あるいは社会常識の種が知らぬ間に芽を出し花を咲かせ、そして自分のところへ蜜を運ぶ。
そして、仗助の功績を自分の事のように喜ぶのだ。 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2014-02-07T17:27:38+09:00</dc:date>
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		<title>メモ</title>

		<description>「え、シーザー…ちゃん？」
「も、」
「…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「え、シーザー…ちゃん？」
「も、」
「も？」
「もうぃやだああああーーっ！」
「えっ!?」
「もう嫌だーっ！辛すぎて嫌だあああ」
「なっ、何々？なんだよぉー！」
「っジョ」 
「？」
「ジョジョが好きすぎてもう嫌だー！」
「っはいいぃいぃ？？」
「好きなんだって言ってんだろおぉー！もう嫌だー」
「まっ、待って待って!?シーザーお前どうしちまったんだよ!?いつもの女好きのスケコマシーザーはどうしたんだぁ？｣
「そうだろ！？俺はゲイって訳じゃあないんだ！ないけど！なんか、こう…お前見てるとドキドキ？して、変な気分になるんだ！」
「えっ…えぇ…ついでに…ドッチなの？」
「お前になら何されてもいい！」
「そっちかー！よかったー！掘られるかと思ったー！」
「子供みたいなところも可愛げがあるなと思うし、真面目に取り組んでるのはかっこいいなぁと思うし、それに……」
「わかった！わかったから！もういいからなんか俺死にそうだから！」
「…嫌か？」
「あん？」
「そうだよな、今まできつく当たっといて都合いいのはわかってるんだ…気持ち悪いよな」
「や、そうじゃなくってね？」
「うん、悪かった……ぐず」
（えーーっ！なんかこれじゃあ俺が悪いことしたみたいじゃあねえか！）
「…っごめん、ごめんジョジョ」
「ほら、泣くなって……それに、あんま嫌な気もしてねえよ」
「えっ」
「あ」
「……もう一回、言ってくれよ」
「…嫌じゃあ、ねえから…ほら、来いよ」
「……ジョジョ」
「ん」
「……よかった、嫌われてなく…」
「………ん？えっちょっ、コイツ寝……!?」
「ん、んん……」
「シイイイーザアアアアアーーッ」


「言ってない。」
「言ったって！なんで本人が忘れてんだよぉ！」
「覚えてねえもんは覚えてねえんだ！そもそもなんで俺がお前みたいなヤツ」
「言ってたもんねー！子供みたいなところが可愛いし、真面目なところはかっこよくてドキドキするって！」
「言ってないもんは言ってない！夢でも見てたのかこのスカタンがっ！」
「にゃにをーーっ!?」
「はぁーいジョジョー、シーザーは風邪引いてるんだからァ。そんなにうるさくしないのぉ」
「だって！コイツほんとーに…」
「ほぉーら！ずっと座り込んでる暇があるなら私の手伝いしてよぉ！」
「てめぇの仕事だろ……チョッシーザー後で覚えとけよチクショーーッ！」
「………」

「…言ってない、絶対にそんなこと言ってない……」
 （言える訳が無い）



さよならは、海の底からやってくる。




「みんなのお父さんについて作文をかきましょう。」

「今度の参観日にみんなに発表してもらいます。お父さん方もこられると思うから、みんな頑張って書こうねー！」
わたしのおとうさんは、海の生き物を調べるお仕事をしています。なのであまりおうちにはいませんが

「……」
そもそも父なんて年に数回帰ってきたらいいほうだし、いい思い出なんかなかった。
休みの日に遊園地に連れていってくれるようなお父さんも、誕生日におもちゃを買ってくれるようなお父さんもいなかった。

その時の授業参観日だけは出なかった。


「とうさん」
「俺は、いつもお前のことを思っていたぞ、徐倫」

…わたしの

わたしのお父さんは海の生き物を調べるお仕事をしています。なのであまりおうちにはいませんが…

そう、だ…この人は昔からそうだったわ。

昔から家にはいなかったし、私が大変なときにも来てくれなかった。祝い事なんて最後にしてもらったのはいつだろう。
それでも、それは彼なりの愛情で、きっと大事な用事があったから。


私のお父さんは海の生き物を調べるお仕事をしています。なのであまりおうちにはいませんがそれでも私のお父さんです。

家にいたことがないから誕生日パーティを一緒にしてくれたこともありません。
遊園地に連れて行ってくれたこともないし、おもちゃを買ってもくれません。
私が大変な時は日本に行っているような父です。所謂「クソ親父」だと思います。

でも、お父さんは私とママに迷惑がかからないようにわざと離れていたんだと思います。
ずっと私とママのことを考えてくれていました。

私はお父さんの大きな手が好きです。お父さんと同じ色の目が私は自慢です。お父さんが肩車をしてくれるととても世界が広がったような気持ちになります。
私はお父さんが大好きです。不器用で優しいお父さんが大好きです。尊敬しています。

そして私はそんなお父さんの血を受け継ぐことを誇りに思うのです。 


「…とうさん」

私のお父さんは（前の文を消してから）

私のお父さんは世界一です。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2014-01-23T23:01:10+09:00</dc:date>
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		<title>君と話がしたいのだ。</title>

		<description>「入って。」
「お邪魔します」

シー…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「入って。」
「お邪魔します」

シーザーに続いて部屋に入る。デスクトップパソコンの置かれた机が部屋の隅にあって隣にはCDラックの乗った本棚。
まだ夕方といえど暑さはおとろえず、そのまま部屋の奥まで進んでシーザーはベランダへ続く窓を開けた。 

「ちょっと座って待ってて」
「あっお気づかいなく…」

キッチンに向かうシーザーに置いていかれて落ち着かない花京院はどうしようかと思ったあと結局シーザーについていった。
かがんで背の低い冷蔵庫の中を見ながら「何がいい？」と尋ねられる

「えっと……あ、あるもので」
「そりゃぁ無いものは出せないよ。聞いてみただけ」
「…すいません」
「いやいや聞いたの私だから…あ、麦茶とりんごあるけど」
「じゃあ、リンゴで」
それを聞いたシーザーは花京院に紙パックを差し出す。りんごの写真がプリントされた紙パックだ。
シーザーは白い紙の箱を持ってから冷蔵庫を閉めた。
「今日はチーズケーキと苺タルトがございますよお客様？」
「なんですかそれ……」
ははっと笑ってからシーザーは折角だから半分ずつにしようか、と言って箱を開けた。
白いシンプルなデザインの皿を二枚取り出したあと果物ナイフを引き出しから出す。
「私はどうしたら…」
「コップ持てる？そこから適当にグラス二つ持ってって」
言われたままに花京院は食器棚の下段からグラスを取り出す。腕で紙パックを抱いて両手にグラスを持つ形だ。
部屋に戻ってテーブルのそばに座ってグラスを先に置いてからパックを開けて中身を注ぐ
「メロンソーダが緑なのにリンゴは黄色っていうのが私納得いかないんです…」
「知らんがな」
笑いながらキッチンを出てきたシーザーの手にはケーキが乗った皿とフォークが持たれている。
「リンゴジュースはいいんです？」
「何が？」
「リンゴ、嫌いでしょう？」
あー、と困ったような顔をしてシーザーは向かいに座る
「いるじゃん？メロンジュースは良くてメロン自体はダメな人」
「それですか？」
「それ。」
グラスを差し出すと両手で受け取る。目の前に置かれた皿をみると三角だったはずのケーキはさらに二等分されている。器用だなぁと純粋に思った。
なんとなくてをあわせてからケーキをつつく。
どっちも美味しいねなんて話をしていたらシーザーが「で？」と話を変える。
「なにか相談？」
「えっ」
なんでわかったんだろう、と言う考えが顔に出ていたのかもしれない。シーザーは笑いながら話始める。
「だって、電話でもなく学校でもなく、家で話したいなんて珍しいから」

よっぽどな事があるのかと思って。

「…ばれましたか」
「ばれたって訳じゃあないけど…何かあったの？」
シーザーが言う通りに花京院は相談があってやって来た。それも学校のような人の多い場所や直接顔の見えない電話でもできないような。
話していいのだろうか、と少し迷ったがここまできてケーキまでいただいて話さずにはいられない。

カチャ、という音を鳴らしてフォークを置く

「承太郎に告白されました」
「ぶはっ!!｣
 シーザーが盛大に咽る。ゲホゲホと咳き込んで前かがみになるシーザーの背中をさする
「だ、大丈夫ですか？」
「えっ…いや、いつ!?」
「今日の、昼休み終わりに…」
シーザーは昼休みのことを思い返す。食べ終えたタイミングでジョセフに「シーザーちゃん、チョットいい？」と誘われ承太郎と花京院を残して中庭を離れた。結局どこに行くでもなく図書館に入ったタイミングで何用かと聞けばジョセフは口元に人差し指を当てながら「ちょっと待ってて、楽しいことがおきるから」と嬉しそうに言ってそれっきり何も起きなかった。

「楽しいことってこれか…」
「え？」
「いや、なんでもない…で？なんて？」
続きをうながすと花京院は恥ずかしそうに視線を泳がせてから重い口を開いた。
「う……嫁に来るのを前提に、付き合わないかって」
そう来たか！ 変なところで直球でくる承太郎だと思っていたがそう来るとは思わずシーザーはニヤける口元を手で覆う。
「前のことの負い目があるから、とかじゃあないけど、今度は危なくないように守るからって」
「おおぅ…｣
もうなんだかトキメキで死ねる気がする。どうやら自分はこういう人の恋路が結構好きらしい。守るからなんて一度言われたい、と思ったところで誰に？という疑問が浮かんだが花京院の「聞いてます？」という声でその疑問は消えた。
「ごめん。で？なんて返したの？」
「……考えさせて欲しいって」
「え？」
つい聞き返してしまう 正直な話、花京院は断る理由も戸惑う理由もないと思っていた。
承太郎に対する花京院の想いが「昔の知り合いを探す」というものから変わっていることにすでにシーザーは気付いていたし花京院本人も自覚していたからだ。
花京院は困ったように笑っている。
「…なんで？」
「そりゃ僕だって承太郎のことは好きです 好きだけど…」
そこまで言って花京院は口を閉ざす。閉ざす、というよりは下唇を噛んでいる。

「……だけど？」
「…自信が、ない」
消えてしまうような声でぎこちなく形になった言葉に何も返事ができない。
家の外をバイクが通りすぎる音がする
「彼は以前から女性に好かれやすかった…その人達全員が綺麗で、気が強いわけでもなくかと言って主張性もある……僕とは正反対の人達ばかりだった。僕はそんな風になれない」
「そんな事…」
ないと言いきれないのは結局は花京院自身の話でシーザーが何を言ったところで意味がなかったからだ。
「胸を張って彼の彼女ですなんて…あるいは妻ですなんて言える訳が無い。」
「……」
「他にも素敵な人はいくらでもいるのに、なんでこんな自己主張もできないような女をなんて言われたら、承太郎に迷惑がかかってしまう」
「花京院は、素敵な女性だよ…」
淑やかで、表情をコロコロと変えて可愛らしく笑う 大和撫子という言葉が似合うような女の子。そんな風には振る舞えない自分にとっては高嶺の花のような存在だ
それを正確に伝えられない自分に腹が立つ。

それでも花京院は頼りなく笑ってくれた
「ありがとうございます…それでも駄目なものは駄目なんです。」
「ダメって…」
それから、と花京院は口を開く
「それから……血を継げない」
「ち？」
その一文字が何を指しているのか頭を巡らせてから「血」だと分かってシーザーは落ち着かない気分になった。
「ものすごく先の話をします。今の僕じゃあ子供はできません…この先もずっと」
「っなんで…」
「そういう機能がないからです……これは憶測ですが前の因縁なんじゃないかと思います。」
「因縁？」
ひとつ頷いてから花京院は今よりもさらに凛とした声で話始める。

「前世の私は腹部を抉られで死にました。掠ったなんてものじゃあない、臓器も、全部消え去りました」
消え去る、という表現に唾を飲む。つまりは、即死じゃないか。助かる余地もないほどの重症だったのだろう。
「僕の生殖機能は元からありません。小学生のころ、腹痛で倒れました。調べたら子宮筋腫だと告げられてすぐに取り除きました」
「そんなの、ただの偶然で…」
「僕がスタンドに気付いたのはその頃です。細かい時期に違いはあれど、大きな差ではない｣
なんでこんな話をしているのにこの子の目は力強く自分を見つめてくるのだろう
「思うに、僕らが彼らの事を覚えていて、彼らと再会した事が因縁ならば、僕の体のことだって因縁として片付くんです。そしてそれは有力な仮説だと思っています。」
「そんなこと言ったら！この先また柱の男のような敵が蘇ることになるし、私は…俺はまた死ぬことになる！」
「敵にあたる人達はまた別の形で、危険性のないかたちで存在していると思います。現に、DIOはディオ・ブランドーとしてジョースター家の長男ジョナサン・ジョースターの幼馴染みとして生きています」
「……危険なことはなくなって、みんな仲良く幸せにってことか」

馬鹿げた話だ。花京院は今こうして苦しんでいるし自分だってこの先どうなるか分からないというのに、元凶である人物たちは平和に暮らしているって？何も悪くないのにいつどうなるのかと不安になって生きなきゃあいけないって？
ふざけてるな、とシーザーは無意識のうちに呟いていた。

「…ごめんなさい、こんな話をしに来た訳じゃあないのに」
「…いや」
花京院の雰囲気が和らいだ事でこの話は一段落したのだと感じる。そもそもは花京院と承太郎の話だ。
「それで、承太郎はどうするんだ？断るのか」
「でも、そういう話を抜きにしたら一緒になりたいとも思うんです…」
だから、考えます。という答えを聞いてシーザーは息をつく。
まだ希望が無くなったわけではないのだな、と安心した。
「そうか。」 
「それに あの人たちのそばにいたらそう簡単に死ねないと思いません？」 
「たしかに｣
どちらからともなく自然に笑いが起こる。
「ふふ……はぁ、変な話ですね。恋の相談なのにこんな壮大な話になって」
「全くだな。でも、なんだかいいじゃあないか？」
「え？」
「また何か起きたら、倒しちゃえば良いんだろ？」
ふざけてそう言うと花京院は目を瞬かせてから声をあげて笑った
もう先ほどの弱気な彼女はもういない。
「あはは……んふ、ふふふっ」
「変な事言った、かなぁ」
「いえ、大丈夫ですよ」
ふと、目を窓に向けたら外は日が落ちてしまった。カーテンを閉めようと立ち上がったタイミングで花京院も立ち上がる。

「私も帰ります。」
「ご飯食べてけばいいのに」
「いえ、家に連絡を入れていないので」
「そう？」
「はい、お邪魔しました。」
通学カバンを肩にかけて玄関に向かっていく後ろをついていく。
座り込んで靴を履く花京院の背中を見下ろす

（こんなに強くて頑張ってるのにそんな話があるか……）

スッと立ち上がって花京院がこちらを向いた
「ご馳走様でした。」
「気をつけて…送ろうか？」
「そうしたらシーザーさん一人で帰ることになっちゃうから。そんなことしたらジョースターさんに怒られちゃう」
なんでそこでジョセフの名前が出たのだろうと首を傾げる。
「知らないならいいんですよ じゃあ」


おやすみなさい と一言残して花京院は部屋を出ていった。

「……」

■

なんてこった…と口に出すわけではないがシーザーはへこんでいた。
白で統一された保健室の一角。一番隅のベッドに横になって締め切ったカーテンをぼんやりと見つめる。

「ツェペリさん」
保健医の声が聞こえて体を起こすとカーテンの間から顔が覗いた。
「あ、起きなくていいわよ。」
「大丈夫です。 なんでしょう？」
「あのね、お兄様繋がったけれどお忙しくて来れないって…どうする？」
貧血で倒れたシーザーが早退するために兄に電話をしてもらったが医者である兄は予想通り仕事を抜け出せなかった。
わかっていたシーザーは困るわけでもなく一人で帰ることを伝えることにした。
「大丈夫です。一人で帰ります」
「そう？じゃあ、荷物持ってきてもらうね…それまでもう少し横になってて。」
「お世話かけます。」
パタパタと足音が遠ざかっていくのを聞いてからゆっくりとベッドに倒れ込む。
「…」
昨日の花京院の話を思い出す。

――ものすごく先の話をします。今の僕じゃあ子供はできません…この先もずっと
――そういう機能がないからです

「そういう機能」がないという事は月経もないということで、こんなに腹痛に悩まされて苦しむこともないのだろうか。
もしかしたら、そんな女子特有の悩みを彼女は憧れているかもしれない。

「なんだかなぁ…」
「何が？」
シャッと勢い良くカーテンが引かれる。驚いて顔を上げるとそこにはジョセフが通学カバンを二つ持って立っている。
なんでこいつがここに？と思っているとジョセフはカーテンを引いてベッド脇にしゃがむ。
「スージーQにそこで会ってそういえばシーザー元気なかったなと思って。」
「…スージーQにお礼言わなきゃな」
「俺が言っておいたよ。」
「お前戻らないのか？」
ん？と首を傾げるジョセフとは目線の高さが同じで変な感覚だなぁとぼんやりと考える。
「6限目は自習だし、担任出張だからホームルームもないし。だからシーザーは心配しなくていいのよぉン」
「そうか……」
ケラケラと笑うその顔に胸が苦しくなる。昨日の話をしてもいいのだろうか、と戸惑った。
それより先に口を開いたのはジョセフだ。
「なんかあった？」
「……もし、もしもお前が好きな人が居たとして、その子に告白したとして」
もしもの喩えにまた苦しくなる。それでも話はやめない
「その子が…自分はあなたに迷惑をかけるから付き合えませんなんて言ってきたらどうする？」
「シーザーちゃんはどうするの？」
「へ？」
「俺はそんなの気にしないし、好きな子のしてくれることなら全部嬉しい。そんなこと考える必要はないし、シーザーがしてくれる事なら何だって……」
「ま、待てよ」
慌てて制止をかける。ジョセフは驚いたような顔で固まっている
えーっと……
「例えの話だぞ？私は関係ないんだぞ？」
「えっ……あーうんソウネェ。」
ソウヨネェ、ソンナンジャナイヨネェーと訳のわからないことを言いながらジョセフはその場に伏せってしまう。

で、どう思う？と問い直すとぐったりと顔を上げた。
「好きな子がそういう風に考えてたらスゲェ嫌。だって、嫌ってる訳じゃあないんだろ？幸せな関係になれる楽しい話をしてるのにそんな後ろ向きな話ばっかりしてたら悲しい。」
それに、と息をつく
「迷惑っていっても、俺が思う迷惑とその子が考えてる迷惑は違うかもしれないだろ？だったら、無計画でいてほしい。嫌なことは嫌だっていうし、嬉しいことは喜ぶし。ちゃんと伝えるからそんな考えいらない」
静かな声でそう語るジョセフは以前の彼からは想像ができないような答えだ。そういえばマナーは身につけたし女性に対する態度も心得てるなんていってたなぁ。

だとしたら

「……お前、いい男になったなぁ。」
「……はい!?」
何言っちゃってんの!?と声を荒らげているジョセフを慌てて黙らせる。何が恥ずかしいのか見てわかるほどに顔を赤くしている。
「落ち着け、保健室で騒ぐなよ」
「だってシーザーちゃんがいきなりそんな事言うから…」
「照れる程じゃあないだろ？だって、お前昔はそんな考えできなかったじゃあないか。」
また同じ目線まで低くなったジョセフの頭に手を伸ばす。自由に跳ねる髪をくしゃりと撫で回す。
「偉かったな」
「……で、なんでそんな事聞くわけ？」
「ん？あー……」

まぁ、話してもいいか。承太郎は彼の親戚に当たるのだし関係ない話ではないだろう。
「あのな……」

■■

「ふぅん…そんな結果になってたのね」
一切の話を聞いたジョセフは笑うわけでもなく親身になって聞いてくれた。頭を撫でていた手は話が終わる頃には何故かジョセフの手に包まれている。
「というかお前なんで言わなかったんだよ」
「だって、言っといてふられた時にはみんな微妙な空気になるし、どうせ花京院から話行くと思ってたしぃ？」
「……」
「つまんない？」
「別に…」
つまんなくないと言ったら嘘になる。承太郎と花京院は当事者だがジョセフは話を知っていて自分だけ知らなかった。
除け者にされたような気分だが、それでつまらないなどと子供じみた事をいう年ではないのは理解している。
ハイハイ、とあしらいながらジョセフは手に力を入れたり抜いたりしてあやす様な事をする。
「でも、因縁ってのも間違ってないかもなぁ」
「そうだとしたら、柱の男は復活することになるし俺だって死ぬことになる」
「そんな事させない」
「え？」
「…何でもない。というか、怒るかと思って言わないでいたけどあいつら生きてるよ」
「はっ!?」
つい起き上がろうとすると落ち着いて、と宥められる。
「うちの近くにアジア料理の店があって…そこの経営」
「……ついでに店の名前は」
「サンタナ」
サンタナもいるのかよ、とうんざりとして枕に顔を埋める。
なんか、なんというか本当に…
「力抜ける…もっと大きな事件になるかと思った」
「柱の男再来？あっ伝説の波紋戦士フッカツ？」
「バカ」
肩をすくめるジョセフはでもさ、と話をすすめる
「これってみんな幸せになるチャンスじゃね？ディオは俺もあってるし、捻くれ者だけどまぁいいやつだし」
「……」
「柱の男達が今普通の人間として生きてるのも、前のことは水に流して仲良くなるチャンスかもだし、楽しくなるかもよ？｣
「俺は、死なない、のかな｣
「死なせないよ」
即効で返された言葉に目を開く。ジョセフは真っ直ぐにこちらを見つめて両手でシーザーの手を握っている。
 
「俺がいるから、大丈夫。話したろ？俺何回も死にかけてるんだぜ？それでもちゃーんと復活したぜ？」
「手は…」
「こーやって掴んでてくれたらどこにも行かないと思わない？」
ね？とジョセフは握った手を少し掲げる。その仕草につい笑ってしまう。
本当に何と言うか、このバカが笑いながら言ったことはそのとおりにうまく行ってしまう気がするから不思議だ。

それでも、根本的な問題がひとつ

「花京院はどうするんだろう｣
そう言うとジョセフはんー、と首をかしげてしまった。
「結局は二人次第だからなぁ…俺らにはどうしようもないというか…」
「そうだよなぁ」
結局は自分の口を出せることではなく最初はいいとしても「わたし達の問題なので」と断られたらそれまでだ。
ついぼんやりと考えていたら「シーザーはさ、」と呼ばれる。
「そういう人、いねぇの？」
「そういう人？」
「だから、その……」
ジョセフは目を泳がせてから気まずそうに「好きな人、」と呟いた。

「好きな人ぉ？」
「そ、いねぇの？」 
この話の流れで好きな人と言われたら異性との恋愛のことだろう。
しかしこの18年ジョセフを探すという目的があってそれどころではなかったし、幼少期に男勝りだったシーザーにとって男は遊び相手以外の何者でもなかった。中学に上がった頃は学業が忙しくて他に手が回らなかった。

今は…どうだろう。
ジョジョとも再会して、花京院や承太郎みたいな友人もできて毎日楽しいからそれどころじゃあないような…というかお前が変なことやらかさないか目が離せないし…「シーザーちゃぁん……」

急に呼ばれて考えに集中しすぎたと気づく。ジョセフに謝ろうと顔を見れば睨む様に見上げられる。その目もとは心無しか赤い。
「狙ってやってる？」
「は？」
「今の、ぜーんぶ口に出てる」
今の、というのは恐らくシーザーが今しがた考えていたことで口に出ているということは…
「きっ、聞いてたのか!?」
「聞こえたも何も、急にぼんやり見つめてきたかと思ったらそーんなこと言うンだもん。俺悪くないもーん」
手も赤ん坊みたいににぎにぎして、シーザーちゃん可愛い〜と言うジョセフの声は完全にからかいモードだ。
そのせいでさらに体温は上がる。
「う……ぃや、帰るっ!帰せ!」
 手を振り払おうと力任せに腕を振るが力技で勝てるわけもなく、「保健室で騒ぐなって言ったのはシーザーだろ？」と言われたらこれ以上暴れることはできない。立ち上がる事も寝直すわけにもいかずシーザーはベッドの上に正座する形になってしまった。嬉しそうに目を細めて見上げてくるジョセフが恥ずかしくて目を逸らす。 顔が熱い
「シーザー、そんなこと考えてたのね。」
「悪いかよ…恋愛の相談されるような友達できたの初めてだし…」
「マルクは？」
「あの時は男だったからそれとは別なんだよっ！というか離せよ…｣
ぐ、と腕を引いても一向に離す気配がない
「やだ」
「やだって…」
そんな子供みたいな事を、こんなに大人びて言うような男だっただろうか。
今までのふざけは態度はどこに行ったのか手に添えるように唇をあてて、その深い緑色の目は愛しい物を見るように細められている。
……まるでこれから女を口説こうとしているような、そんな顔をしている。
「だってシーザーちゃん可愛いんだもん」
「…っわいくない」
「かーわい」
「う……」
ジョセフが立ち上がってベッドに膝をつく。覗き込まれるようにして逃げるように俯いた。
耳元でシーザー、ととびきり甘い声で呼ばれる
「俺の事、どう思う？」
「どうって…弟弟子で、ライバルで辛いことを乗り越えた戦友で、親友で」
「それだけ？それは『前』の俺だろう？｣

じゃあ、今は？

「今は…」
言葉が出てこない。心臓が早鐘を打って目眩に襲われるような錯覚さえある。心音が聴こえてしまわないだろうかというような程うるさい。
今は、やっと会えた昔の親友で、さらに仲良くなったと思う。学校の後輩で、真面目に話を聞いてくれる大事な相談相手で
それから…
それから、
ジョセフが他の女性といるのを見て胸がざわついた。
保健室に来ていてくれると言った時嬉しかったのかもしれない。
もしもの話をしただけで胸が締め付けられた。
握られた手が熱い
「今は……ジョジョは」
「うん？」
何？と先を促すジョセフは鼻先が触れそうなほどに近い。
重い口をゆったりと開く――


電子音がなった

「っ!?」
「何っ!?ケータイ!?誰の」
突然のことにあわててジョセフが飛び退く。床に置かれた通学カバンに手を伸ばして慌てて中を探る…シーザーの携帯だ。
「音切ってなかった…」
「何？電話？」
「あぁ、花京院から……もしもし？」
切れてしまわないうちに通話ボタンを押す。
うん、うんと相槌を打つシーザーをみてジョセフは小さなため息をつく。
（あとチョットだったのにね。）
まぁ相手が何をしているかなんてかけてきた側には分かるわけもない。それが花京院ならなおさらだ
自分に背を向けて電話をしているシーザーは耳まで赤い。それだけでジョセフには十分な収穫だ。
「えっ！？」
突然大きな声をあげてシーザーがこちらを向いた。私は焦っていますよ、というような感じでわたわたとしている。
「わかった…うん、うん……頑張って、じゃあ。」
それだけいうとプツとシーザーは通話を切った。シーザーのさきほどの反応からどうやらただ事ではないらしくジョセフもなんとなく緊張する。
「な、何だって……？」
「えっと花京院がこれから告白の返事をするって……」

……

「えっ！？」


■■■

これから承太郎に返事をします。
学校の近くにある神社に呼び出しました。
とりあえず伝えておこうと思って。シーザーさんにはお世話になったから。
……ありがとうございます、頑張ります。

本当にそれだけの短い会話だった。会話というよりは連絡に近い。
神社というのは最寄りの駅から学校までの道のりの途中にある神社のことだろう。長い階段を上った先に森の一箇所がぽっかり抜けたようになっていてそこが神社になっている。静かだし人も来ない。もしかしたら選んだ理由が何かあるのかもしれない。

「…で？いいのこんなことして」
隣にいるシーザーに尋ねると口の前で人差し指を立てて黙れと言われてしまう。
「だって、気になるじゃあないかそれに教えてきたってことは来てくださいと言っているようなもんだろ？」
「違うと思うぜ…というか具合悪かったんじゃねえの？」
「木陰で涼しいから平気」
どうやらシーザーは何としてでも展開が気になるらしい。今のように茂みに隠れてまで見たいとは…以前のシーザーからすれば想像もできないような行動だ。
ジョセフは隣にしゃがみ込むシーザーの整った横顔をバレないように見つめる。
柔らかなブロンド 空のように透き通った青い瞳と白い肌に長いまつげが影を落とす。
明らかに西洋の人間だとわかる顔立ちで白と紺のセーラー服を着ているというのがミスマッチでそそる、と学年のバカが言っていたな、とジョセフはどうでもいい事をぼんやりと考える。

…さっきあんな事された相手がいるのにこの子は危機感がないのかねぇ…
もしかしたらこれから起きることしか考えていなくて自分の事なんて忘れているんじゃあないだろうか。

「シーザーちゃん俺のこと忘れてない?」
「あ？忘れてたら置いてきてるだろ」
何を言っているんだといわんばかりの顔をして睨まれる。
「そうよねぇ……」
微妙な心境でジョセフがつい下を向くと「きたぞ」ととなりで小さく囁く声が聞こえる。
反射的に視線を上げると境内の前に男女が入ってくる。承太郎と花京院だ。
花京院が先を歩いてその後ろを承太郎がついていく。速度を落として歩みを止めると花京院が後ろを振り返った。
「…ね……して」
「………」
「……だけど………も…たいから｣
これだけ距離が離れていると会話がなかなか聞き取れない。これじゃあ暑い中隠れて待で来た意味がないじゃないか。
どうする、と言おうとして隣を向いたジョセフの口からは何も言葉は出なかった。
顔の前で願い事をするように手を握るシーザーの目は二人を捉えているのだろう 眉間にはわずかに皺がよっている。
「花京院……」
息を吐くような声で言った言葉をやっと聞き取る。

シーザーは本当にただ二人が心配で仕方ないのだろう。興味本位ではなく心から二人の心配をしている。
彼女にとって二人はそれだけ大事な存在で、同性であり同じような立場だった花京院は尚更なのだ。だから今こうして祈る様にしている。
二人の幸せを一番に喜ぶのはきっとシーザーだ。自分でも当人達でもなく、シーザーだ。
友達のことを深く信頼し、篤い情を注ぐのは彼女の…彼の以前からの性格だ。

それに口を出すような真似は、けしてしない。

何もなかったようにもう一度二人に視線を戻す。

（…ぜってぇ上手くやれよ、花京院）

■■■■

予想通り神社には誰もいなかった。背の高い木が風に揺れる音がする。
歩いているうちに心の準備は出来上がった。後は言ってしまうだけだ

「ごめんね、こんな所に呼出しして」
「いや」
「もっと早く返事をするつもりだったけど、僕もちゃんと考えたいから｣
承太郎は学生帽の鍔を下げる。それが彼なりの相槌だと知っている。
「正直に言うよ。」
「あぁ、なんでも来い」
深呼吸をしてから承太郎の目を見つめる。距離があるから真上を向いてるんじゃないかと言うほどではない。
「…僕も、君が好き」
「……」
「でも、」

僕は空条承太郎とは付き合えない。


風音が強くなるような気がする。承太郎は何も言わない。

「僕は、自分に自信がないし君と釣り会えるとも思ってない。君の周りにいるような女の子みたいに綺麗じゃあないし自己主張もできない もし君の隣に並んだ時に君は惨めな思いをするかもしれない。なんであんな子、と言われるかもしれない。」
「それに、僕の体じゃ子供も産めないんだ。それじゃあ君の血を継げないだろう?」
誇り高いその血が、どうか途切れてしまわぬ様に
「君には僕よりふさわしい女性がいるはずだ。だから僕は君の良き友人としてその時まで」
「言いてえことはそれだけか。」

今まで何も言わなかった承太郎が被せるように言い放つ
鍔の下から覗いた表情は今までと何も変わらないのに背筋が伸びるような気分になる。

「それで終ぇなら言わせてもらうがな、テメェのそれは言い訳って言うんだぜ花京院」
「なっ…」
「聞いている限りそれはお前の理由じゃあねぇ。周りの意見ばかりでしかもそれは予想だ。お前の理由にはならねぇ」
言われると思わなかった言葉に何も言い返せず、さらに承太郎は捲し立てる。
「血が継げねぇだ？ふざけるな、俺一人がどうしようがジジイも仗助も、飽きるほどうちにはいるんだぜ」
「だ、だけど君っ子供が欲しいとかそういうこと…」
「俺はお前がいたらそれでいい、まぁガキがいたらそれはそれでいいかもな」
「……滅茶苦茶だ」
このバカは何を言っているんだ？自分がいたらそれでいい？そんなのただの……殺し文句だ。

「俺はお前の意見を聞いている。お前が本当に、さっきの言い分を抜いて嫌だというなら、俺は無理強いしねぇ」
「………」
「てめぇはどうしてぇんだ、花京院」
「僕は、」
つい言葉が詰まる。
自分だって承太郎が好きだ。今度こそ途中で居なくなることがないように隣を歩きたい。
もし承太郎がこんな自分でいいというなら、それを望むなら
素直にそれを、受け入れたい

「承太郎！僕は――……」


■■■■■

「……帰るか。」
ぼそ、と隣でシーザーが呟いて立ち上がる。一瞬遅れてジョセフが口を開く
「えっ良いの？最後までいなくて…」
「流石にここからは二人きりにしてやりたいし、後は心配もないだろ？」
帰ろう、と笑うシーザーは安心したような顔をしている。
「……そうねン」
ここからはふたりの時間だ。
音を立てたしまわぬように気をつけて、二人はその場を後にした。


日が傾き始めた道を並んで歩く。アスファルトに二人分の影が伸びる
「でも、なーんも聞こえなかったな。」
「そうだなぁ、ちょっと遠かったかな…」
「もしかしてシーザーちゃん本当は二人の会話聞きたかっただけじゃないのぉ〜？」
「ばっ、ばかいうな！本当に二人が心配だったんだ！お前と一緒にするな」
「何だよ、俺がやじうまだって言いたいわけ？」
自分だってそれなりに二人を応援したいと思っているのだ。野次馬だとただ言われるのは納得が行かず反抗するようにいいかえすとそこまで言ってない、というシーザーは伏し目がちに口を開く
「…悪かったな、お前がただの興味でついてきたと思ってる訳じゃあないんだ｣
「そ、ならいいけど。」
「あぁ……」
「……」
沈黙がおりる。どこかに寄り道するという提案も今日はなくシーザーは足元に視線を落として自分の横を歩いてくる。
二人以外に誰もいない帰り道は程よく沈みかけた夕日によってオレンジ色に染められている。
絶好のシチュエーションにジョセフは胸が躍るのを隠しきれない。

もしかして、さっきのお話の続きができるんでないの？

覚悟を決める
「シーザー、あのさ」
「…気になっていたことも終わったし、早く帰ろう」
しかしシーザーはまるで聞こえないかのような態度を取って歩く速度をあげる。そしてあっさりとジョセフを追い抜いてしまった
「なぁ、シーザー…おい」
ジョセフが声をかけても振り返ることをしない。ピンと背筋を伸ばし意気揚々と前を歩いていく。
それはあまりにも不自然で、こちらを意識しているとしか思えないあからさまな行動にジョセフはどうしようもない苛立ちを覚える。
ジョセフはいっそう強く声を張り上げた

「なぁ、シーザー！」

シーザーはあっさりとその場で足を止め固まったように動かない。金髪が陽の光を受けてキラキラと光る。
「早く帰ろう、もう遅くなってしまう」
「シーザー」
「お前本屋に寄りたいんだろ？早くしないと売れてしまう」
「そんなの良い。」
「……早くしないと、二人が来たらなんて言い訳する？」
「ならどこか入って話をしよう」
「……」
「早く早くって、急いでどうするつもりなんだ」
とうとうシーザーは何も言わなくなってしまった。小さな背中は少し縮こまっているかもしれない。
「だって」と小さな声がして、それでもしっかりとジョセフは聞き取った。
「今までそんなこと考えたことなかったんだ。｣ ]]>
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		<dc:date>2014-01-22T17:44:53+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry73.html">
		<link>https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry73.html</link>
		
				
		<title>リグレット</title>

		<description>特に大きな事故もなく、ただほんとうにぼ…</description>
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			<![CDATA[ 特に大きな事故もなく、ただほんとうにぼんやりと18年生きてきた。
数にしてみればたったそれだけの年月かもしれないがそれでも18年生きてきた。
母と祖母、幼なじみが二人いて、女と男が一人ずつ。
女の方が近所のガキ大将―それでも自分の方が強かった―にいじめられて泣いてれば男の方の幼馴染と二人で乗り込んで容赦なく、それもいじめられていた筈の女の方が仲裁に入るくらいにはボコボコにやり返してた。
父親を遠の昔に亡くした男の幼馴染は、家の権利を多忙な祖父が持っているから手放す事は出来なくて飯だけウチで食べて大きな家に帰って一人で眠るような生活をしていた。
それが可哀想で女の方と俺でちょくちょく泊まりに行っていた。見た目に似合わず泣き虫なアイツが泣いてしまわないように。

そんな風に三人揃って大きくなった。二つ年上の男の方が保育園を出て小学校に行った時泣いていた自分もシーザーが中学に上がる頃にはそんなことで泣かなくなっていた。それ程には大人になっていたし、それ程には現実を見るようになった。


俺と女の方が高校生になったとき、男の方はまさか同じ学校にくるとは思っていなかったらしく面食らったような顔をしていた。
その時既にアイツは3年生だったし一緒に過ごせるのは一年だけだったけど、その時はまた大学まで追いかけてやろうと思った。

そんな年の６月 梅雨が終わる気配が全くしない昼休みに珍しく男の方と二人で昼飯を食べていた。 女の方が何故いなかったのかは知らない。
「スージーQのこと、どう思う」
スージーQと言うのは女の方の幼馴染の事で、その名前が出ること自体は珍しくなかったが、とっさに反応できなかったのは聞かれた内容がおかしかった
「どうって？」
「そりゃお前、可愛いとか……彼女にしたいとか」
一つ目の例えと二つ目の例えに間があったことは特に気にはならずむしろそんな質問をして何か意味があるのかと思った。
どう思うと言われたら可愛いと思った。いい子だし、いつもにこやかで料理もできてちょっとドジで。愛嬌のある万人受けするような子だ
家族のような、自慢の幼馴染みだ。
ただ、それだけでそれ以上でも以下でもなかった。

「じゃあもし、あの子がお前を好きだと言ったら？｣
「いつものことだろ？昔から仲がいいんだ。」
「あぁ、そう言う事じゃあなくて。」
昔からそういう事には疎いよな、お前と苦笑いをする
「likeじゃあなくて、loveのほう」
「冗談だろ？」
思わず笑ってしまう。だってそうだ、記憶の定かでないほど小さい頃から一緒にいたのだ。それこそ三人で風呂に入ることもあったし、今更そんなloveだなんて言われても異性というよりは兄妹なのだ、

「それ、直接あいつに聞いたの？」
「聞いたというか、本人から相談された」
「なんて？」
「鈍すぎて困るって。」
楽しんでいますというような顔で俺を見る男の方に俺は何も言えなかった。
「気づいてなかったのかお前。まぁ無理だよな、生まれた頃から一緒にいたんだから」
「……お前だってそうだろ」
「それとこれは別だろう。今はお前とスージーの話だ。」
さも自分は関係ないよという言い方だ。そもそも相談事を当事者にしてもいいのだろうか。
「お前はどうするんだ」
「…どうも何も、考えられねぇだろ」
「まぁそうだよな。俺だってお前らがくっつけばそれはそれで嬉しいが、想像ができない」
「一番できないのは俺なのに。｣
「はいはい、俺が言ったっていうなよ？向こうが何か言うまでは動くなよ」
空の弁当箱をシートでくるんでサッと立ち上がる。まだ昼休みが終わるには時間がありすぎる
「どっか行くの」
「ちょっとな。夜また弁当箱返しに行くから。じゃあな」
それだけいうとヒラヒラと手を振って男の方は……シーザーは行ってしまった。


それからは何もなく、スージーQの方からも何もないので言われたとおりに俺も動くことはなく時間が過ぎていった。
3年後には俺の思惑通りに二人揃ってシーザーのいる大学に入学するとシーザーはまたか、というように怪訝な顔をしてから笑った。
「スージーQ、おめでとう」
「ありがとうシーザー」
「シーザー俺は？」
「なんだ、裏口入学か」
「努力の賜物ですぅーッ！」
「嫌いな言葉は努力と頑張るじゃあなかったのか？」
そんな風に笑って話を交わす。
学科が幅広いその学校はシーザーと同じところという点を除いても魅力的な学校だった。
シーザーは建築、スージーQは語学、俺は経済に。
授業がかぶることはまずないが週末の夜には会えたから定期的に飲み会もした。
共通の飲み会が一度だけあった。どんな組み合わせかは覚えてないがとにかく三人とそれぞれ友人が揃った。

その日のシーザーはなにか落ち着かなかった。いつもなら俺の隣か向かいに座るのに一番離れた席にいた。まぁそんな時もあるだろうかと気にはしなかったが会が始まってから終わりまで一度も声をかけに来なかった。

すっかり夜も更けて一軒目を出て二次会組と帰宅組に自然に別れ始める。
いつものように三人で帰ろうとシーザーを探すと見つけるより先にスージーQが呼んだ。

「ジョジョ」
「ん？」
「あの、そのね」
言いにくそうに下を向くのを見て不意に高校時代のシーザーとの会話を思い出す


スージーQのこと、どう思う


まさか、今になってと思った。気のせいだったらと
それでも嫌な予感は当たるもので



「あたしね、ジョジョ」



…その夜からシーザーは行方不明になった。


root1:Not found 

いつかはこうなると思っていたが実際に起きると人は正しい判断ができない。
とりあえずその夜は返事を保留にして家路についた。
と言っても方向的には同じなので夜も遅いから二人とも黙ったまま歩いて帰った。シーザーは二次会に流れたかもしくは終わって直ぐに帰ったと思った。

異変に気づいたのは遅くはなかった。

「シーザーが来ていない？」
そう聞き返すとシーザーの友人であり自分たちの先輩であるマルクはこくりと頷いた。
「マメなシーザーだから、休む時は絶対学校に連絡を入れるんだけど今日は何も言われてないみたいで…僕のところにも何も来ていないし」
幼馴染の君ならばなにか知ってると思って と付け足す。
自分のところにも何も来ていない。今朝、昨晩はどうしたのかとメールを入れてみたが帰ってこなかった。
そして今日は休むというような連絡もない

「シーザーの家には？」
「行ってねえ。昨日はそのまま帰っちまったし、朝だって待ち合わせしてるわけじゃあねえから一々寄らないし」
「そうか……」
困ったというようにマルクは口元に拳を当てて黙り込む。
もし昨日の飲み会で飲みすぎて眠っているならば連絡がないのも納得がいく。
ケイタイの発信履歴からシーザーの番号を呼び出す。
数コール鳴ってから女性の事務的な声が聞こえて通話を切った。
「でない。」
「参ったな。何か変なことに巻き込まれてないといいけれど」
「俺午後は講義ないからアイツの家行ってみるわ。もしかしたら遅れてくるかもしれねえし」
遅れてくるならそれでいいし、家にいるならそれでいい。とにかくシーザーがどうしているかだけ分かればいい。
よろしくね、と笑ってからマルクは次の講義へ向かった。

■

呼び鈴を押す。鐘をつくような音がするが返答はない。
「……」
おかしい 何がなんでもおかしい。彼が次の日に用事を控えているのに家に帰らない等ということはありえなかった。
どんなに遅くても一度は家に帰るシーザーが帰らない事などありえない。
自宅に戻って母親を探す。母親は自室でパソコンに向かっていた。
エリザベス・ジョースター 親しい人は母親をリサリサと呼んだ。
「母さん」
「あら、帰ってきたの」
メガネを外しながらリサリサがこちらを向く。
「ただいま。なぁ、シーザーしらね？」
「さぁ、そもそも私は今日一日家から出ていないから…学校ではないの？」
「学校にも家にもいねえから聞いてんの」
「そう…まぁ大学生だもの。家に戻らない日があってもいいじゃあない？モテるじゃない、彼」
モテる、という単語に不意に胸が締め付けられる。ただリサリサの曖昧な返答への苛立ちが勝った
「そう言う事じゃあねえんだよ！家に戻らないとしても連絡もなしに休むってのが有り得ないんだ！」
「…ジョセフ、貴方シーザーを知り尽くしてるみたいな言い方するのね」
「……」
「貴方が知らないことだってあるんじゃあない？家に帰らない夜もあるかもしれない、連絡を忘れることもあるかもしれない、意外なものが嫌いかもしれない」
「………」
それに、とリサリサは続けた
「彼がどんな思いをして、どんな人を好きになるかだって、知らないでしょう」
「何だって？」
脈略のない言葉を理解できずに聞き返す。しかしリサリサはさぁね、と誤魔化してもう一度机に向かう。
「とにかく、今日は待ちなさい。明日以降にも見付からなければ話をもう一度しましょう」
「……わかった、仕事の邪魔して悪かったな」
「いいえ」
それだけ伝えて部屋を出る。後ろ手に閉じたドアの向こうでリサリサの呟いた言葉は誰にも届かなかった。

「…自分に向けられた優しさに気づきもしない子供が何を言ってるのかしら、ねぇ、シーザー」



シーザーの捜索願を出したのはそれから一週間後、遠くから戻ってきた祖父が決断を下した

■■
それから7年、俺とスージーQが25、シーザーは27になる。
結局シーザーは消息不明のままだった。
スージーQと俺が付き合い始めたのがシーザーがいなくなってから二年後。 スージーQからの告白を蹴った形になったのが申し訳なくて今度は自分から申し込んだ。
「シーザーが見つからないのを理由にして、2年も放っておいて都合がいいとは思ってる。でも」
「わかってるわよ、いいよ。付き合ってあげる」
下げた頭を上げるとスージーQは困ったように笑っていた。
そんな時にも頭のどこかでは今シーザーがいたらどう言っていただろうと考えていた。

国の法律で行方不明者は７年経つと戸籍を無くして死亡扱いになる。 シーザーは戸籍上死んだ事になった。
一度も連絡はなかった。

同じ年に結婚した。春の日差しが暖かい日だった。
純白という表現がぴったりなドレスをきたスージーQは綺麗だったし教会に入ってきた彼女を見てみっともなく泣いてしまった。
式も終わって教会の外にみんなが移動するまでの間誰にも聞こえないような声で話をした。
「シーザーがいたらって思ってる。」
「あらやだ、同じこと考えてるの？」
「お前もかよ」
「そうよ、だってせっかく私とジョジョをくっつけてくれた本人がいないのよ？」
「くっつけたって……」
「自分の事は後回しにしてまで、ね」
「え？」
つい聞き返すとしまった、というような顔をしたスージーQは首を横に振った。
「なんでもない、行こう」
それだけいうと俺の腕を引いてスージーQは歩き出した。


それから、数ヶ月 季節はすっかり夏になってしまった。
学生時代の友人と出かけてしまったスージーQを見送ってから溜まっている仕事を片付ける。大学を出てからすぐに小さな不動産屋に会計係として就職した。
数時間仕事をしてから休憩がてらに部屋を出ると玄関で物が落ちる音がした。
玄関に向かうと備え付けのポストから玄関に手紙が一通放り込まれていた。
ダイレクトメールではなさそうな封筒を手に取る。翡翠色で無地の封筒には自宅の住所と自分とスージーQの名前。 ひっくり返して裏を見ると息が詰まる。

住所はない、ただ名前がひとつ
流れるような、もう何年も見ていないがすぐに差出人がわかる字でこう書かれている

『Caesar・A・Zeppeli』

震える手で封筒を破る。中には数枚の手紙が入っていた。 


敬愛なるジョセフ・ジョースター、スージーQへ

やぁ、久しぶり
二人とも元気だろうか、元気だといいのだけれど。
俺が居なくなってからもう7年になる。大丈夫、自分が行方不明者であることはわかっているさ。
７年経つと行方不明者は死んだことになるのは知ってるな？知らなかったらこの際に覚えておくといい。
この知識を使うことが以後無いと願おう。
そういうことだから俺は死んだことになる。 というかなったんだ。
お前達のことだから今でも俺のことを思い出しては「もしここにいたら」と考えるかもしれないが死んだ人間のことは考えない方がいい。もうきっぱり忘れるんだ。
言霊って知ってるか？会いたいって気持ちが強ければ強いほど思いは形になって相手に届いてしまう。
お前たちがそう願えば願うほど俺も会いたくなってしまうんだよ。
もう二人の邪魔はしないって決めたんだ。 会いたいと思うようなことはしないで欲しい。

風の噂で聞いたけど結婚おめでとう。
スージーQは長年の想いが叶って良かったな。鈍感なジョジョ相手は大変だったろう？
ジョジョはこんなにいい娘の思いに気付けないんだ。そこを直さないとこの先苦労するぜ。
…まぁ、俺のことに気付かないでいたのは都合がいいか。

……この際だから書いてしまおうか。
ここから先は二人に宛てて、というよりはジョジョに宛てた内容になるから、もしあれならばこの紙から後はジョジョが自分で管理するといいだろう。捨てるなりなんなりしたらいい。
きっと、気持ちの良くなるようなものではないと思うから。
…いいか、これはなジョジョ。俺が長年明かさなかった唯一といってもいい秘密だ。

ジョジョ、俺はな
お前が好きだったんだ。

likeじゃあないんだ、loveの方…って昔もこんな言い方したな。
とにかくお前が好きだった。人の思いに鈍感なくせに誰かが困っていたら真っ先に手を差し延べるのも、小さかった俺が寂しくないように傍にいてくれる優しさも。それを悟らせないように誤魔化そうとするのも。
成長するに連れてお前の優しさが目に見えてきて、俺は嬉しかった。
いつから好きだったかは今となっては知らないが、確かにお前が好きだったんだ。

スージーQがお前を好きだと言ったとき心から応援しようと思ったし、お前が取られてしまうのかと胸が締め付けられた。
でもお前もスージーも昔からの付き合いで、二人とも俺には大事な家族だから、もし二人が結ばれるならこんなに嬉しいことはないよなと思った。
 男の俺がお前と付き合えるとも思わなかったから、俺は二人を応援しようと決めたんだ。
スージーQに俺の気持ちを伝えた上で応援することにしたんだぜ。
二人の幸せが俺の幸せだから。
飲み会の夜にスージーQがジョジョに告白するのを聞いた時、俺は限界だったんだと思う。
二人が結ばれるのは嬉しいが、自分の目の前で幸せそうに笑っているのは見ていられなかった。
二人がもし結婚したら、笑顔で祝える自信もなかったし、子供の顔なんて辛くて見れないって思ったんだ。
だからあの夜は二人にバレないように会の途中で逃げ出した。
……最初はすぐ家に戻るハズだったんだ。でも一回逃げ出したら怖くて戻れなかった。
お前たちの顔が見れなかった。

このことを伝えていないのはお前だけだ、ジョジョ
スージーQには伝えてあるし、もしかしたらリサリサ先生も気付いていたかもしれないな。
 

結婚式に出れないのも、お前たちの子供の顔を見れないのも非常に残念だ。
でも、きっとそれ以上に俺は辛い思いをしてしまうから、それでもいいんだ。
それが、ベストなんだ。

…この手紙がお前たちの元に届いている時、俺はきっと死んでいるだろう。
法律的にも、物理的にも。
本当に一度も会いに行けなくて悪かったと思ってるんだ。
でも、許して欲しい。どうか、許して欲しい。

…だめだな。これで終わろうと思ったのに、いざ書いてみると未練がましくなっちまう。
だから最後に一度だけ、これで終わりにするから言わせてくれよ

会いたかったよ、ジョジョ。
ずっとお前が好きだった…好きなんだ。

…二人とも、幸せに。

じゃあ、元気で。


シーザー・A・ツェペリ


 
「……」
最後の文は、読むのに支障はないが、それでも滲んでしまっている。
声を殺しても後から後から嗚咽が漏れていく。涙が微かな音を立てて床にシミを作っているのをただぼんやりと見ることしかできない。
「こんな……バカな話があるか」
二人の幸せが自分の幸せだなんて、どんな気持ちで書いたのだろう。
二人とも幸せにという一文をどれだけ苦しんで、手を止めながら書いたのだろう。

「会いたいなんて書くくらいなら、最初から、言ってくれりゃ良かったんだ…」

他人を優先しないで、少しでも自分の欲望に従順になっていたら、こんなに苦しまなくてよかったじゃないか…俺だって、手紙を読むまで気づかなかったようなバカな俺でも、気付けたのに。
気付こうとしないで何を言っているのだと自分に嫌気がさしてさらに涙は溢れ落ちる。
…自分が彼を好きだったのだと気づいたのが遅すぎた。 彼に手を伸ばすことが遅すぎた



二人とも幸せに、なんてそんな。

「じゃあ、お前が本当に欲しい幸せはどうなるんだよ、シーザー……ッ!!」

自分が欲しい幸せが何処にあるのかもわからないまま居なくなってしまったシーザーは
翌日の昼、冷たくなって…やっと、帰って来たのだ。 





root1:Not found（見つからない）



root2:ずっと君を探してたんだよ。

シーザーが行方不明になってから今年で五年だ。
俺もスージーQも大学を出てそれぞれの道に就職していた。
結局のところスージーQからの告白は断ってしまった。理由としては、好きなのは好きだが、やはり異性への好意というよりは家族への好意だったこと。
それから、シーザーがいないというのに自分ばかりいい思いはできないな、と考えてしまうから。
ただの言い訳にしか聞こえないような理由をいうとスージーQはやっぱり、と笑った。

「そういうと思ってた。私もやっぱり今の状況で付き合えないわ。」

だから、頭をあげて？と笑うスージーQは健気で人のフォローができる程大人になったのだと思った。
自分の事ばかり考えて子供のままでかくなったような俺は何をしているんだろうと自分に腹が立った。

定期的に連絡はとっていたが就職の為にそれぞれ家を出た。二人とも別方向に就職した。

知り合いの財団で働くことになった俺はやっと仕事に慣れてきた。
主な仕事は社長を務める知り合いの元で秘書をした。
よくパーティなどについて行ってそれなりに雑談を交わした。

「いやぁ、君も若いのに大変だね。いくつだい？｣
「23です。」
「まだ若造でして、大きな仕事なんて任せられませんよ」
「ジ……社長」
会社では社長と呼ぶようにと言われているのになかなか癖が治らずに言い直すこともしょっちゅうだ。
その様子を見てよく相手は楽しそうに笑う
「いや、わかいのに頑張っているじゃあないか…そういえばうちの会社にも若いのがいてね、主に建造物のデザインをしているんだが、そのへんのベテランよりも斬新なアイディアをだすし、働いてくれるよ」
「……へぇ」
「たしか、君より二つほど上だったかな」
微かに心臓が跳ねる。 二つ年が上で建築をやっていて……まるで
いや、そんな都合のいいことはない。と自分の中で期待を掻きけす。ビジネスの世界がどれだけ広いかこの数年で嫌という程経験した。

下手な期待をして傷付くことがないように

「たしか君らと同じ出身だった気が…」

止めてくれ、と言ってしまえたら楽なのに重い口は開くことをしない。
誰かが適当に話に入って来てくれたなら話題がそれるのに。
そうしたら、淡い期待は淡いままで終わるのに。

しかし淡い期待は

「シーザー、ツェペリと言ったかな」

この5年を否定するように、あっさりと確信に変わってしまう。



■■

父さんが死んでから、母さんは家族を養うためにほとんどの権利を爺さんに預けて遠くへ稼ぎに行った。
家事はけして得意ではない母に妹たちはついて行った。男の俺が妹たちの面倒を見れるとも考えていなかった。
月に二度生活費の振込と手紙が届いた。それでも小さな俺には手に余るほどの大金で月の振込は自動で引き落とされるようにしてあったし、初めて口座を見てみると驚くほどの貯蓄がされていた。

幼馴染が二人いた。可愛らしい女の子と、やんちゃな男の子 二人とも二つ年が下だった。
俺のことを慕ってくれる可愛らしい女の子が好きだった。それは恋愛とかそんなものではなくて家族や兄妹への愛だった。
男の子は家族で俺を良くしてくれた。善意からの行動ではなく本当にそうしたくてしていたのだと思う。

前の晩に男の子が泊まりに来て、朝起きてその子の家で暖かい朝食を食べて、綺麗な母親がお弁当を持たせてくれた。
学校で三人で弁当を食べて、家に帰って洗った弁当箱を持って男の子の家に行く。おいしい晩御飯を楽しく食べて、家に帰って風呂に入って眠る。
そんな生活が楽しくて、俺の全てだと思った。

いつからか男の子を目で追うことが増えた。
俺は中学二年になっていて、二人は小学校6年になっていた。
男の子は目に見えて背が伸びて逞しくなった。男の子というよりは男になっていた。
それでも俺の方が背は高かったがそれでも凛々しくなっていく彼を目で追った。
これが家族や友人に対する思いではないと気づいて距離を置こうとした。
消して頭の良くない二人が追いつけないようなレベルの高い高校を選んだ。

それでも二人は追いついてきた。嬉しそうに笑って俺の元までやってきた。女の子の方は幼さの残る笑顔で俺に飛びついてきた
男の方はその頃には俺より背が伸びていた。
二人と同じ高校生活が始まってしばらくしないうちに女の子は恥ずかしそうに俺に相談を持ちかけた。
彼が好きなのだと、顔を赤くして目に涙を溜めて。 本当に可愛くて、同時に自分はこんなふうにはなれないのだと感じた。
アイツも男なのだから俺よりも可愛らしい女の子に好かれる方が嬉しいだろうと思った。
それにこの子になら負けてもいいと、家族同様である彼女の幸せが俺の幸せだと考えた。
それでも高校の間は二人は付き合っていなかった。

離れるなら次のタイミングだと思って俺は実家より離れた大学に入った。二人には一言も言わなかった。
それでも二人には追いつかれてしまった。自慢げな顔で俺の学校の合格通知を見せに来た時には本当に逃げ出したかった。
定期的に飲みに出ることもあった。ある日の飲み会の前に女の子は俺に言ってきた。
告白しようと思う、と。
全力で笑顔を繕って応援したら嬉しそうに頷いてくれた。
女々しくて申し訳ないが仲睦まじくしている二人を見れる自信がなかった。
その夜はバレないように会がお開きになるのと同時に場を離れた。
家に戻るのが嫌で駅前の漫画喫茶に入った。次の日には帰るつもりだった。


一度逃げると戻れないもので、俺はその後も学校にも行かずにのらりくらりとしていた。
二人がいないであろう時間に家に戻り通帳や印鑑その他必需品を取りに家に戻った。
まだ学校は終わらない時間だったから鉢合わせはしないだろうと思い家を出たら男の方の母親に会った。
彼女は驚いたのか俺を見て固まってから何か言った。声は聞こえなかったがおそらく俺を呼んだんだと思った
「あなた、今までどこに…」
「すいません、すこし遠方に用があって」
もちろん嘘だった。遠くに親戚なんていないし、いても海外にでている祖父だけだ。母親のところへ行くのにも時間と費用がかかる。
嘘ね、と鋭い彼女は呟いた
「あなたにお爺さん以外の親戚がいないのは知っているわ。お母様の所に行くにしても貴方いつも一言言っていくじゃない」
「……ごめんなさい」
「今までどこに」
「特に理由もなく色んなところを転々と…持ち合わせがなくなったのでそのついでに荷物を取りに戻りました」
そういうと何か悟ったのかじっと見つめてきた。昔から見慣れてきた綺麗な緑色の瞳だ
「まさかシーザー…出ていくの？」
「とりあえずここから離れたところに…祖父に頼んでこちらでできる仕事を見つけるつもりです」
「大学は」
「今日の放課後、直接退学手続きをしに行きます。」
「この家は……」
「このままで。妹と母が戻ってきたら使ってもいいですし、借りに出してもいいです。」
そう言って家の鍵を出して冷えた手に強引に、押し付けるような形で握らせた。
「どうか時間のあるときに簡単な掃除と換気をおねがいします。それから、もし捜索願を出すならば数日したところで取り下げてください。大丈夫です、死ぬような事はしないし定期的に貴方宛に手紙を出します。」

それから、もう一つ

「スージーQと…ジョジョには内緒にしてください。行方不明のまま、消息がわからないと お伝え下さい。」
「……顔を見なくて良いの」
「いいんです。見たら、離れられなくなる」
「…そう」
諦めたように溜息をつくのと同時に手が離れていく。
「あの子は…ジョセフはあなたを探すかもしれない」
「…どうか、彼が引きずらないようにフォローしてあげてください。」
「……ここで会ったことは誰にも伝えません。もちろん、先程の話も。」
「お願い致します。」
「いたらぬ息子で、あなたに迷惑をかけてごめんなさい」
そう言って頭を下げた彼女は全て知っていたのかもしれない。気づいていたのかもしれない。
それでも、決めたことは決めたことだ。
「今までありがとうございました……お元気で」
それだけ伝えると駅に向かって歩き始めた。
恐らくそのあとも彼女はその場所から動かなかったかもしれない。
でも、呼び止めるような事はせず、俺には好都合だった。

呼び止められたら、出ていけなくなるじゃあないか。

それから都心に出て祖父の紹介で空間デザインの会社に入った。
最初の頃は不審な目で見られたし雑務やら先輩の後片付けをさせられた。
一番早く出社して、一番遅く退社する。
少し離れたところに小さなアパートを借りた。伽藍として中古の薄型テレビとノートパソコンが不釣り合いだった。

二年たって大きなプロジェクトに入れてもらえた。
やることは普段と変わらなかったが。意見を求められるようになった。
物怖じしては駄目だと思って率先して意見を出したら「若いのになかなかできる」と褒められた。
そこから少しずつ、小さいが仕事をもらえるようになった。

それから3年、地元を発ってから５年目だ。
部屋はそのままだが安い本棚を入れた。少し部屋らしくなった。

古いが汚いわけではなく、それなりに愛着の湧いた家へ帰る。 

約束通り男の幼馴染の母親に手紙は出していた。彼女以外に見られてもいいように自分の住所と名前は封筒ではなく手紙に書いた。
主に話すのはこちらの近況。どうしても長くなってしまう手紙に毎回彼女は丁寧な、それでも二枚程度にまとめて返してくれる。
返ってくるのはあちらの近況。男の方が就職で地元を離れたと書かれていたが深くは追求しなかった。

きっとアイツのことだから楽しく愉快に仕事をしているのだろう。
そしてもしかしたら……女の子の方と、もしくは他の女性と結婚しているかもしれない。
もしそんな手紙が来たら一度くらいは彼宛に手紙を書こうかと思いながらアパートの階段を登る。つい足元を見てしまう癖はいつになっても治らずに、治す気もなく登りきって視線をあげた瞬間に凍ったように動けなくなった。
 
なんで。
 
口には出さなかったが視界の端に人影を捉えたからか家の前にいた人物はこちらを向いた。 
暗闇に溶け込む茶色い髪 いつの間にか追いつかなくなった背丈。
昔から好きだった緑色の瞳はゆっくりと見開かれる。

数十メートルが恐ろしくて仕方が無い。走って階段を降りれば逃げられる それができる筈なのに、この数十メートルを一歩で埋められるような気がして動けない。

ゆっくりと、口を開く
「……シーザー？」 
記憶にある声と何も変わらない声を聞いたら力が抜けて座り込んでしまう。
ずっとしまい込んでいた想いが音を上げる前に逃げないとと思うのに
「シーザー……シーザァー！」

二度目に聞こえた声で耐える間もなく涙が瞼を超えてしまった。


■■■

「あの、彼の住所はわかりますか」
「は？」
突然の質問に相手は間抜けな声をあげた。
それが当然かもしれない。それでも俺には大事なことだ。
「あのっ、そのシーザーという男の住所は教えていただけませんかっ！」
「なっ、なんなんだ君は!?」
「お願いします！」
慌てる相手も止めに入る知り合いにも目もくれずにその場に膝をついた。 
「お願いします、突然で迷惑なのは承知しております。でも、俺はずっと彼を…シーザーを探してきたんです！」 
おいやめろ、と声が聞こえるがそんなのどうでもいい。確実に見世物になっているだろうが関係ない。
冷たい大理石に頭を擦りつけてお願いします、お願いしますと繰り返す｡

肩を軽く叩かれる。 
「頭をあげなさい。人が見ている」
「……」
顔を上げるとしゃがみ込んだ相手は顔をクシャクシャにして微笑んでいた。もしかしたらこの時俺は泣いていたのかもしれない｡
「君とうちのシーザーになんの関わりがあるかは知らないが、きっと重要なんだろう」
「……5年前、同姓同名の幼馴染が居なくなりました。年も、彼がやりそうな仕事も一致しているんです。」
「そうか、そういえば彼も突然働かせてくれと来たんだっけな……よし、いいだろう 明日朝一でそちらに君の名前宛でメールを送るからね。」 
「……っありがとうございます。」
 
必死に頭を下げた。何度も何度も、頭を上げられなかった。
やっと見つけたのだ。5年前唐突にいなくなったきり一度も連絡を寄越さなかった、幼馴染……シーザー
大丈夫だ、気持ちの整理はついている。何を言われたって連れ帰ってやる。

「ずっと、探してたんだぜ」


■■■■

「シーザー、シーザァ……」
「なんで、」
やっと言葉を吐き出した時にはすでにジョセフに抱きしめてられていた。
繰り返し俺を呼ぶ声は涙声で、背中に回された腕は離さまいと言わんばかりに力が込められていて解けそうにもない｡
むしろ、解く気なんて既に消えてしまっていて頭を埋めるのはなぜこいつがここにいるかという事だけだった。
「仕事の取引先が、お前がいる会社、で、住所聞いて、それで」
「そんなお前……いつから」
「これない日も含めたら、もう２週間くらい、でも朝からは来れない、し、だから夜に来て…でもっ、でもいつもシーザー留守で…」
「……」
「これで、もしシーザーじゃなかったらとか、俺の事バレてて避けてるのかもとか、不安になって……っだから、今夜待って会えなければ、何か他の方法探そうと思ってた…」
そんな、春先だとはいえこんな時間帯にずっと待っていたというのか。

ズッ、と鼻を啜ってからジョセフはまた不安そうに喋り出す｡

「なんで、急に居なくなったり、したんだよ…」
「…すまなかった」
「マルクも、スージーもみんな心配してたんだぞ…いまだって、みんなお前が心配で」
「……ごめん」
腕に力が入るのを感じる。不快感は感じないし少しでもコイツの不安が和らぐなら、と思う。
不安にさせたのは俺自身だというのに
「……じいさんに頼んで仕事に就いたんだ」
「しってる、お偉いさんがよく働くって褒めてた」
「あぁ、そうか。 最近やっと軌道に乗ってきて、もう少ししたら手紙を書くつもりだった」
もう出す必要もなくなったな、と笑いながら最中をさすってやると身じろいだ。

「俺、スピードワゴンのじいさんのところで働いてるんだ。毎日色んなとこ行って、失敗して、怒られて｣
「あぁ」
「でも、目に入る全部刺激的で、楽しくて仕方ないんだ｣
「…うん」
「………ずっと、探してたんだぜ」
「……悪かった」
「なんで、いなくなったんだよ…俺が迷惑かけたから？嫌いになったの？」 
「そんな事……っ！」

そんな事、お前がそんなことを気にする必要はないのに。
迷惑なんて思ったことはないし、昔からその行動力に救われて、憧れた。
逃げたのは俺の勝手な理由で、お前には責任はないのに。

そう言えたらどれほど楽だろう。ここまで来てもまだ俺のくだらないプライドはそれを許さなかった。

「じゃあ、なんで」
「……スージーはどうしてるんだ。」
至近距離で覗いてくる緑から視線を外して会話を変えて…地雷を自ら踏んだと思った。
スージー？と首を傾げるジョセフの言葉を待つ。
「スージーQは、就職でこっちとは別方向に出てったぜ」
「、付き合ってないのか？」
「え？あぁ、まぁ告られたけどね」
思ってもいなかったセリフに唖然とする  …何で
「なんで……なんで付き合わなかったんだよ!?」
「っおい、何…」
「あんなに良い子で、ずっとお前の事気にしてて！…俺が、俺がせっかくここまでして……」
言ってしまった。 言わないでおこうと思っていたのに。
なんでもないと訂正するにも既にジョセフは怪訝そうな顔をしている。 
「シーザーがなんだって？おい、どういうことだよ！」
「いや…ジョジョこれは、」
「ここまでしてって何だよ、シーザー！」
言いたくない、なんて希望は通らないだろうか いやこれはワガママなのかもしれない。
重い口は開かず俯くような形になって視界に入るのはジョセフと自分の膝だった。

「……なぁ、俺この数年ずっとお前のこと探してたんだぜ？」
「あぁ……だからそれは悪かったって」
「思うなら、理由くらい話してみろよ！」
肩を掴んでいた手は不意に俺の手を握る。温かさが昔の頃と同じでその事に息を呑む。

…まだ、間に合うだろうか。
 
「…逃げ出したんだ」
「何から……」
お前から、と返すと小さな声だったが届いたのか手が握り直された。
「小さくて、ずっと俺の後ろをスージーQと着いてきたお前がどんどんデカくなって行くのから目が離せなかった」
「……俺はずっと、お前よりガキのままだ｣
「そう言う事じゃあなくってさ…知らない人間になるみたいで。」
小さかった手が大きく骨張っていくことも、見下ろしていたはずなのに、見上げる程に大きくなるのも怖くで、それでも目が離せなかった。
「お前に対する想いが家族や友人に対するものじゃないと思って、少しずつ距離を置くつもりだった」
「もしかして黙って頭いい学校行ったのはそれ？｣
「そう、お前ら馬鹿だったから」
「にゃにぃ〜？」
つい笑うとジョセフも楽しそうに笑う。
「…でもお前らはついてきたんだ。」
「シーザーといたかったから、俺たち頑張ったんだぜ」
「スージーQがお前を好きだって相談してくれて、嬉しかった。でも、耐えられなかった」
そう、と呟いて肩に頭を預けてきたから肩に重さが加わる。
「…でも最初のうちは我慢したんだぜ？高校の時はお前ら進展なかったし」
「ん…」
「大学にまでついた来たときは勘弁してくれって思った。ほっとけよって、思ったよ。 …俺が居なくなった夜に、スージーQが告白するつもりだって教えてくれて、それ聞いたら急に我慢できなくなって……お前らが幸せそうにしてるの見たくないなって思って、」
「逃げたわけか」
「それでも、次の日には帰るつもりだったんだ……戻れなかったけど」 

一息おいてから、話を始める。吐いた息は白い靄になって逃げていく

「だったらこのまま居なくなるのも有りかなって。俺がいなければ案外お前らはうまく進むかもしれないし……今となっては馬鹿げたいい訳だけど、お前らが幸せなら俺も幸せって思った」
「いまは」
「……正直、ちょっと思ってる。だからお前がここまで来たのが信じられねえんだ。」
「……」
「本当はリサリサさんに言ってあったんだ。学校やめたのも、出ていくのも」
捜索願も、取り下げてもらってあるんだと伝えると顔をあげた。
落ち着けよ、リサリサさんは悪くないからと言うとバツが悪そうに項垂れる。
「俺が出てったことを伝えたらお前はうるせえと思ったから内緒にしてもらった。」
「友達には、どうしてんの」
「仲のいいやつには伝えたさ。マルクにも、内緒にしてくれって条件でな」
彼とは今でも時折会って話をしている。この夏に結婚する事を照れながら教えてくれた。
「俺はずっと、騙されてたわけ？」
「すねるなよ…お前たちが幸せならいいって思ってたし、今でも思うけど 二人がもし結婚したら、子供ができたら、俺はきっと笑顔で祝ってやれない。だから逃げるなんて、勝手だろ」
首が横に振られる感覚が伝わる。
じゃあ、とジョセフが口を開いた
「俺らの幸せがシーザーの幸せなら、シーザーの本当に欲しい幸せはどこに行くんだ？」
「…」
「幸せなのを見て幸せになるなんて、そんなの人からのおこぼれじゃあねえか。お前自身の幸せは？どうなるんだ？日の目も浴びずにいつの日かお前にすら忘れられて死んでっちまうのか？」
「死んでいく……」
「そんなの嫌だ。俺はお前が本当に幸せで笑ってるのが見たい。シーザー、｣


お前の幸せって何なの？


「俺は、」
じんわりと視界が滲み出す。ぽっ、と頬を温かいものが伝って、体温が上がるのがわかった。
二人が幸せならそれでいいなんてのは綺麗事だ そんなの自分の満足でしかない。
「……俺は」
一人で暮らして誰にも吐き出せずに溜まりこんだ感情を掘り返す。
眠れない夜も、冷たく冷えた朝の部屋に一人でいる感覚
影で何を言われているのかと疑心暗鬼になった事
何度帰ろうかと、携帯に残ったままの電話番号を呼び出そうかと悩んだ夜
「シーザー俺に教えて」
全部、掘り返したその奥に

「俺は……ジョジョ、俺は」



endrole

「うひょー新幹線楽しー、あっ、シーザー何か飲む？」

隣に座るジョセフはひとり楽しそうに周りをキョロキョロとしている。窓際に座らせなくて正解だったなとシーザーは思った。
「お前なぁその年になって電車ではしゃぐなよ。あと新幹線じゃあねぇぞ」
「じゃあ何」
「特急」
この電車が新幹線ではなく特急電車であることを伝えると二度瞬きしてから首を傾げる。
「…何が違うの？」
「………」
答えあぐねていると発射を告げる音が鳴る。
「あっ、もうすぐ発車だぜっ！」
「だから！静かにしろってば」
「だって普段乗らねえもん。帰省だってバスのほうが安いし」
特急の乗車代とバスの乗車代を比べたら断然バスのほうが安い。社会人になりたてのジョセフにはそれで十分だ。
「俺は電車の方がゆったりできて楽だがな」
「うわ、金持ちは言うことが違うぜ」
「あのなぁ……お前が来てから生活費倍になってるんだぞ!?」 
「その分俺だって家に貯金入れてんだろ？」

あの後ジョセフは住んでいた部屋を出てシーザーの元に転がり込んだ……と言いたいところだがさすがにあの小さなアパートに男二人は無理だと判断したシーザーは自分の職場からもジョセフの職場からも近い中心地に部屋を借りた。
リビングとキッチンとバスルームとトイレ 仕切られた部屋はシーザーの書斎になった。
前のところとは違って日当たりもよく生活にも不便ではないその場所がとても気に入った。

シーザーは一切連絡をしていなかった知人―スージーQはもちろん、学生時代の友人達だ。―に簡単に連絡をしたら次の盆休みには帰って来いと責め立てられ八月のど真ん中にジョセフと二人で夏期休暇をとった。
ジョセフのことを知っている上司からあっさり許可を頂いて、おまけに意味有りげに微笑まれてしまった。

「母さんが飯用意してあるから食ってくるなって」
「そうか！いやぁ楽しみだなぁ」
昔からジョセフの母親の料理が好きだったシーザーは隠そうともせずニコニコと笑う。
ふぅん、ととなりから声が聞こえて目をやるとジョセフが意地悪く笑っている。
「いいのかなぁ？シーザーちゃん、今回の帰省の意味わかってるぅ？」
「あぁ？」
「俺とシーザーがお付き合い始めましたってホーコクも兼ねられてるのよぉン？」
「なっ…」
気づいてなかったのねぇとケタケタと笑うジョセフは実に腹立たしい。
こんな事なら休みを一週間も貰わなければよかったと思っていると膝をつつかれる
「なんだ？」
「ん？さすがに電車の中で手は繋げないでしょ？」
「まぁ、な。」
「シーザー、今度は逃げるなよ」
「……まさかだろ。」

前から数えた方が早い座席でみんな周りなんか見ていないのだから手ぐらい繋いでもバレないだろうと膝に添えられたままの手を捕まえる

「ちょ、」
「ジョジョ、今度は逃がすなよ」
意識してニッコリと笑ってやる。
「……そうだなぁ」


逃がす訳ないよなぁ、と笑ったのと同時に二度目の発車の報告音がなった。





リグレット:おわり ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2014-01-16T11:03:36+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry72.html">
		<link>https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry72.html</link>
		
				
		<title>super scooter ！（ジョセシー現パロ）</title>

		<description>カチャン、と音を立てて目覚まし時計が鳴…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ カチャン、と音を立てて目覚まし時計が鳴り止む。携帯にいろんな機能がついた現代に目覚まし時計？なんて同居人には笑われたがそれでもシーザーはその時計が気に入っていた。
起きてカーテンをあける。まだビルが敷き詰められたような街を明るくなり始めた空が照らす。
少しだけ窓を開けると冷たい風が滑り込んできて鼻にツンとした刺激を生む。
もう一度しっかりと締めてシーザーは障子を開ける。畳張りの自室とは逆にフローリングになっているリビングには当たり前に誰もおらず向かいの部屋の障子もぴったりと締められている。

「……さて」

フローリングの冷たさに内心悲鳴を上げながらテーブルの上に置かれたリモコンを手に取る。
テレビに電源が入ってから少し間があって画面にニュース番組が出る。昨日遅くまで起きていた同居人は音量を下げていなかったらしく急いで下げた。
「あのやろう…またやりやがったな。」
深夜に大音量で見るのはお隣にも迷惑になるかといつも言い聞かせるのに本人に治す傾向は全くない。
それでも起きないように音量を調節する自分に溜息が出る。

部屋の隅にあるヒーターに電源を入れてキッチンに向かう。
冷蔵庫を開けて何から使ってしまおうかと考えてから使い掛けのベーコンと卵を出した。
フライパンを火にかけて温まるのを待つ間にパンをトースターに入れた。
そろそろいいかと油を引くと油が跳ねる音が一気に鳴る。
タイミングは完璧だ。シーザーの気分はそれだけで少し上がる。
卵を二つ割ってまだスペースがあるなと思いベーコンも一緒に焼いてしまう。

視界の端で何かが動く気配がした。

「おはよ…」
「おはよう、ジョジョ」
寒いのか指の先までスウェットの袖を伸ばしたジョセフはまだ眠たそうに自分の部屋から出てきた。
「支度してこいよ。」
「んー……」
「こら、部屋が温まらないからヒーターの前に座るんじゃあねえよ。」
極めて優しくそういうとジョセフは素直に立ち上がって洗面所に向かった。
卵とベーコンの具合を見て食器棚から皿、冷蔵庫から昨晩の使い掛けの野菜の千切りを出した。
それを素早く皿に盛り付けてから卵とベーコンを乗せる。皿を二人分使っていたら洗い物が増えて仕方が無い、というシーザーは大皿一枚に乗せる。
焼けたパンをいったん皿に出してまた新しいパンをトースターに入れる。

「今日はシーザー何時まで？」
洗面所から戻ってきたジョセフにもう眠気はないらしい。寝癖も直されている。
「17時。それからバイトがあるから家に着くのは10時近くだな」
「そう。どうする？迎え行く？俺8時上がりなんだけど。」
「早いな」
「昨日納期で殆どデカイ仕事ないからね〜」
「じゃあ少しどこかで待っててくれよ。飯食ってこようぜ」
「了解。これ持ってってイイ？」
「あぁ」

カウンターからキッチンを覗いていたジョセフは卵とベーコンの乗せられた皿を片手にシンクの横に立てられていた箸を2膳抜き取った。
それから戻ってくると電気ケトルに水を入れてスイッチを入れた。
「何飲む？」
「紅茶。淹れてくれるのか」
「朝からそんなメンドクセーこと俺がすると思うわけ？」
「いいや。」
だろ？と笑いながらジョセフはティーパックの袋をひとつ破ってガラス製の急須に入れた。
それとマグカップを二つ手にしてテーブルに持っていきそのままソファに座った
パンの乗せられた皿とマーガリンを持ってシーザーも向かいに座る。
「ほら、テレビ見てんな」
「へい」
互いに相手がテレビを見ながら食べようが話しながら食べようが気にはしないがこれだけは二人揃わないと気がすまない。
合掌の形をしてどちらからともなく口を開いた。

「「いただきます。」」


super scooter！

二人は元々同じ高校の生徒だった。シーザーが三年生の時に新入生として入ってきたのがジョセフだ。
最初こそ仲が悪かったものの音楽の趣味だとか好きな映画だとかが合うということがわかるとあっさり仲良くなった。
シーザーが進学が決まったとき一番に喜んでくれたのはジョセフだった。第一志望に受かったことを伝えると休日だったにも関わらずシーザーの家にやって来て玄関で飛びついた。
今の家から電車で一時間ほどの所に部屋を借りた。理由は単に安いことと学校に近いことだ。
ジョセフとは学校に行ってからも変わらず連絡を取り合い休みの度に会ったりしていた。

それから２年後ジョセフの進路が決まった。小さなデザイン会社で、高校時代から美術部にいたジョセフは担任の伝でそこに就職が決まった。
そのことを聞いた時、シーザーの学校とそれなりに近いことを知った二人は若くて生活資金に余裕がなかなかない事、ジョセフも一人暮らしは何かと不安だろうという点で一つの案を出した。

少し大きめの部屋を借りて、同居しよう

先に話を持ち出したのはジョセフだった。最初は渋っていたシーザーにダメ押しで一つ条件を出す。
「俺、実は去年バイクの免許を取ったんだよねぇ。だから朝、シーザーちゃんを大学に送ってあげる。時間があるなら帰りも迎えに行く」
どう？と言いながら楽しそうに首を傾げるジョセフにシーザーは心が揺らいだ。
学校と家が近いといえども歩くには少しばかり距離があるしバイト先は更に先まで歩かなくてはいけない。自転車を買うタイミングを見失ったシーザーは健気に２年間も歩いて通ったのだ。

結局承諾してしまった。その後直ぐにジョセフの母親に連絡を取ったらこちらも不安だからぜひ頼みたいと逆に頼まれてしまった。
それから二人で部屋を借りた。
大きめのキッチン、洗面所と風呂場 ユニットバスではなくトイレは別につけられている。フローリングのリビングを間に挟むように設置された和室が2部屋。
若い二人には少し贅沢だと思ったが男二人で暑苦しく狭い部屋にいるのも嫌だからという理由とジョセフの母親が最初の間は少し負担する理由でそこに決めた。

それまで小さな部屋でひとり寂しく暮らしていたシーザーは少しばかり嬉しかった。

朝出る時間にそれほど差のない二人はジョセフのバイクで家を出る。ジョセフの会社までの道途中にある学校でシーザーを下ろす……さすがに校門前は恥ずかしいとシーザーが言うので100m程前で下ろすのがもう定番だ。
時間が合うなら帰りも迎に来てもらい買い物をしたりして二人で帰る。入社してすぐの頃は早く帰ることはできなく、いつもシーザーが夕飯を用意していた。

そんな生活ももう二年になる。シーザーは４回生になったし、人懐っこいジョセフはもう既に会社に溶け込んでいた。

二人でバイクにのってヘルメットを被るシーザーがジョセフの腰に手を回すのを確認するとバイクは走り出す。
まだ静かな街。すっかり晴れてしまった空は青く澄み渡っている。
走っている時のジョセフは基本的に何も喋らない。もちろんシーザーも、ジョセフがなにか言えばそれに返すくらいだ。
腰に回した手から伝わる体温が少しだけ寒さを紛らわす。

シーザーはそんな朝が好きだった。



- - - - - - - - - -

生徒がちらほらと増え始めるとシーザーは落ち着かないようにそわそわする。
いつもと同じぐらいの地点でブレーキをかけた。
「はい、いってらっしゃい。」
「悪いな。じゃあバイト終わったら電話するから。」
「うん。多分駅前のでかい本屋にいるから。いつものとこ」
「あぁ」
短くやり取りをしてジョセフにヘルメットを渡して歩き出す。

「シーザー」
呼ばれて振り返るとジョセフはまだそこにいた。
「…いってらっしゃい」
「ん？あぁ。お前も頑張れよ」
そう言ってやるとジョセフが嬉しそうにはにかんでから走り出す。あっという間に追い抜かれてみるみる背中が小さくなる。
始業まではまだ時間は十分にある。シーザーはゆっくりと歩き出した。

- - - - - - - - - -

昼の時間。有り合わせを詰めただけの弁当とカバンをもって席を立つ。向かう先は中庭だ。人の混み合う食堂よりも少しばかり寒くても落ち着いて食べれる場所が好きだ。

「あの、シーザーさん」
廊下に出たところで後ろから呼ばれて振り返る。同じ講義をよく取るが話はしたことのない女生徒だ。
「どうしたの？」
「あっ、えっと突然ごめんなさい…あの、シーザーさん毎朝男の人に送ってきてもらってますよね？」
「…見られてたんだね」
だから何だというのだろう。わざわざ追いかけて来て二人乗りは違反だなんて言い出すのだろうか。そんなのは分かっているつもりだ。
もしかして…デキているのかなんて聞かないだろうな。
慌てたように女生徒は頭を下げた。
「ごっ！ごめんなさい、あの気分を悪くしたなら謝ります。聞きたいことがあって……」
「謝らぬくてもいいんだよ。何だい？」
「あの、あの人とシーザーさんはどういう…」
「ただの高校時代からの友達だよ。」
それを聞いて安心したのか女生徒の大きな目が見開かれた
「あのっ…じゃああの人付き合ってる方とか…いるんですか？」
「……いないんじゃあないかな。どうしてだい？」
笑いながら胸がざわざわとして落ち着かない。なんとなく、この先の言葉を聞くことを拒否している自分がいた。 
「あの、もし迷惑じゃなければ紹介してほしいんです…」
「…」
つまりこの子はジョセフに恋をしているのだとその表情を見てシーザーは納得が言った。
小さくて可愛らしい、足が長くてふんわりとしたまさに『女の子』という言葉が合うような子だ。

そういえばアイツ高校の時に胸の大きな子が好きだとかいっていたなぁ。
いいじゃないか。アイツの浮かれた話なんて聞いたことがないし、アイツが嬉しいなら俺だって諸手を挙げて喜ぶだろう。
あぁ、そうなったらアイツはあの部屋を出ていくのだろうか。いや、もしかしたら俺が出ていくべきなのか？

ジョセフは自分が一緒なら楽しくなりそうだな、と借りる時に嬉しそうに笑っていた。

その部屋に、俺はいられなくなるのか。 朝の送り迎えもなくなってしまうのか


そんなの


「……駄目だ」
「えっ？」
女生徒からの聞き返して自分が言ってしまったことに気が付く。
「えっと、ダメって…」
「いや、その……ほら！アイツはがさつだし、家事も何もできないし、そもそも年下だし」
自分は何を言い訳しているのだろう。まるで彼女が聞いたら、ジョセフに落胆するような言葉を並べて
「きっと、君のような素敵な女性はアイツに勿体ないよ。」
「……そう、ですか？」
自分はどんな顔をして今頷いているのだろう。きっと引き攣ったような笑い方をしている。
女生徒は少し俯いてから小さな声でわかりましたと呟いた。
「ごめんなさい。引き止めてしまって」
「いや、いいんだよ。こちらこそすまないね」
「じゃあ、私はもうこの後授業ないので、シーザーさん頑張ってください」
「ありがとう」
お辞儀をして小走りに去っていく女生徒の背中を眺める。

「何を、言ってるんだ俺は」

彼女とジョセフが二人でいるのを想像して腹が煮えくり返るような感覚を抱き、消してプラスにはならない情報を並べて。
まるで


嫉妬しているみたいじゃあないか。


- - - - - - - - - -

バイトを終えて店を出ると見慣れたバイクが目に留まる。ジョセフだ

「おかーえり」
「…ただいま」

いつから待っていたのか、笑う顔は真っ赤になっている。
「どうする？」
「何でもいい。何が食いたい？」
「何でもいいが一番困るって、いつもいうのはシーザーだぜ？」
「…そうかな」
昼間のことを思い出して少しざわざわとする。疲れた時と機嫌が悪い時に投げやりにやるのはシーザーの悪いくせだった。
どうやらそれを疲れているととったらしいジョセフはシーザーのマフラーを奪い取る
「じゃあ、久しぶりに肉食べに行こう。ハンバーグ？焼肉？」
乱雑に巻いてあったのが気になったのか丁寧に、首が締まらないように巻かれていく。
こんなに優しいのに何を嫉妬しているのか、とシーザーは自分に嫌気がさした。
「ハンバーグ…」
「ん。」
じゃあ乗って、とジョセフはヘルメットを手渡した。
手にヘルメットを持ったまま立ち尽くすシーザーはバイクに跨るジョセフをぼんやりと見下ろす。

「……ジョジョ」
「ん？」
呼ぶとジョセフは見上げてくる。
「……なんでもない。」
「そう？」
シーザーもヘルメットを被って後ろに跨る。腰に手を回すと手袋をはめた手が上から重なる
「なんだ」
「なんでも。ほら、行くぞー」
本当に何もなかったようにジョセフは手を離して走り出した。

冬の夜は寒くて嫌いだとシーザーは目を閉じた。

- - - - - - - - - -

それから数日は何もなかった。
あの日のことは気にならない程度には忘れてしまっていたし、女生徒の方からも何も言ってくることはなかった。

大学の廊下を息をあげて走る。今日はジョセフが迎えに来てくれたのだ。今から出るとメールしたあと教授に呼び止められて思いのほか時間がかかってしまった。
玄関を出て人の少ない校門へ向かう。邪魔にならないように端に止まっているジョセフが目に入る。
「っ！ジョ……」
声が自然に途切れる。最悪だ、という言葉が無意識のうちに浮かんだ。
そこにいたのはジョセフと嬉しそうに笑って話しをする先日の女生徒だ。

向こうが気づく前に一度引き返してしまおうと思ったらそうはうまくいかないらしく一歩後ずさりしたのと同時にジョセフと目が合ってしまった。

「シーザー！」
人の名前を呼びながら手を振るんじゃあないと普段なら起こるところだがそんな言葉は出ない。こちらをむいた女生徒も少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「何してんだよこっち来いよぉ〜」
「……」
「あっ、というかさぁ！お前なんでこの人のこと黙ってんだよぉ〜！」
この人、というのは女生徒の事だろう。
「いいんだよ、私も大丈夫って言ったから」
どれほど前から話をしていたのかしらないがすでに慣れ親しんだような話し方をしている。
こちらに駆け寄ってきた女生徒は笑いながら唇の前で手を合わせる。
「ごめんなさい、変える時にちょうど彼がいて、声かけちゃったのは私なんです。」
「そうそう、シーザーが来ねえから待ってたら話しかけてくれたワケ」
バイクを押しながらジョセフもこちらに近づいてきた。

何も言えずにいると女生徒がのぞき込んでくる
「あの、具合でも悪いんですか…？」
普段なら笑って返事をするだろうが今はその心遣いが鬱陶しい。
ジョセフが明るい声を出す
「あー、ソイツ機嫌悪くなると黙っちゃうから、気にしなくていいよ〜。」
「そんな言い方したら駄目だよ」
気持ち悪い、と口に出さないのが不思議なほど腹が立つ。
そんな風に見上げるな、作ったような声で話しかけるな。ジョジョもデレデレとしてるんじゃあない。
形にならない苛立ちがさらに大きくなっていた。

「帰る」
「はぁ？」
「え？大丈夫ですか？」
「気にしないでくれていいから。」
じゃあな、と手を振って歩き出す。ジョセフが呼ぶ声が聞こえるがそんなの知ったこっちゃない。
今は、早くこの場から去りたかった。
「シーザー！」
校門を出た時聞こえた声に何も考えたくなかった。

- - - - - - - - - -

「…シーザー！」
追いかけてくるだろうなとは思っていたがいざその通りになるとうんざりとする。
バイクを押しながらジョセフは横に並んだ
「どうしたんだよシーザー、何かあったのかよ？」
「何もない。それより彼女置いてきたのか」
「しょうがねぇだろ？折角迎えに来てやったらさっさと歩いてくんだから」
お前が心配で追いかけてきましたとは思っていないのかと考えたらシーザーの気分はさらに沈んだ。
「ほっとけよ、早く戻ってやれあんなにいい子滅多にいないだろ」
「それホントに思ってんの？そうとは思えねえけど」
「……」
「お前珍しくすげぇ態度だったぜ。普段のスケコマシはどうしたよ。」
「……」
何も言えずにいるとジョセフはさらに追い討ちをかける。
「あの子言ってたぜ、きっと自分がいけないからシーザーは悪くないって」
そんなこと、本心で言ってると思ってるのかこのバカは。
お前に少しでもよく思われたくて言ってるとしか思えない。だって彼女は自分の本能のままにお前に声をかけたのだから。
「いい子だよなぁ、気がつかえてニコニコしてて」
「……」
「それなのに何なのさっきの？ほんとシーザーって可愛げがな……」

ガシャンと音がしたのはシーザーが持っていたトートバッグをバイクに勢い良くぶつけたからだ
それで傷がついたわけではないが愛車に対しての事態にジョセフは怒鳴り声をあげた。

「てめぇ！何してくれてんだこの野郎ッ！」
「可愛げがなくて悪かったな」
「あぁ？」
きっとジョセフは自分を怪訝な目で見下ろしているだろう。
「可愛げがなくて悪かったって言ってんだよ。人に当たって、こんな風にカバンで殴りつけるような性格で悪かったって言ってんだよ！」
「何言ってんだよ、そこまで言ってねぇだろ!?」
「言ってるようなもんじゃあねえか！もういい！お前なんか出てけ！」
「な、何でそうなるんだよ……っおい！」
それだけ言うとシーザーは走り出した。
もう限界だった。これ以上耐えられる自信がなかった。

結局シーザーは家には戻らなかった

- - - - - - - - - -

……ゆっくりとした足取りで夜の道を歩く。
着信を告げるバイブレーションが鬱陶しくて携帯の電源は落としてしまったから今が何時かわからない。
それほど持ち合わせもなく漫画喫茶にはいったが狭い部屋と硬い椅子に耐えきれずに出てしまった。
「……」
帰ったら鍵を開けて部屋を温めなくてはいけない。もう部屋で待ってくれる同居人はいないのだから。
マンションの階段を登って通路を進むとつい足が止まった。

「……なんでいるんだ」

人の気配に気づいたのか、声が届いたのかわからないが家の前に座り込んでいたジョセフがこちらを向いて顔を綻ばせる。
「……おかえり」
「お前……」
「シーザーちゃん馬鹿なの？人に出てけとか言っといて自分がどっか行くとかさぁ？」
おかげで鍵を忘れたジョセフ君はこーやって待っていたのよぉ。
何もなかったように笑うジョセフを前にシーザーは言葉が見つからない。

「……なんで」
「ん？出てく気なんてないから。」
「そうじゃあなくて、俺、お前に色々と…」
「理由がなければ、あんな怒り方しないだろ？」
「……」
「高校ん時もそうだった。俺が喧嘩した相手のところいってボコボコにしてくれて。仮にも受験生だぜ？リサリサのおかげで助かったみたいなもんだ。」
「あれは…お前が理不尽な理由でやられてるから、というか何であのとき理事長が母親だって黙ってたんだよ！」
生徒五人を一人で倒したシーザーは相手にそもそもの原因があるにせよ退学、もしくは進路取り消しが妥当だと思っていた。
理事長室に呼び出され行ってみたら何度かあったことがあるジョセフの母親がいた。
ジョセフの母親、リサリサは理事長でありニッコリと微笑むと息子の敵を討ってくれた事への礼と今回の事件を無かった事にすること、前々から悪さの目立っていた生徒五人を退学処分にしたことをつげた。

いまさらそんなこと気にしなぁいの、とジョセフが笑う。

「俺あの時お前が俺の敵討ってくれたって聞いてすげえ嬉しかったんだ。」
「………」
「あの時から、俺はこいつと何があっても一緒に生きてくんだって思った。」
「…」
「お前は、何が嫌だったの？」

シーザー、と優しい声で呼ばれる。いつも自分の機嫌が悪いとき、精神的にいっぱいいっぱいで疲れている時ジョセフはいつもこうやって呼ぶのだ。

「…あの子が、俺に声をかけてきた時はなんでもなかったんだ。」
「うん」
「お前の名前が出てきて、お前に気があるって話をされたら、嫌になった。」
「うん」
もしかしたらあの女生徒はそこまで話していないかもしれないが、口にしてしまえばそんなのどうでもよくなってしまう。
「もしお前とあの子が一緒になったらこの部屋は今まで通りじゃあなくなるんだ。お前が出ていくか、俺が出ていくか。」
「……どっちも出てかねえって発想はなかったの？」
「あるわけないだろ。恋人ができたら少なくとも部屋に出入りするようになるんだ。そうしたら、俺は……いれなくなる」

あぁ、俺は二人の邪魔をしたくなかったのかと今までのわだかまりが一つすとん、とハマるように腑に落ちる。

「そうしたらもう朝の送りも、夜の迎えもなくなるんだろ？そんなの、そんなのって」
「シーザー」
名前を呼ばれて、いつの間にか下向きになっていた視線を上げる。あのね、と言ってジョセフはシーザーの手を引いた。前に崩れるような形でしゃがみ込む。
「きっと今も色々考えてるだろ？それはあの子のこと？」
「……なんか、違う。」
「じゃあ、俺とあの子、二人のこと」
ぎゅっと心臓を締められるような感覚に首を横に振った。
「じゃあ、なんのこと？」
「……」
「俺のこと？」
「そう、なのかな」
「きいちゃう？」
苦笑いをするジョセフをみて耐えるまもなく涙が出た。
違う、違うんだよ。
あの子の事でもなければ二人のことでもない
ジョセフのことでもない。
俺は

「俺と、お前のことしか考えてないんだ、きっと」

そうだ、自分とジョセフのことしか考えていない。二人がこれからも変わりなく二人で暮らしていけたら…それだけを優先に考えて勝手に不機嫌になってこうやってみっともなく泣いているんだ。

「あの子とお前が付き合ったら、嫌だ」
「そう」
「部屋だって、出たくないし出ていって欲しくない 」
「あとは？」
「…ジョジョの後ろに乗るのは、俺でいいんだ」
「そうね。それで？」
ジョセフの冷えきった手を包むように手を重ねた
「……きっと好きなんだ」
「きっとはないだろ？」
「好き、なんだ」

やっと気づいたのね、と笑いながら抱きしめられる。
こんなとこ近所の人にでも見られたら困るななんて考えて、それでもいいかと思って背中に手を回す

ジョセフの肩越しに見上げた空には星がまんべんなく輝いている。

明日はきっと寒くなる

- - - - - - - - - -

「おはよう。」
「……あぁっ!?」
目が覚めて最初に見えた光景に声を荒らげる。ジョセフが覗きこんでいるなんて…自分よりも早く起きているなんて！
「な、なんでお前ｯ！今何時だ！」
「落ち着いて。今は9時。そして今日はお休み」
休日ならば何も問題はないか……
オーケー？と首を傾げるのを見てつい溜息を吐いた。
「それはいいとして、なんでお前起きてるんだよ…」
「シーザーとお出かけしようと思って。」
「……」
ほら、と言って向けてきたのは映画館のタイムスケジュールだ。
「シーザーが見たがってたやつ今日からだから観に行こうかと思って。昨日泣かせちゃったし？」
「なっ……いてない…」
昨晩のことを思い出して眉をしかめる。外であんな事をするなんて、普段の自分からしたら考えたくない。
「じゃあ、不本意にも泣かせてしまったのでってことでいい？」
「だから泣いてないって…」
「あーもううるせぇ。いいから早く出かける準備しろよ〜」 
それだけいうと立ち上がってあっさり部屋から出ていってしまう。
「……」
結局何が変わったかと聞かれたらジョセフの長年の片想いは終わりを告げ二人の関係が友人及び同居人から恋人に変わったことぐらいだ。
もしかしたら都合のいい夢で全て嘘だったのかと疑ったが先ほどの態度からすると紛れもない真実なのだろう。

諦めて潔く立ち上がる。
カーテンを開けて窓を開けると早朝程ではないが冷たい風が鼻に痛みを残して抜けていく。


……今日も寒くなりそうだ。

支度を終えて洗面所からリビングに戻るとジョセフは見慣れない皮のジャケットを着ていた。
「初めて見た」
「何が？これ？」
「あぁ。珍しいな」
ビニール生地のジャンパーが暖かいとそればかり愛用していたジョセフを知っているシーザーには新鮮だ。
「だってそりゃあ、デートだもの」
「ッデ……」
デートっておまえ、男が二人も揃って何を言ってるんだ！
「はーい、言いたいことはわかるけど照れないの。時間ねえからもう出ようぜ」
「いやいやいや！お前まじで言ってんのかよ！」 
「シーザー、」
「……何だよ」
振り返ったジョセフは笑っているとも怒っているともわからない表情でつい怯んでしまう。
と思ったらにんまりと言う表現があう顔になる
「早く行こうぜ」
「……あぁ」
なんとなく、本当になんとなく普段履かないブーツなんか履いてみる。
数回つま先で床をコツコツと叩いてから部屋を出る。

いつもと同じようにヘルメットを渡されて深くかぶってから後ろにまたがる
腰に手を回すのを確認するとバイクは走り出した。

いつもより遅いが、いつもと同じ道を走る。
空は真っ青で雲はどこにも見当たらない。
「……」
不意に笑い声が漏れる
「何ー？なんか言ったー？」
エンジン音に半分かき消されながらジョセフの声がする
「…何にもー！」
それに答えてから可笑しくて目の前の背中にもたれかかる。

（何にもないけど、いい朝だな…）

声に出すことはなく、風を切る感覚に目を閉じた。


super scooter ！ おわり ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2014-01-05T00:16:42+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry71.html">
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		<title>謎のある生活</title>

		<description>ゆったりとしたスピードで道を歩く。この…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ ゆったりとしたスピードで道を歩く。このアスファルトもすっかり見慣れてしまった。
歩くシーザーは少しばかり表情が暗い。
一段と疲れたのは学校生活のことだということはシーザーも理解していた。
見慣れた建物が見えてくる。
古ぼけた二階建ての建物。一回は全面がガラス戸でその全体に家の写真が載せられたさまざまな紙が所狭しと貼られている。
ぴったりと締められたカーテンをみて今日はもう営業終わりかと思い立ち止まる。

「……よくない。」

暗い顔で入ったら心配をかけてしまう、と思いシーザーはぱちんと両頬を叩いて気合を入れる。
「ただいま戻りました。」
ガラス戸を開けつつ声をかけて中に入るとジョセフが自分のデスクについていた。
「おかえり」
「ご飯何がいい…ですか？」
未だに敬語が抜けなくてむず痒い。それをわかっているのかジョセフは最近は特に突っ込んでは来ない。
「そうだなぁ〜鶏肉が残ってるけど」
「多分トマトとチーズが残ってるので、トマト煮みたいにしようかな」
「やりぃ！」
嬉しそうに笑うジョセフを見て自宅に続く階段へ進む。
「あ、そうだ。」
「なんですか？」
上りかけていたのを止めて振り返ると考える素振りを見せてからジョセフは手をひらひらと振ってみせた。
「あー、いいや。なんでもねぇ」
「そう？」 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2014-01-01T02:14:17+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry70.html">
		<link>https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry70.html</link>
		
				
		<title>JLDK ！04: 教会へ行こう。</title>

		<description>何年前だろう、もう10何年も前だ。
家族…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 何年前だろう、もう10何年も前だ。
家族でクリスマスにイタリアへ行ったことがあった。街は華やかで楽しそうな声で賑わっており幼かった自分はわくわくした。
どこかの大きな教会。白くて綺麗な建物を見上げれば陽の光が屋根に積もった光に反射して眩しかったのを覚えてる。
入ってみようかという兄に手を引かれて重い扉を二人で開けた。
扉が開くのに比例して中から聴こえる音が大きさを増した。
瞬間心を奪われた。
クリスマスの飾り付けをされた教会。座っている人と聖歌隊でいっぱいの室内はステンドグラスの向こうからさしている光に照らされてそこだけ別世界のようだ。
オルガンの音と声が高い天井に響いている。

すごいね、とつぶやいた兄の言葉に相槌をうつ暇さえなく、自分は目の前の聖歌隊に釘付けだった。

聖歌隊の真ん中最前列、白いベレー帽を頭に乗せて青いその瞳は金色の長いまつげの下で見え隠れする。
緩やかに動く唇から紡がれる歌。  


歌が終わると室内がわっと湧いた。拍手が鳴り響く。その金髪の人物は小さくお辞儀をしてから口を開く。

「今日は我らが主様の記念すべき生誕日です。皆様にも幸せが訪れますよう。」
 
そう言って微笑んだその人は天使のようだと、

子供ながらにそう思った。



JLDK！04:協会へ行こう

「ん……」
寒さで目が覚めた。誰があけたか知らないが毎日の日課であるがために部屋のドアと窓は全開だ。
何時だろうかと思い時計を見ると既に10時になってしまう。
「……さっみ」
あまりにも寒くて意識がはっきりしてきた。このまま二度寝しようにも寝れなかった時余計に疲れてしまう。
しょうがないと思いつつ起き上がる。ふと疑問が浮かぶ。

シーザーはどうした。

毎朝ジョセフが起きないときに部屋にやって来ては蹴ってでも起こすシーザーはいない。いつもなら確実に怒鳴り込んでくる時間だというのに。
大学時代から付き合いのあるシーザーだがなんだかんだと言いながら起こしに来るのをやめたことがない。悪態をつきながらマメな所がジョセフは好きだった。

スリッパに足を通してリビングへと小走りで向かう。
「っはよ〜。さみぃなぁ」
「おはよう、って時間でもないよジョセフ」
兄が苦笑いで返事をする。特に外に出る用事もないというのにきっちりと外出時の服装だ。
「どっか行くの？」
「協会へ行こうって言ったじゃあないか。」
「はぁ？なんで。」
キリシタンであるシーザーを覗いてこの家にはそれほど強い信者はいない。ディオもジョナサンも緩いほうだしジョセフはお祭り行事ならなんでも好きなお子様性質だ。
ジョナサンが意外そうな顔をしてどこかを指さす
「ジョセフが忘れるなんて珍しいなぁ。ほら、今日はなんの日？」
「ん？あぁ！」
指差す先にはカレンダーがありそして今日は24日クリスマスだ。
「そ、それでシーザーが行っているから見に行こうかと思って」  
「なるほどねぇ。え、もう出んの？」
「ディオが支度をしてしまえば出るつもり。僕は待っててもいいけど彼が待ってくれるとは思えないなぁ」
「5分で支度します！」
走って自室に戻る。絶対に置いてかれてしまいそうだ、急がなければ。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

雪の積もる道を歩く。ただでさえガタイのいい三人が並んでは道行く人の迷惑になる、ジョナサンとジョセフがならび後ろからディオがついていく形だ。
「楽しみだねぇ。クリスマスに行くことなんてないからワクワクするよ。」
「ふん、俺は家に居た方が良かったがな。仕事もあったし」
「君はこんなことでもないと家からでないだろう？冬になって本当に引きこもりになったね」
寒いのか不機嫌な顔でマフラーを鼻が隠れるほどに巻いたディオはそれ以上何も言わない。
「しっかし、シーザーも一緒に行けばいいのになぁ〜」
「え？君聞いてないのかい？｣
「何が？」
「シーザーは今日歌を歌いに行ってるんだよ」
「ハァ!?」
そんな話初耳だ。知らなかったのかい？というジョナサンは驚いた様子もなく話を続ける。
「昔聖歌隊にいたらしくてね、その伝で今日は手伝いに行っているんだって」
「ハァ…」
あまりにも突然過ぎてため息に近い声しか出ない。シーザーが歌なんて。カラオケに行ったって滅多に歌わないのに。
それを知っているのが自分でなくジョナサンだと言うことと、シーザーはどんな顔をして兄にそれを言ったのかと思うとなんだか腹が立った。
そしたそれを簡単にジョナサンが見破っているのをジョセフはしらない。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

ここだよ、と言われてついた教会はこの辺でも一番大きな施設だ。
白塗りの壁に大きな鐘。春になると結婚式を行っているのを毎年見ている。
「言っとくけど、静かにね」
「子供じゃねんだから。」
兄の忠告を無視して扉を押す。ギィ、と鈍い音がして扉が開く。
「あ、ナイスタイミングかな。」
「え？」
中を見ると静まり返った室内の奥にあるステージに聖歌隊が並んでいる。
白い衣装に身を包んだ大人や子供。カツカツと音を立てて一人の人物が出てくる
「っあ！」
つい声を出しかけて口に手を当てる。そうでもしないと何か言ってしまいそうだ。
出てきたのはシーザーだ。同じように白い衣装でいつもより撫で付けられた髪、ベレー帽を被り目線はかすかに下をむいている。
真ん中に来ると一層静寂が強くなった気がする。

「…――」

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-12-26T00:51:55+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry69.html">
		<link>https://huzine08.web.wox.cc/novel/entry69.html</link>
		
				
		<title>狼子供と</title>

		<description>まるでおとぎ話のようだと、母は言いまし…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ まるでおとぎ話のようだと、母は言いました。
それでも、全て本当に起こったことであり、母の、そして父の人生であり、私がここにいるという事実なのです。

母は都内の大学に通っていました。

いつもどおり授業を受けていたとき、ふと後ろの席に座る男性に気がつきました。
出る講義はある程度絞られていましたし、いつも講義に出ている生徒は数少なかったので顔を覚えている母は、誰だろうと微かに思いました。
つややかな黒髪は後ろに緩やかに撫で付けられており、ただ座っているだけでも目立つほどよい体格と、おそらく高いであろう身長。そして、何よりも深緑の瞳が綺麗だと思いました。

そして、彼が父でした。

父はノートに懸命に授業の内容を書き写していました。教科書は持っていないらしくおかしいなとは思いましたが、あまり見つめるのも良くないと母は一度授業に気を向けました。

授業の終わり、教卓の上に置かれた出席証明書を出す箱に紙を入れ終わった母がふと見ると後ろのドアから父が出ていくのが見えたのでつい追いかけてしまいました。
廊下は薄暗く、窓から注ぐ光が定間隔で通路を照らしていました。

「あのっ」
母が声をかけると父は立ち止まり振り返りました。やはり背は高く、向けられた視線に一瞬怯んでしまいましたが、気を取直して母は口を開きました。

「えっと、あの、出席証明書を出さないと講義に出たことにならないので、えっと…」
「俺、ここの生徒じゃない。」

発せられた声は低く、それでも優しい声だと母は思ったそうです。

「目障りなら、もうこねぇ。」

そう言い残して父は歩き出してしまいました。
母は呆然とそれを見ていましたが。父が曲がり角を曲がったところでもう一度その後を追いました。
曲がった先にあるのは出入り口で、父はちょうど外に出ていました。
転んだ子供を抱き起こし、頭を撫でて笑う父にとても惹かれたそうです。



母はまた声をかけました。

「あの。」
「…またアンタか」

振り返った父は今度は怪訝そうな顔をして母を見ました。

「だから、もう来ねえから学校の人間には…」
「僕には、貴方がここの生徒じゃあないということは関係ありません。」
でも、と言いながら母は教科書を出しました。
「さっきの授業、教科書がないとちょっと難しいと思うんです。だから、今度から一緒に見ませんか」

その日、ふたりは次の授業の約束をして別れました。



母は、学費を稼ぐため深夜のアルバイトをしていました。
遅くまで仕事をして、24時間営業のスーパーで買い物をして小さなアパートに帰りご飯を食べて寝る。
そんな生活に、父と授業に出たり、管理員の目を盗んで二人で学校の図書館に入ったりとそんな些細な刺激が、とても楽しかったのだといいました。

父は引越し会社の仕事をしていました。
昼夜問わず仕事をして、その合間に大学で勉強をする。そんな毎日をすごしていました。

「引越しをしていると、いろんな家族がいるんだ。」
父に案内されてあがったその坂道は、街全体を見渡せる絶好の場所でした。

金のある家、ない家。
若者の家、年寄りだけの家
大人数の家、一人の家。
犬がいる家、猫がいる家、いない家

いろんな家があるのだと父は街を見ながら話したそうです。

「家があったら良いだろうな。帰る家がある。ただいまと言ってくれる奴がいたらもっといいだろう」
「じゃあ、僕がただいまって言ってあげるよ。」

母がそういうと父は嬉しそうに少しだけ笑いました。
それから
「……花京院」
「ん？」


「てめぇに、話がある」



■■

その坂道をさらに奥に進んだ先、静まり返った寒空の下に二人は行きました。
その日は星がきれいで見渡す限り満天の星空だったそうです。

「目を閉じてくれ」

母は目を閉じます。

少しして開こうとして父に怒られます

「まだだ。」

風がざわざわと木々を揺らします。

「……もういい…？」

母がゆっくりと目を開くと、そこにいたのは普段の父ではありませんでした。

ダウンコートの下には毛に覆われた体。
爪の鋭く尖った手
そして何より長い顔と大きな耳

「……俺が、何に見える？」


父は、日本ではほとんど姿を見なくなった日本狼の末裔でした。

「君、それ……」
「黙っていて悪かったな。だが、言い出そうとは思っていたんだ。」
「……」
「騙されたと、気味が悪いというならそう思ってくれて構わねぇ。ただ、そう思うなら最初の時に放っておくべきだったな」

母は、騙されたとも気味が悪いとも思いませんでしたが、ただ一つ満月の夜に変身するわけではないのだ、と的外れなことを考えていました。
そして、思いもしない展開に確かに興奮していたのです。

「お前がもう嫌だというならもう大学にも行かねぇ。こうやって会うこともねぇ。だから…」

「…すごいじゃあないか」

「は？｣
「すごい、すごいじゃあないか！だって、えっ、君狼だったのかい！こんな、おとぎ話みたいなことってあるんだね！」
「…おまえ」
「君が僕にどんな思いで秘密を打ち明けてくれたかは知らないけれど僕は、とても嬉しいんだ」
「……お前って変な奴だな」

ふいに抱きしめられた感覚は、いつもと何も変わらないことに母は安心しました。

「そんな僕が、君はいいんだろう？」
「…やれやれだぜ」


■■■

それからは何も変わらずに二人は過ごしました。
違うことといえば二人が籍を入れたこと。父が母の家に住むようになった事です。

ちょうど休みだったある日、母は家で突然の吐き気に襲われました。

最近食欲の無かった事、毎月あるはずのソレが遅れていたこと
まさか、と思いました。

病院にいこうにも狼の子だとバレたらどうしよう。という気持ちから薬局に足が運びました


「…そう、それで、病院にいこうとしたけど、狼の子だったらきっと驚いちゃうから家で調べてみたんだ。」
「…うん、うん…出来てたよ。」


仕事を放り出したのかなんなのか、父はその後大量のフルーツ缶を持って帰ってきたそうです。



母の様態はそれから悪くなりました。
食欲はなく、たべても戻してしまい動くことができませんでした。

ある夜も、父がいない家で一人大人しくしていると父が帰ってきた音がしたので玄関に出てみました。

「…おか、え……り？」

父は傷だらけで片手に雉を持っていました。


その夜父が滋養がつくように、と作ってくれた雉鍋はとても美味しかったと言いました。
母は何日ぶりかのご飯が嬉しくて、父の気遣いが嬉しくて、今でもたまに食べたくなるそうです。


それからしばらくして、雪の降る夜、私が生まれました。
産婆さんもいない、二人だけの出産だったそうです。

「…無事に生まれてくれてよかった」
「どんな子供になるだろうな……」
「優しいこかな」
「少し元気すぎるくらいで良い。」
「どんな仕事につくだろう」
「パン屋でも、何でも好きな仕事につかせてやろう」
「……頑張ったね。」


私は、徐々にゆっくりと、自分の選んだ道を行けるようにと、徐倫と名付けられました。
 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-12-09T22:15:54+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>どうぞお気に召すまま</title>

		<description>
「やぁ、シーザー。君のような美しい人…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 
「やぁ、シーザー。君のような美しい人が傍にいてくれたらなんて幸せだろう」
「お前はすぐに飽きてしまうさ」

ジョセフのおどけたように放たれる言葉にさらりと返事をすると案の定拗ねたような顔をされた

「そろそろ折れてくれてもいいんでないの？」
「まさか、冗談がすぎるぜジョジョ」

ここ最近のジョセフはずっとこんな感じだ。
柱の男との戦いを終えて奇跡的に生還した二人は怪我の療養も兼ねて２週間程たった今でもエア・サプレーナ島にいた。
ジョセフが目を覚ました時に看病をしてくれていたスージーQに呼ばれ真っ先に駆けつけたのはシーザーだった。
救助が早かったシーザーは自力で立つことはまだできないものの車椅子で移動のできるくらいには回復していたらしい。
ジョセフに縋りつくような姿勢でよかった、よかったと泣くシーザーは以前より痩せていた

その後リサリサから聞いたことだが、ジョセフに波紋をすべて託してしまったシーザーはもう波紋を使うことは出来ないらしい。リサリサやスージーQの看病のおかげで回復は早かったものの、もう以前のようには戦えないということだ。
シーザーはその事を承知しているという。なんとなくそのことを聞いてみたところ何でもないような顔で返答されてしまった。
ただ、シャボン玉をもう作れないのだと言った時のシーザーの瞳は遠く青い海を見ていた。

そんな頃からだ。ジョセフが惜しみもなくシーザーに愛の言葉を送り始めたのは。

最初は屋敷の中庭に出ていた時だ。暖かい陽の下で気分転換をしているとジョセフがやってきた。
そして何か言いたそうにしているので促した。

「シーザーちゃん俺んとこにお嫁に来れば？」

予想打にしていなかった言葉に目を瞬いた。言葉を理解するのに数秒要した。
そして理解する。これはコイツのお得意の冗談なのだと。
そうと決まれば相手をすることはない。「バカをいうな」と軽く小突いてそのまま屋敷の中にシーザーは戻ってしまった。

それから毎日毎日彼の「冗談」は続いた。
ある日は、率直に好きだと言ってきた
ある日は、シーザーがする様に歯痒いような言葉を並べて聞かせた
ある日は、手を取って熱心に思いを伝えてきた
ある日は、抱き着こうとするので鳩尾に拳をつい叩き込んだ

シーザーがどんなに拒んでもジョセフは諦める事はなく、むしろ最近ではシーザーに愚痴さえ吐き始めた

「こぉ〜んなイケメンがプロポーズしているのよぉ？」
「自分で自分を褒めるなよ。というかふざけてるんだろ。」
「俺は本気なのよぉ？」
ね？と小首を傾げてくるが自分よりも遥かに高い男がしていい仕草ではない。
コップに注がれた水をくるくると揺らす。窓辺の光がさしこんで微かに反射した

「だいたい、前はクソ女だなんだといってたじゃあないか。」
「最初の時はそう思ってたけどよく見たら可愛いし、よくしてくれるし」
「良く見たらってなんだよ」

コップを少し傾ける。ひんやりとした感覚が喉を冷やして消えていく。

「それに、私みたいのよりもっといい子はいるだろう。スージーQなんてお前、ずっと可愛がってたじゃあないか」
ことあるごとにジョセフは「シーザーってば可愛くないなぁ〜スージーみたいにニコニコしてりゃあいいのに」とシーザーに言っていた。その度にジョセフを小突くことはあってもシーザーもそのとおりだと思っていたし、自分よりも彼女を選ぶだろうと思っていた
「それとこれは別だろぉ？吊り橋効果って知ってる？」
「そんな効果が現れる程お前が真剣だったとは思えんなぁ？」
「それに知ってるぜ。シーザーちゃんずっと俺の看病してくれたんでしょ？」
「…」
確かにジョセフの所に出入りして様子を見てはいたが、看病と言われたらそれとはまた違うものだ。
眠るジョセフを見てどうか目を覚ましますようにと手を合わせる程度だ。ただの自分の気休めだった。

「…お前ならもっといい子を捕まえられるだろ。なんだっけ？ちょっと頭が悪くてもかわいくて胸の大きな子だったかな？ん？」
「シーザーちゃんそんなことまだ覚えてたわけ？俺のことしっかり見てんじゃあないのぉ？」
「誰かさんが何かある事に口うるさく言ってくるからなぁ」

彼の好きなタイプを覚えていたのも偶然だ。彼がことある事に自分を馬鹿にするように言ってくるからだとシーザーは理由付けをする。
その事ですこしナイーブになるのも気のせいだと言い聞かせた

「…俺の何がいけない訳？」
急に声を潜めたジョセフに目をやるとソファに腰を下ろしたままじっとこちらを見つめている。
今は外されている義手はテーブルの上に投げ出されている

「…まず、私の体のことだろう。波紋を使えない今、お前の傍にいたところで守ってやれるわけでもない。」
「何言ってんの？」
お前は、とジョセフの言葉を遮ってしまう。
「お前はまだ、その波紋で色んな事を乗り越えて行くだろう。まだ若いし色んなものに気を惹かれて毎日気ままに楽しく生きていくんだろう。それを邪魔したくはないんだよ。私は後ろからついて行くこともしたくない」
「……お前そんなくだらないこと気にしてたのかよ。そんなの問題ないだろうっ!!俺が連れて行ったらいいんだっ!」
「私は！」
声を張り上げるとジョセフが口を紡ぐ。
もう一度声を出すと震えていた
「私は、もっと強くなりたかったんだ。女だからいけないのだと言われないように、お前を守るまでは行かなくても、手助けになるように…でも、もう駄目じゃあないか。波紋も使えない、体力も落ちて……昔の、昔のような、いるのか、いないのか分からないような人間になって…」

溜まった涙が限界を超えて落ちていく。ぽちゃり、と小さな水音を立ててコップの中に波紋を残して消えていく。こんな小さな波紋さえ今では羨ましくて仕方がない

「おじいさんの意志を受け継いで、ここまで勝ち残ったお前を見てるのがどれほど辛いか考えたこともないんだろう？なぁ。」
「……」
「もう、いいだろう。楽しかっただろう？毎日毎日、気に食わない姉弟子に冗談を言ってさ」
「お前っ…！」
弾かれたように立ち上がったジョセフが窓辺に歩み寄る。その気迫につい後ろに退くと鍵のかかっていない窓に肘が触れて空いてしまった。
開ききった窓からは海が見える。今日はとても天気が良い。春の兆しが日に日に増すこの島でも、他の地と同じように花が咲いた。
風に乗ってやってきた潮の匂いと小波の音が静まり返った部屋に響く。
「…」
目の前で立ち止まったジョセフは力の抜けたように座り込んでしまった。

「おい、」
「最初は、リサリサに話を聞いた時だった」
ジョセフが静かに話始めるのを聞いてつい口を閉ざした
「お前が俺に波紋を託したから、お前にはもう波紋の力がないこと。その後お前と話をしてお前の意思を聞いたとき、俺は好きなんだと思った」
何が、と呟くとそれ聞いちゃうの？と苦笑いで顔を上げた

「シーザーちゃんのこと。」

その言葉にうるさい程に心臓が跳ねる。体が熱くなるのが手に取るようにわかる。
「お前の好みは、どうしたんだ」
「俺そこまで頑固じゃあないしぃ？好きになった子がタイプです！みたいなさ」
「なんだよそれ…」
「それに、どんなにタイプがあってもさ、こんなに俺のこと考えてくれる子がいたらそれどころじゃねえって」
コップを持つシーザーの両手を包むように手を重ねてくる。それだけで体に力が入る。こんなのがバレたらいつもの男女構わぬスケコマシはどうしたとバカにされるかもしれないな、と考えてしまう

「やぁ、シーザー。君のような美しい人が傍にいてくれたらなんて幸せだろう」
「お前が傍にいてくれるだけで、私はどれほど満たされるだろう」

「海の色を映したような瞳が俺だけを見てくれたらいいのに」
「エメラルドのようなその目はずっと私を見ていたのか」

シーザーの手からコップを取り上げて窓辺においたジョセフはシーザーにそっと抱き着いた。

「シーザーちゃん、俺んとこにお嫁に来れば？」

頬を伝ってぼろぼろと落ちていく涙はきっと幸せが溢れているのだと都合よく理由をつけて拭うことはしない。ジョセフの肩に鼻をすり寄せて匂いを吸い込む。お日様の匂いとはこれのことだろうかと思った

「……私でよければ、喜んで」





どうぞお気に召すまま 


窓辺のグラスが輝いたのは誰も知らない
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-12-02T22:11:32+09:00</dc:date>
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		<title>Access</title>

		<description>出会ったのは家電屋だったと思う

ガラ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 出会ったのは家電屋だったと思う

ガラスの向こう側に椅子に座る形で飾られたそれは、言われなければ人間と区別はつかないかもしれない。
まぁ「それ」は元々そういうふうに作られているのだから、そこに関しては気にしなかった

ただ、綺麗だなと思った。
羽根飾りのつけられた金色の髪はゆるく跳ねていて、陽の光を反射して輝いている。髪と同じをした睫毛はとても長く白い肌に影を落としていた。
両頬に描かれた痣は肌より少し黒ずんだような色をしている。
「眠っているのだ」そう錯覚するほどに彼は美しかった。

「Z-0513型 家庭用アンドロイド:Caesar」

「シーザー…」

彼の足元に置かれた札に書かれている名前をジョセフは小さく呟いてみる。
確か高校の時の世界史にそんな名前の人物がいたなと思い出す。ジョセフの頭に彼の詳細は残っていなかったが。

「なんだっけな。えっと、サイコロは投げられた…？」
いや、なんか違うな。内容的にはあっているのに、とうんうんと唸っているとベルのような音がした。
「賽は投げられただろう。ちょっと惜しかったね。」
扉を開けて顔だけ出したその老婆の唇は弧を描き笑っているのだとわかる。
「これ、売りもん？」
「そうともさ。ただ、人から一度買い取ったものだで、新品で買うよかは安くなっておるよ」
そう言われもう一度札に目をやる。そこには確かに「中古品」と書かれ、値段が表示されている。確かに新品のアンドロイドよりはいくらも値段は下がっていた。

「買ってくれるんかえ？」
「えっ俺!?」
ジョセフはつい自分を指さして老婆を見る。そうとも、と頷きながら老婆はジョセフの横に並びシーザーを見上げた

「綺麗だろう？まだそこまで古いバージョンじゃあないんだよ。出されたのは10年やそこらだ。」
「売られたのは？」
「もう二年前になるかねぇ。でもとても大事に使っていたらしくてね、メンテナンスも定期的にしているしなにより状態が良かったから、新品とそんなに変わらないさ」
「……」

家庭用アンドロイドが庶民に馴染み始めてもうどのくらいになるだろう。ジョセフ自身が生まれた頃既に家にいたから当たり前のものになってしまったが、恐らく30年前後だろう。
今となっては昔よりも手の出しやすい値段になったもののやはり若学生のジョセフには手が出せない。そもそも出す気もなかったのだ。

だがシーザーを見て、買ってもいいんじゃあないかとそんな思いが湧いた。

「ばあちゃん、これもうチョイ安くしてくれたら俺買っちゃうんだけどなぁ？」 
ね？とウィンクをしてみせると老婆は嬉しそうに声をあげて笑う
「よかろう、よかろう。目一杯安くしてやろう。さ、中にお入り」
ゆっくりとした足取りで入口を目指す老婆の後ろをついていく。その時にもう一度ガラスの向こう側に目を向けた。



Access


家庭用アンドロイド
今から数十年前に大手家電メーカーが発表したものが始まりだ。
その頃はまだ今のような高性能な知識と人間に近い姿は全くなく、簡単な意思疎通と動作のできる、白い楕円型のロボットだった。
そこから大幅な改善が加わり、ネットワーク社と提携を組みそれと同時に人に近い形に進化していった。

最近になって庶民の手元に来るようになったアンドロイドは初代と比べたら驚くような進化を遂げていた。
こちら側の意志を汲んだ上での的確な返答、会話。
持ち主の命令に沿った自由な行動。ネットワークの接続、検索
そして何よりその見た目だ。
既存のアンドロイドをパターンから選び購入する、というのが一般的だがさらに金額をあげたら年齢性別見た目まで自由に指定ができるらしい。
人間と並べても違いがわからないほどの作り。あえていうなら表情のないところだろうか。



アンドロイドを使用するに当たっての必須条件
1.完全なネットワーク環境
アンドロイドが出始めてからさらにネットは広がった。今ではどこにいても十分なほどネットワークが整っている。

2.十分な電力
アンドロイドは月に二度の充電と家庭メンテナンスが必須である。その為の電力だ。

3.安全な使用
アンドロイドの使用はあくまでも「家庭用アンドロイド」に入る範囲のみの使用が制限づけられている。
数年前に起きたアンドロイドを使ったテロからこの条件は厳しくなった。
犯罪目的の使用は禁止、それを支持する命令が出た場合アンドロイド本体が自動で警察に連絡を入れるようプログラミングされている。


「なぁんか当たり前のことだよなぁ」

渡された書類をみながら口を開く。
招かれた店内は狭く、天井が高かった。見上げた上で扇風機のようなものが回っているがあれがなんだっかジョセフは名前が出てこなかった。
ぼんやりとしか光のない店内には所狭しと電化製品が並べられており店の真ん中だけは談話室のようにテーブルを挟んでソファが二つ置かれていた。
トックトック、と時計が独特の音を鳴らす。
「それでもそれが当たり前だと思わんやつがやはりおるのよ」
「ふぅん。ほれ、書けたぜ」
サインをし終えた書類を老婆に向ける。
「確かに、しっかしお前さん本当にあの子でいいんかえ？」
「ばあさん、アンタが買うのかっていったのよぉ？」
「そうでなくて、あんたも若い男なら、女子のが喜ぶかと思ってなぁ」
にたにた、と表すのが正しいだろう表情で老婆が笑う。
ジョセフもそれを聞いて背もたれに体を預ける

「俺もそこが気になってんのよ。俺別にソッチってわけじゃあないんだぜ？」
「さて、わからんよ？もしかしたら目覚めるかもしれん」
「ナイナイ……でもさ、なんかあいつ見てたらさ目が離せないっつーの？なんか足止まっちゃって」

あの睫毛の奥には何色の瞳が眠っているのだろう。どんな色でも綺麗だろうなぁと気が泳ぐ。
どんな声で語るだろう。どんな仕草をするだろう。
それを考えたら縛られたように動けなかった

「……きっと素晴らしいパートナーになるさ。」
「ドッチの意味で？」
そう聞くとさぁね、と言って立ち上がる。
「さて、あの子を出してくるかね」
そう言ってジョセフを残してどこかに行ってしまった。おそらくシーザーをガラスケースからだしに行くのだろう。
天井を見上げてジョセフは思考を巡らせる。
 アンドロイドを買うなんて思ってもいなかった。実家にいるアンドロイドは物心ついた時から館で働いてくれていた。兄には従順なそのアンドロイドは自分には態度が悪く昔から合う事に憎まれ口を叩きあい喧嘩をしていたような気がする。ディオという名前でどこかの国で神を意味する言葉だと兄は優しく話してくれたがあれは悪魔だとジョセフは思っていた。
それでも家族同然の彼を決して嫌いなわけではなく、むしろ悪友のような関係だった。
 家にいるのはアンドロイドはディオだけで、彼以外にもうひり迎える事など考えたことはなかった。

「でも、手伝いロボットってつもりでもねぇしなぁ…」
一人暮らしに手伝いは必要ないし、ではなんで彼を買おうと思ったのかその答えは出ない。
答えの出ないままいると視界の端で何かが動いた気配がした。ドアが開いて暗闇の中から人影が現れる。
「またせたね ほれ、連れてきたよ」
そういった老婆の後ろにもう一人いる。老婆が前に出るように促すとハッキリみえていなかったその人物の顔が光に照らされて明確になる。
「……」
ジョセフは自分が息を呑んだのを感じた。金糸のような髪が白い肌に重なるようになり先程は見ることが叶わなかったその瞳は透き通るような翡翠色をしている。暑い唇は開かれることはなく閉じられたままだ。
「さぁ、シーザー。お前の新しい主人だよ。」
「主人てそんな…」
そんなに大層なものじゃあないのに、とジョセフは落ち着かずにいると どこからか見られているような気がする。
視線を送っていたのは老婆の横にひようじょうひとつ変わらぬシーザーでただじっとジョセフを見つめていた。
「…えっと」
「Z-0513型 家庭用アンドロイドのシーザーです。あなたの名前を教えてください。」
「えっ…あ、あぁ ジョセフ・ジョースタだ。」
淡々と紡がれた言葉につい返すことを戸惑って、どうにか名前を告げるとシーザーは一つ瞬きをする。
「ミスタージョースター、あなたが今日から私の主人となるんですね。どうぞよろしくお願いいたします。」
「あぁ…一つ、いいかな」
「何でしょう。」
笑うわけでもなくただやりとりをするシーザーについ眉を寄せる。
「そのミスターっての止めてくんねぇかな。一応アンドロイドとはいえ家族になるんだから」
「しかし、貴方は私の主人になるお方です。」
「そうだけど…」
「その主人の命令でも駄目だというのかね？」
ババアナイス！とつい小さくガッツポーズをしてしまう。老婆の方を向いたシーザーは少ししてからゆっくりとジョセフに視線を戻して小さく「じゃあ」と口を開いた。

「なんとお呼びしましょう」
「みんな俺をジョジョって呼ぶんだ。」
「…承知しました、ジョジョ」
「その敬語もやめようぜ」
あ、ちょっと困った顔してる とジョセフは思った。シーザーの眉間に皺が寄るのを少しも見逃さなかった。
「…わかった。ジョジョ」

少し不服そうなシーザーに「カンペキ」とジョセフは笑った。

■■

それから老婆と少しやりとりをして何かあったらまた訪れることを約束してジョセフとシーザーは家を出た。

 当然のことだがシーザーは街の出ても怪訝な顔をされる事はなかった。見られてもそれは綺麗な顔立ちをしているシーザーを願望の眼差しや女性の好奇的な視線で、シーザーがアンドロイドだと思うものは誰もいない。
 アンドロイドは人の多い場所に出ると通常以上に人間と見分けがつかない。そのくせ自分の意志で行動ができるので違和感がなく時々ナンパをしてみたらアンドロイドだったということは少なくはなかった。
ジョセフの横を歩くシーザーは街中を珍しがるわけでもなくただ黙ってついてきた。


自宅につくと階段を上がって部屋の鍵を開ける。
狭い玄関で靴を脱いで部屋への通路の途中にあるキッチン―と呼ぶには苦しいほどに小さい―に寄ってグラスを二つと作り置きの麦茶の入ったポットを手に取る。
後ろをちょこちょこと付いてくるシーザーに笑いを噛み締めて部屋に入る。リビングとして使っているそこの部屋には小さなテーブルと二人座れる程のソファがある。腕に抱えたポットとグラスをおいてからソファに腰をおろして立ったままのシーザーに手招きをする。

「狭くて悪いが座ってくれ」
「……」
何も言わずにシーザーは隣に座る。座っているだけで絵になるな、とぼんやりと考えた。

さて、とジョセフはシーザーの方を向く。
「この家でのルールを決めるためにまずはお前にいくつか質問をする。」
「わかった。」
何からしようかと考えてからジョセフはひとつ疑問が浮かぶ。
「お前ってお茶飲んだり飯食ったりできんの？ウチにいたのは出来た気ィするけど」
「飲食をして、それを処理する機能はついているが人間と同じように食事を摂る必要はない。」
彼らの原動力は充電によるバッテリーだ。そんなような事が書類にあった気がするがジョセフは首を傾げる。
「でもさ、二人でいるのに俺だけ飯食ってお前だけ食わないって寂しいし傍から見ておかしくね？」
「だが俺は…」
「アンドロイド、だろ？でもなそれ以前に俺の家族になるんだぜ？」
「家族」
そう、とひとつ頷く。
「一人で飯食うなら何も変わらねえし、そもそも一人暮らしならアンドロイドは本来なら必要ねぇんだ。でもさ」
言いながら あぁ、自分はそう思っていたのかと気づく
「一人暮らしってケッコー寂しいんだ。俺んち実家が大家族だから余計に。だからお前が一緒に飯食って、テレビ見て笑ってくれて、休みには外に出て遊んでくれたりしたら超嬉しいわけ」
「……」
「いいか、これから言うのは命令じゃあないぜ？約束だ」
勢い良く人差し指を立てて「一つ」と数を数える

「朝夕は一緒に飯を食うこと。昼は俺学校あるから昼飯を食うも食わねえもシーザーの自由だ」
「…了解した。」
頷いたのを確認してから「二つ」と指を増やす。
「俺家事できる訳じゃあねえから全部お前に任せる。食費と生活費は週の始めに手渡しする。後欲しいものがあるなら言って欲しい」
「あぁ」
続いて「三つ」
「俺人に命令できる程大人じゃあねえからお前からしたらやりがいは無いかもしんねえけど、俺のことは家族や友人みたいなもんだと思って欲しい」
「しかし……」
家庭用アンドロイドとしてのプライドか何か知らないがシーザーは縦に首を振らない。これはさすがに仕方ないかとジョセフは薄々思っていた。
「まぁこれはいっか」
あっさりと内容を取り消してジョセフは何かあっただろうかと思考を巡らせる。

そういえば気になる事が一つ。

「シーザーって前は持ち主がいたんだろ？そん時の記憶ってねぇの？」
「……」
しまった、と思った。シーザーは今までも一番わかり易く表情を歪めている。唇を噛み締めて視線を下ろしてしまった。
悪かったと謝ろうとしたところで小さな声がした。
「…ある」
「それは……俺が聞いてもいいの？」
恐る恐る尋ねると「それは、」と言いながら翡翠色の瞳は不安げにこちらを向いた。
「命令か？」
「………いや」
基本的に持ち主に従順であるはずのアンドロイドがここまで渋るということはよっぽどの事があるのかもしれない。
ジョセフは首を横に振った。
「無理にとは言わねえよ。でも、もし話そうと思ったら話して欲しい」
それは単に彼の過去を暴こうというわけではなくすこしでも彼の心を和らげるための言葉がけだ。
な？と同意を求めるとシーザーは少し目を伏せる
「……俺は」
しずかに紡がれた言葉は冷たく、そして弱々しかった。

「俺は…欠陥品だったのかもしれない。」

その言葉にジョセフは耳を疑い、外で子供の声がした。


□□□

Z-0513型Caesarはその時期の新製品だった。
男性型アンドロイドの中でもその作りには相当力が入れられており少しばかり注目の商品だった。
使用目的は家庭の手伝いをメインに力仕事も可能であったため、広範囲から人気だった。

シーザーはとある富豪に買い取られた。柔らかい雰囲気の常に微笑んでいる老紳士だった。
妻を亡くし、突如使用人がやめて雇い手を求めていた彼はシーザーを痛く気に入りとても大事にしてくれた。 
型番の0513を5月13日と関連付けてシーザーの誕生日として毎年盛大に祝ってくれた。
 持ち主に忠実であるようにプログラミングされているシーザーは主人がとても好きであったし、その大きな屋敷を手掛ける事ができるのだと喜んで腕を振るっていた。

何ら不自由もなく充実した生活をしていたある日主人が自室で倒れているのを見つけた。慌てて救急車を呼び主人が運ばれていくのをただ呆然と見ていた。
後日病院に行って様態を聞くと重い病気だと言われた。しかし治る見込みが皆無なわけではなくシーザーは入院中も、自宅療養に切り替えてからも力を入れた。

しかし一向に良くなる様子はなくむしろ悪化していった。
それまでよく自分を可愛がってくれた周辺の人間は「使えない」「欠陥品」だとシーザーを罵り、シーザーも少しずつ自分は不良品なんじゃないかと疑うようになった。

ある日主人が外に行こうと誘った。
体調もよく、天気も良かったから少しでも治療への助けになればとシーザーはそれを受け入れた。

運転手に車を出させ近くの山まで桜を見に行った。桜は見頃で、初めて桜を見たシーザーは少しばかり心が踊った。
そんなシーザーを主人は少し引き止めた。

「少し、一人にしておくれ。大丈夫だ。運転手もついているし、お前も久しぶりの休みだから」

笑う主人はいつもどおり優しい顔でシーザーは快くそれを受け入れてその場を離れた。
今思うとそれがいけなかったのだと、シーザーは考える。


戻ってきたら桜の丘には誰もいなかった。
主人はもちろん、運転手も、車もなくひっそりとしていた。
焦ることもなくシーザーはその場に座り込んでしまった。
自分は捨てられたのだと いつまでも使えないアンドロイドを置いていても仕方が無いと
処分にも費用がかかる。不法投棄されたアンドロイドは管理機関が回収に来て最終的にはまとめて焼却されてしまう。

それでもいいとシーザーは諦めた。
主人のやつれていく姿を見てるいるならば、知らないところで自分が居なくなった方がいいと

日が落ちた頃バッテリー切れを起こしたシーザーの意識はプツリと切れてしまった。


■■■■

静まり返った部屋の空気を揺らしたのはジョセフの声だった。

「そ、そんなの…お前が欠陥品て理由には…」
ならない、と言いきれないのはシーザーが自嘲するような笑い方をしてこちらを向いたからだった。
「そう言う事になるじゃあないか。だからそこに捨てたんだ」
「……」
「あのまま雨でも降って漏電してれば処分されてたのに、お前も運が悪いな」
こんなハズレを引いてしまって、というシーザーにジョセフは返す言葉がない。シーザーは頭に手をかざすとパチリと鈍い音を立てて髪飾りを外す。
「これを主人は誕生日にくれた。俺は馬鹿みたいに喜んでた 誕生日も何もねえのにな」
「……その時からさっきまでお前は眠っていたことになるのか？」
そう尋ねると小さく首を横に振った。
「一度店に飾れる前、婆さんが起こしてくれたよ。」
「お前は…」
「もちろん嫌がったさ。こんな欠陥品置いておいても邪魔になるだけたからな。」
それでも老婆はシーザーを売りに出した。家に戻ってしまった今何を考えていたのか問い質すことはできない。

シーザーは身体を捩ってこちらを向いた。
「お前がハズレを引いたと思うなら言ってくれ。俺はおとなしく店に戻る」
「シーザー…」
「きっと、他のを紹介してくれると思う。」
「俺はそんなこと気にしない」
「ハッタリ抜かすなよジョジョ」
敵意を込めるように細められた目はジョセフを睨みあげる。
「本当に気にしないなら今そんな風に困った顔はしないはずだ。気にしないなら そうか、そうだったのか でもそんなの昔のことじゃあないかと笑えばいい」
「……」
「気にしてなくても同情くらいはしてるだろう？｣
そう言われて素直に否定する意味もなくジョセフは小さく悪い、と呟いた。
「でも、お前を返す気はない」
「……」
「お前の持ち主は俺だ。前の主人がなんといおうが俺は知らねぇ。」
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