承花
ディオジョナ
ジョセシー
ジャイジョニ
がそれぞれ夫婦設定。
受け側が女体化。
妊娠要素あり。
承花:どうか、よろしくお願い致します
「承太郎さーん。お電話っすよぉ」
研究室に間延びした仗助の声が響く。パソコンのデータ整理をしていた承太郎は席をたった
「誰からだ?」
「花京院さんっす。」
「花京院から?」
滅多に研究室に電話をかけるなんてしないのに、と思いつつ電話を受け継ぐ
「もしもし?」
その様子を見て仗助はそそくさとその場から離れる。すると自分の机でのんびりとコーヒーの入ったカップを揺らしていた億泰が声をかける
「誰だァ?花京院ってのは」
「花京院典子さん。承太郎さんの奥さんだよ」
「えぇっ!?承太郎さんて結婚してたのかよォ!?」
「お前知らなかったのかよ……あー、でもお前が入ってきたのあの人が結婚したあとだったな」
「仗助は会ったことあんのかよ。どんな人?巨乳美人?」
「お前一回死んでこいよ。……まぁ、そうだないうなら、大和撫子って感じっスかねぇ。おっとりしてて、優しいし。ただ、承太郎さんの前だと素になるのかちょっと男口調みたいになるな。」
「へぇ、でもよぉ承太郎さんなんでさっき名字で呼んでたんだ?」
「高校時代からの付き合いだって言ってたし、癖が抜けねんじゃないか?まぁ、あの人もあんまり話さないからなぁ……」
ちら、と目をやるとまだ電話をしている。背中しか見えないため表情が伺えない。
と、思ったらけたたましい衝突音が響く。
「承太郎さん!?」
突然のことに駆け寄ると電話の本体からコードでつながれた受話器がブラブラと机の上からたれて揺れている。
承太郎はうつむいたたまま動こうとしない
「なんだよぉ!?どうしたんだよ!?」
「承太郎さん?何かあったんスか?」
「……が」
「え?なんすか?って、承太郎さん!?承太郎さんッ!!!」
突如承太郎は研究室を飛び出した。
「え!?承太郎さんどうしたんだよ!?」
「わかんねぇけど……億泰ッおうぞ!!!」
「お、おう!!」
何がなんだかわからないまま2人も承太郎をおって部屋を飛び出した
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
なんだかおかしいとは思ってたんだ。
生理は遅れているし、食欲もない。ここ最近なにか食べてもすぐ吐いてしまうし。
そうか、やっぱりそうだったのか
「妊娠、かぁ…」
病院から帰ってきて家に入って口からこぼれたのはそんな言葉だった。
承太郎はなんていうかな。喜んでくれるかな。喜んで欲しいな。でも、もし嫌がられたらどうしよう
そんな思いが家につくまでずっとぐるぐるとしていた。
知り合った時から彼は感情を表に出さない人だった。愛を囁くなんてこと滅多にないし、仏頂面が基本だから周りからは怒ってるとか言われる。
でも、花京院は時折囁かれる愛情がこそばゆく、恥ずかしくてとても嬉しかったし、目がとても優しくてそこが好きだとおもっていた。
「きっと、よろこでくれるよね…」
よし、と気合を入れてリビングに向かう。受話器を外し数字の書かれたボタンをプッシュする。かけた先は承太郎の勤める大学だ。
プルル、プルルとコール音が数回繰り返されて途切れる
『もしもし?葡萄ヶ丘大学です』
「あ、すいません。空条承太郎お願いできますか?花京院と言います。」
『あぁ、はい空条先生ですね……多分本日は研究室にいらっしゃいますので、そちらにお繋ぎしますね。』
「はい。」
会話が終わったところでオルゴールが流れ始める。
いつも大学に電話をかけるのは緊張してしまう。携帯で承太郎個人にかければいいのだろうが、あいにく携帯のバッテリーが切れて充電する間も惜しい。とにかく早く伝えたかったのだ。
『はい、もしもし』
「あ、その声は仗助くんかな。花京院です」
『あーっ!どうもどうも!承太郎さんですよね?ちょっと待っててくださいねー。承太郎さーん。お電話っすよぉ。』
受話器から離れたところで仗助の間延びした声が聞こえてクスクスとわらう。
仗助は承太郎の研究室の研究生だ。入学当初からよく懐いていて何度かあったことがある。見た目は難があるが、気の利く優しい子だ。
『もしもし?』
出た、半日ぶりの承太郎の声だ
「もしもし?僕だけど。悪いね急に」
『いや、大丈夫だ。それよりどうした?』
「あー、んとね?落ち着いて聞いて欲しいんだが……最近食欲がなかったりしただろ?それで、病院に行ってきだんだけど…」
『あぁ。それで?』
心臓がバクバクと早鐘を打つ。落ち着け、落ち着け。
「赤ちゃんが、できたって……三ヶ月だって」
『…』
「それで、僕嬉しくて早く知らせたくて電話かけたんだけど、携帯のバッテリーが切れててそれで……承太郎?」
呼びかけても返事が来ない。だまりこんだままだ。
「もしもし?承太郎?もしも、」
ブツッ…ツーツーツー…
鈍い音がしたあと一定の音が聞こえる。
「切られた…?」
なんで、何かおかしなことを言っただろうか。
頭が徐々に真っ白になっていく。足に力が入らずそのまま床に座り込んでしまった。
喜ばれると思ってた。何も言われないどころか、電話が切れた。
どういうことだろう。もしかして捨てられたのだろうか。子供ができたから?そんなまさか。
だって、好きあっていたし、きっと喜んでくれると…
「もし、好かれてなかったら…?」
最悪なもしもが思い浮かぶ。
その時の流れで付き合ってみたもののそんなつもりはないが結婚してしまった。させられてしまった。
挙句の果てに子供なんて信じられない。そう思われて切られたんじゃないだろうか
視界が滲んでパタパタとフローリングに水滴が落ちる。泣いていると気づくのにそう時間はかからなかった
「……一人で舞い上がってバカみたいだ…」
電話の載せられた棚に頭をこん、とぶつけるようにもたれ掛かって、とうとう瞼を閉じた
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
金属音がガチャガチャと遠くでなるのが聞こえて意識が戻る。
あたりを見渡すとそこはリビングで時計を見るともう16時だ。……眠ってしまったのか。
意識がはっきりするにつれて先程のことを思い出す。嫌われたんだな、と思ったらじわじわとまた視界が歪む。
一度緩んだらなかなか戻ることをしない涙腺がどんどん決壊していく。遠くで怒声と金属音と足音が聞こえる。なんだろう、お隣さんがなにかしているのか。そんなことを思っている暇はなくて、すぐに思考から外れる
と、その瞬間
バタンッ!
「!?」
扉が勢いよく開かれた音に驚いて項垂れていた頭を上げる。
そこにいたのは、先程電話を切った承太郎だった
「じょ……たろ……?」
は、は、と息を吐く承太郎はしっとりと汗をかいておりその両手にはビニール袋が下げられている。
何事かと思っているとまたあとから足音が聞こえる
「チョット!!承太郎さんどぉしたんっすか!?いきなり走り出して!!」
「人に要件は…っいわねえし……大量に果物缶買い込むしよぉ!!」
そこにいたのは同じ袋を二つずつ下げた仗助と知らない男の子だ。誰だろう、と思ったがそういえば新人の子が入ったって話してたなと思い出す。
ガシャ、とビニール袋が床に落ちる。ゴロゴロと中から転がり出してきたものを見る。……さくらんぼの缶詰だ。それが大量に2個3個と出てくる。
なんだなんだと思っていると承太郎が目の前にすわりこんで頭を下げる。
「典子」
このご時世に正座!?と思っていると名前を呼ばれた。滅多に呼ばれることのない下の名前だ。
「え…」
「俺は……いつもお前に迷惑もかける。思ってる事も滅多に口にしねえ、お前を大切にできねえような男だ…でも、ちゃんと一番にお前のことを思ってるし大事にしてえと思ってる。だから、だから……」
俺の子供を、産んで欲しい。
信じられるか、この時代に大の男が、嫁に頭を下げてるんだぞ?
嫌われたと思っていたらそんなことはなくて職場を飛び出しまで来てくれたんだ。
嬉しくないわけ、無いじゃないか
「……ふふ」
つい、笑いが溢れる。
「あは、あははは……んふ、ふふふ…」
「典子……?」
「ははは……あーもう。おかしいよなぁ。涙がぼろぼろ零れてるのに嬉しくて、たまらないんだよ……ふふ」
くつくつと蹲って笑う花京院を承太郎は何が起きているのかわからないといった顔で見つめている。そのうしろで二人はもっとわからないという顔をしているけれど。
「はぁ………承太郎さん」
落ち着いた花京院が承太郎を呼ぶ。座り方は正座に整えられていて背筋は伸びている。
「僕は取るに足らない嫁だし、僕と並ぶとき君はどんなに恥ずかしいだろうと思う時があるよ。」
「そんなこと……」
「でも、唯一の君に嫌われなくてよかった。至らない嫁ですがどうか、これからも末永く」
よろしくお願い致します。
ディオジョナ:5回目の革命
「うん、うん。おめでとう……そう、大事にするんだよ?……うん、じゃあよろしく伝えてね…はーい」
「誰だ」
受話器をおいたと同時に声がかかる。ディオの声だ
「承太郎だよ。花京院に赤ちゃんができたって」
「ふん、結婚二年目とは、承太郎も手が遅い」
「何言ってんのさ。僕たちが早かったの。ていうか君がね」
嫌味を言いながら隣に座る。時計を見れば22時だ。息子のジョルノは寝かしつけてしまった
「五年前に結婚して、それからすぐにジョルノができた。早いよやっぱり」
「なんだ、このディオとの生活が不満だとでも?」
「まさか。」
窓から射し込む月明かりがテーブルの上を照らす。ディオの血の気のない手に自分の手を重ねると、ぴくりと一瞬したが離れないところを見ると嫌ではないらしい。
「ねぇ、もし。もしもだよ?二人目ができたって言ったら…どする?」
そう聞きながらディオを見上げると怪訝そうにこちらを見る
「まさか、できたのか」
「いやいや、もしもの話だよ。ifだよ、if」
クスクスとわらいながら否定すると黙り込んでしまう。怒らせただろうか
「……その時は」
「ん?」
「その時は……我が人生で5回目の革命が起きるかもしれない」
「…………酔ってる?」
「貴様……このディオが真面目に話しているというのに!!」
「だって!君らしからぬ発言だから……」
ごめんよ、と付け足すとそれで落ち着いたのか話を再開する
「……一度目は貴様にあったことだな」
「僕?」
「あぁ、まさか街一番のお嬢様が偶然近くで倒れてた男を拾うか?」
二人の出会いはジョナサンが家の外を歩いているときちょうどどこから逃げてきたのかわからないがディオが薄汚れた状態で倒れ込んでいたのを助けたことだ。目が覚めたとき大きなベッドで見知らぬ女の子が傍で笑っていたのを一生ディオは忘れないだろう。
「あれは………君の髪がとても綺麗で」
「そういう甘い考えがいかんのだ。俺じゃなかったら今頃何をされてたか…」
「心配?」
「……二つ目はお前と付き合えたこと。」
「あ?無視?無視なの?ねえねえ。」
「三つ目は結婚できたこと」
「今日のディオは素直だねぇ……」
「四つ目はハルノが生まれたことだ」
「うん。それは僕にとっても奇跡だよ。それで5つ目が、ifだ。」
「そうだな。」
「ついでに、革命が起こると何が起きる?」
「……薄汚れていた世界が少しずつ明るく煌き、輝きと華やかさをまして柔らかい暖かい心地の良い世界となる」
「……」
「その度に生まれことを珍しく感謝なんかしてしまって、離れたくなくなるのだ……ジョジョよ全てお前のおかけだ。だから」
恥ずかしがってないでこっちをむけよ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ジョセシー:君が大事で仕方がないよ!
夜の道を二人きりで歩く。酒も手伝ってかこんなに気分のいいことは珍しい
「いやーやっと二人が親になるのネ!弟に先こされちまったなぁ……」
「そうだな。」
「ま、俺たちはゆっくり頑張ろーね!」
「うん……」
歩くのをやめて後ろからついてくるシーザーに振り向く。シーザーは俯いてコートの裾を掴んで動こうとしない
「シーザーちゃん、どったの?」
「ジョジョは、子供とかどう思う?」
「え?そりゃ欲しいけど、でもまーまだ二人で良くない?」
「………そっか、」
それだけいうとまた黙り込んだしまう。
今日のシーザーはおかしい。承太郎と花京院のお祝いのために家族で集まった時からどこか上の空だ。
こんなときは自分がなにかして怒らせたパターンだろう。先手必勝!とよくわからないやる気を込めてシーザーのところまでもどり手を握る
「シーザー、俺なんかした?ごめんね?」
「…違う。おまえはわるくないから……」
「じゃあ何?今日ずーっと機嫌悪かったろ?」
そう聞くとまただまり込む。短気なのはいけないと思いつつもイライラと感情が溜まる
「言ってみ?ね?」
「いい」
「大丈夫だって、なんかあったの?俺じゃ力にならない?」
「なるならないじゃないだろ………」
「…じゃあなんだよ!?言わなきゃわかんねえだろうがよぉ!?」
「だって!!言ったところで結局ダメじゃないか!」
「何言ってん………シーザー?」
上げられた顔はくしゃくしゃと歪んで目からボロボロと涙が後から後からこぼれては落ちていく。
高まった感情もそれを見て沈まってしまう
「なんだよ……どうしたんだよ」
「……子供が、できた」
それを聞いて心臓が跳ねる。
なんだって?子供?誰の
「一応聞くけど誰の…」
「お前以外にいる訳ねーだろこの馬鹿っ!!!」
啖呵を切ったようにわあわあと声をあげて泣き始める。どうしていいかわからずにいるとシーザーがしゃべり始めた
「うれしかった、から早く言おうとしたけど、お前いらないとかいうからっなんも言えなく、っわああ!!」
断片的でわかりにくいが、恐らく子供ができたことが嬉しかったから早く報告がしたかった。ただ、肝心の相手はまだいらないとか言っているからもし伝えたら何を言われるかわからなくてここまで言えなかったということだろう。
自分はバカだろうか。こんな思いを自分の大事な女性にさせて。祖母にしれたら殺されてしまう。
オーノー、と小さく吐き捨てるようにしてシーザーを抱きしめて背中をあやすように叩く。
「ごめんね、怖かったね。一人で、ずっとね」
「っぐ、うえぇ……」
「俺自分がガキだから、現実見たくなかったんだな。バカだよな 」
「バカ、スカタンッ…イモォ…」
その罵りは納得行かねえけどな。
「でも、シーザーちゃんが子供できたの喜んでくれて、すげえ嬉しい。」
「っうぅ…だって、ずっと夢だったし」
「そうだね。温かい家庭を作りたいって、言ってたもんね」
「ぐす……うん…」
「ありがとうシーザー、愛してる」
「うん…うん。」
目にかかる前髪をかきあげて目を見ると綺麗な翡翠色の瞳がキラキラとかすかに光る。
触れるだけのキスをしてもう一度見つめると嬉しそうに笑われた。
「大事にする。」
「あぁ、幸せになろう」
「もー俺これ以上幸せになったら死んじゃうんだけど」
「バカ言ってんじゃあねえよパーパ」
「…シーザーちゃん、それやばい」
「うるさい、ほら、帰るぞ」
「もー冷たいんだからァ。」
シーザーが歩き出すのを後ろから追いかけて手をつなぐ。
ずっとこの手を離すことはないだろう。
大事で大事で仕方のないこの子をもう一人家族が増えたときもっと大事に、幸せにするために。
君が大事で仕方がないよ!
ジャイジョニ:幸せの形なんていくらでもあるし。
寒空の下。家族の集まりの帰り道。いつものごとく車椅子を押しながらなんとなく空を見上げると星が瞬いている。
「ジョニィみてみろよ。星がすげえぜ」
「え?わっ!ホントだ、真冬だから空気が澄んでるのかな」
「そうだなー。あ、寒くない?ブランケットもう一枚出すか?」
「いいよそんなに出さなくて。今日は暖かいストッキング履いてるんだー。」
「よぅわからんな。」
「わからんでいいよ。」
嬉しそうに体を揺らしているのを見て溜息が出る。
ジョニィの兄の嫁が妊娠したことの祝いで家族が集まった。みんな騒ぎ通しったため疲れていないかと思ったが大丈夫そうだ。
ふと、ジョニィが口を開く
「それにしても、赤ちゃんいいね!美男美女カップルだからさ、きっとかわいいだろなぁ」
「さーてどうかねぇ。まぁ、あの二人ならいい子になりそうだな」
「ねぇ、ジャイロ」
「んー?」
「ものすごく、ものすごーく唐突なこというね」
「おう。」
なんだろうかと少しドキドキしながらニット帽を被った小さな頭を見下ろす
年下の可愛い恋人だ。いつもニコニコしながら楽しそうに話すから何を言われるのかと期待した。
期待したから、届いた言葉に心臓が止まるかと思った
「別れようよ。」
「……あ?」
つい歩くのをやめると一人でにタイヤを回してジョニィが少し前進する。回れ右をしてこちらを向いた顔はいつもどおりニコニコしている。
「だって、僕みたいなのといたらずっと君めんどくさい思いをするよ?だったら、もっと美人な女の人探して一緒になった方が君のためだ」
「お前何いってんだよ……何言ってんだよ!?」
「だって、僕こんなだし、そういう行為はできても、生殖機能自体が死んでるから子供なんてできないし。」
「だからなんだよ……だからなんだよ!?そんなの関係ないだろ!お前は俺と別れたいのかよ!?」
「別れたくないよ!でも、知ってるんだぞ!!お前が小さい子を連れた夫婦を羨ましそうに見てるのも、今日だって!承兄達とかジョナ姉たちのことずっと見てたし!!」
「それは…」
「それに…僕とそういうことした時だって終わったあと大丈夫っていいながら不満そうな顔するじゃんか!!」
「違う……それは違うって!!」
「さっきそういう行為はできるっていったけどさほぼ機能してないに等しいから全然満足するわけ無いよね!!」
「ジョニィッ!!」
名前を怒鳴るように呼ぶと一瞬肩を揺らして黙り込む。
黙り込んだかと思ったら嗚咽が聞こえる
「僕だって、別れるとか……嫌だよ。でも、こんな体で子供もできなくてさ、ジャイロにずっと迷惑かけて生きるとかできないんだよ…」
「ジョニィ…」
「だから……も、ぅ別れてよぉ…うわあああぁ……」
とうとう耐えきれなくなったのか声をあげて泣き始める。いつもちょっとしたことでなくこの娘はどれだけ考えて、泣きそうになるのを我慢したんだろう。
それを思うと胸が痛い。
歩み寄ってジョニィの膝に手を添えてしゃがみ込む。それでもジョニィはエグエグと泣くことをやめない
「ジョニィ」
「……、なんだよ」
「結婚すんぞ。」
「………は?」
面白いほど急に泣きやんだジョニィがこちらを向く。確実に何を言ってるんだという顔をしている。
「何言ってんの?頭沸いてんの?人の話聞いてたの?」
「あー聞いてたさ。頭も正常だぜ。だから明日籍入れに行くぞ」
「なんっもわかってないね!?別れようって言って籍入れるってどーいうこと!?」
「あのな、言っとくけどな。俺はお前のことめんどくさいとか思ったことねえぞ。むしろ可愛くて可愛くて誰にも渡したくねえな。」
怒ったような顔をしていたジョニィの顔がわかりやすく真っ赤になっていく。
「満足いかないどころが逆に俺ばっか得してどうしようかと思ってるくれえだし」
「そんなわけ、ないだろ……」
「なんか俺お前の体目的で付き合ってるとか思われてるの?んなわけあるかよ。バカ」
「バカじゃないし!!!」
「それに子供だって養子とればいいし」
「よ……し?」
「あーでも俺らの歳で取れんのかな。まぁそこらへんは後日要相談だな。」
「ま、待ってよ勝手に話進めないでよそんなでいいの!?簡単すぎない!?」
顔を真っ赤にして焦ったように捲し立てる。多分もうひと押しだ
「好きな子といっしょならなんでもいいし」
「………ばかー」
ブツブツと言いながら倒れ込んできそうになるので落ないように抱き止める。
「つーか。幸せの形なんていくらでもあるし、なんとかなるだろ。つかなんとかする」
「君はそーやって何も考えないから後で困るんだよ……」
「お前はそーやって考えすぎるから今困ってんだろうが」
「大好き」
「……あぁ」
サラサラとした髪を指で梳くと背中に腕が回される。
わがままで泣き虫で可愛くてしょうがないこの子を離すなんてできるわけがない。
そうやってこの娘の兄も姉もみんな幸せになってるのだ。
「俺たちが幸せになれないはずがないよなぁ。」
幸せの形なんていくらでもあるし!
それぞれのアレコレ おしまい。
ディオジョナ
ジョセシー
ジャイジョニ
がそれぞれ夫婦設定。
受け側が女体化。
妊娠要素あり。
承花:どうか、よろしくお願い致します
「承太郎さーん。お電話っすよぉ」
研究室に間延びした仗助の声が響く。パソコンのデータ整理をしていた承太郎は席をたった
「誰からだ?」
「花京院さんっす。」
「花京院から?」
滅多に研究室に電話をかけるなんてしないのに、と思いつつ電話を受け継ぐ
「もしもし?」
その様子を見て仗助はそそくさとその場から離れる。すると自分の机でのんびりとコーヒーの入ったカップを揺らしていた億泰が声をかける
「誰だァ?花京院ってのは」
「花京院典子さん。承太郎さんの奥さんだよ」
「えぇっ!?承太郎さんて結婚してたのかよォ!?」
「お前知らなかったのかよ……あー、でもお前が入ってきたのあの人が結婚したあとだったな」
「仗助は会ったことあんのかよ。どんな人?巨乳美人?」
「お前一回死んでこいよ。……まぁ、そうだないうなら、大和撫子って感じっスかねぇ。おっとりしてて、優しいし。ただ、承太郎さんの前だと素になるのかちょっと男口調みたいになるな。」
「へぇ、でもよぉ承太郎さんなんでさっき名字で呼んでたんだ?」
「高校時代からの付き合いだって言ってたし、癖が抜けねんじゃないか?まぁ、あの人もあんまり話さないからなぁ……」
ちら、と目をやるとまだ電話をしている。背中しか見えないため表情が伺えない。
と、思ったらけたたましい衝突音が響く。
「承太郎さん!?」
突然のことに駆け寄ると電話の本体からコードでつながれた受話器がブラブラと机の上からたれて揺れている。
承太郎はうつむいたたまま動こうとしない
「なんだよぉ!?どうしたんだよ!?」
「承太郎さん?何かあったんスか?」
「……が」
「え?なんすか?って、承太郎さん!?承太郎さんッ!!!」
突如承太郎は研究室を飛び出した。
「え!?承太郎さんどうしたんだよ!?」
「わかんねぇけど……億泰ッおうぞ!!!」
「お、おう!!」
何がなんだかわからないまま2人も承太郎をおって部屋を飛び出した
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
なんだかおかしいとは思ってたんだ。
生理は遅れているし、食欲もない。ここ最近なにか食べてもすぐ吐いてしまうし。
そうか、やっぱりそうだったのか
「妊娠、かぁ…」
病院から帰ってきて家に入って口からこぼれたのはそんな言葉だった。
承太郎はなんていうかな。喜んでくれるかな。喜んで欲しいな。でも、もし嫌がられたらどうしよう
そんな思いが家につくまでずっとぐるぐるとしていた。
知り合った時から彼は感情を表に出さない人だった。愛を囁くなんてこと滅多にないし、仏頂面が基本だから周りからは怒ってるとか言われる。
でも、花京院は時折囁かれる愛情がこそばゆく、恥ずかしくてとても嬉しかったし、目がとても優しくてそこが好きだとおもっていた。
「きっと、よろこでくれるよね…」
よし、と気合を入れてリビングに向かう。受話器を外し数字の書かれたボタンをプッシュする。かけた先は承太郎の勤める大学だ。
プルル、プルルとコール音が数回繰り返されて途切れる
『もしもし?葡萄ヶ丘大学です』
「あ、すいません。空条承太郎お願いできますか?花京院と言います。」
『あぁ、はい空条先生ですね……多分本日は研究室にいらっしゃいますので、そちらにお繋ぎしますね。』
「はい。」
会話が終わったところでオルゴールが流れ始める。
いつも大学に電話をかけるのは緊張してしまう。携帯で承太郎個人にかければいいのだろうが、あいにく携帯のバッテリーが切れて充電する間も惜しい。とにかく早く伝えたかったのだ。
『はい、もしもし』
「あ、その声は仗助くんかな。花京院です」
『あーっ!どうもどうも!承太郎さんですよね?ちょっと待っててくださいねー。承太郎さーん。お電話っすよぉ。』
受話器から離れたところで仗助の間延びした声が聞こえてクスクスとわらう。
仗助は承太郎の研究室の研究生だ。入学当初からよく懐いていて何度かあったことがある。見た目は難があるが、気の利く優しい子だ。
『もしもし?』
出た、半日ぶりの承太郎の声だ
「もしもし?僕だけど。悪いね急に」
『いや、大丈夫だ。それよりどうした?』
「あー、んとね?落ち着いて聞いて欲しいんだが……最近食欲がなかったりしただろ?それで、病院に行ってきだんだけど…」
『あぁ。それで?』
心臓がバクバクと早鐘を打つ。落ち着け、落ち着け。
「赤ちゃんが、できたって……三ヶ月だって」
『…』
「それで、僕嬉しくて早く知らせたくて電話かけたんだけど、携帯のバッテリーが切れててそれで……承太郎?」
呼びかけても返事が来ない。だまりこんだままだ。
「もしもし?承太郎?もしも、」
ブツッ…ツーツーツー…
鈍い音がしたあと一定の音が聞こえる。
「切られた…?」
なんで、何かおかしなことを言っただろうか。
頭が徐々に真っ白になっていく。足に力が入らずそのまま床に座り込んでしまった。
喜ばれると思ってた。何も言われないどころか、電話が切れた。
どういうことだろう。もしかして捨てられたのだろうか。子供ができたから?そんなまさか。
だって、好きあっていたし、きっと喜んでくれると…
「もし、好かれてなかったら…?」
最悪なもしもが思い浮かぶ。
その時の流れで付き合ってみたもののそんなつもりはないが結婚してしまった。させられてしまった。
挙句の果てに子供なんて信じられない。そう思われて切られたんじゃないだろうか
視界が滲んでパタパタとフローリングに水滴が落ちる。泣いていると気づくのにそう時間はかからなかった
「……一人で舞い上がってバカみたいだ…」
電話の載せられた棚に頭をこん、とぶつけるようにもたれ掛かって、とうとう瞼を閉じた
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
金属音がガチャガチャと遠くでなるのが聞こえて意識が戻る。
あたりを見渡すとそこはリビングで時計を見るともう16時だ。……眠ってしまったのか。
意識がはっきりするにつれて先程のことを思い出す。嫌われたんだな、と思ったらじわじわとまた視界が歪む。
一度緩んだらなかなか戻ることをしない涙腺がどんどん決壊していく。遠くで怒声と金属音と足音が聞こえる。なんだろう、お隣さんがなにかしているのか。そんなことを思っている暇はなくて、すぐに思考から外れる
と、その瞬間
バタンッ!
「!?」
扉が勢いよく開かれた音に驚いて項垂れていた頭を上げる。
そこにいたのは、先程電話を切った承太郎だった
「じょ……たろ……?」
は、は、と息を吐く承太郎はしっとりと汗をかいておりその両手にはビニール袋が下げられている。
何事かと思っているとまたあとから足音が聞こえる
「チョット!!承太郎さんどぉしたんっすか!?いきなり走り出して!!」
「人に要件は…っいわねえし……大量に果物缶買い込むしよぉ!!」
そこにいたのは同じ袋を二つずつ下げた仗助と知らない男の子だ。誰だろう、と思ったがそういえば新人の子が入ったって話してたなと思い出す。
ガシャ、とビニール袋が床に落ちる。ゴロゴロと中から転がり出してきたものを見る。……さくらんぼの缶詰だ。それが大量に2個3個と出てくる。
なんだなんだと思っていると承太郎が目の前にすわりこんで頭を下げる。
「典子」
このご時世に正座!?と思っていると名前を呼ばれた。滅多に呼ばれることのない下の名前だ。
「え…」
「俺は……いつもお前に迷惑もかける。思ってる事も滅多に口にしねえ、お前を大切にできねえような男だ…でも、ちゃんと一番にお前のことを思ってるし大事にしてえと思ってる。だから、だから……」
俺の子供を、産んで欲しい。
信じられるか、この時代に大の男が、嫁に頭を下げてるんだぞ?
嫌われたと思っていたらそんなことはなくて職場を飛び出しまで来てくれたんだ。
嬉しくないわけ、無いじゃないか
「……ふふ」
つい、笑いが溢れる。
「あは、あははは……んふ、ふふふ…」
「典子……?」
「ははは……あーもう。おかしいよなぁ。涙がぼろぼろ零れてるのに嬉しくて、たまらないんだよ……ふふ」
くつくつと蹲って笑う花京院を承太郎は何が起きているのかわからないといった顔で見つめている。そのうしろで二人はもっとわからないという顔をしているけれど。
「はぁ………承太郎さん」
落ち着いた花京院が承太郎を呼ぶ。座り方は正座に整えられていて背筋は伸びている。
「僕は取るに足らない嫁だし、僕と並ぶとき君はどんなに恥ずかしいだろうと思う時があるよ。」
「そんなこと……」
「でも、唯一の君に嫌われなくてよかった。至らない嫁ですがどうか、これからも末永く」
よろしくお願い致します。
ディオジョナ:5回目の革命
「うん、うん。おめでとう……そう、大事にするんだよ?……うん、じゃあよろしく伝えてね…はーい」
「誰だ」
受話器をおいたと同時に声がかかる。ディオの声だ
「承太郎だよ。花京院に赤ちゃんができたって」
「ふん、結婚二年目とは、承太郎も手が遅い」
「何言ってんのさ。僕たちが早かったの。ていうか君がね」
嫌味を言いながら隣に座る。時計を見れば22時だ。息子のジョルノは寝かしつけてしまった
「五年前に結婚して、それからすぐにジョルノができた。早いよやっぱり」
「なんだ、このディオとの生活が不満だとでも?」
「まさか。」
窓から射し込む月明かりがテーブルの上を照らす。ディオの血の気のない手に自分の手を重ねると、ぴくりと一瞬したが離れないところを見ると嫌ではないらしい。
「ねぇ、もし。もしもだよ?二人目ができたって言ったら…どする?」
そう聞きながらディオを見上げると怪訝そうにこちらを見る
「まさか、できたのか」
「いやいや、もしもの話だよ。ifだよ、if」
クスクスとわらいながら否定すると黙り込んでしまう。怒らせただろうか
「……その時は」
「ん?」
「その時は……我が人生で5回目の革命が起きるかもしれない」
「…………酔ってる?」
「貴様……このディオが真面目に話しているというのに!!」
「だって!君らしからぬ発言だから……」
ごめんよ、と付け足すとそれで落ち着いたのか話を再開する
「……一度目は貴様にあったことだな」
「僕?」
「あぁ、まさか街一番のお嬢様が偶然近くで倒れてた男を拾うか?」
二人の出会いはジョナサンが家の外を歩いているときちょうどどこから逃げてきたのかわからないがディオが薄汚れた状態で倒れ込んでいたのを助けたことだ。目が覚めたとき大きなベッドで見知らぬ女の子が傍で笑っていたのを一生ディオは忘れないだろう。
「あれは………君の髪がとても綺麗で」
「そういう甘い考えがいかんのだ。俺じゃなかったら今頃何をされてたか…」
「心配?」
「……二つ目はお前と付き合えたこと。」
「あ?無視?無視なの?ねえねえ。」
「三つ目は結婚できたこと」
「今日のディオは素直だねぇ……」
「四つ目はハルノが生まれたことだ」
「うん。それは僕にとっても奇跡だよ。それで5つ目が、ifだ。」
「そうだな。」
「ついでに、革命が起こると何が起きる?」
「……薄汚れていた世界が少しずつ明るく煌き、輝きと華やかさをまして柔らかい暖かい心地の良い世界となる」
「……」
「その度に生まれことを珍しく感謝なんかしてしまって、離れたくなくなるのだ……ジョジョよ全てお前のおかけだ。だから」
恥ずかしがってないでこっちをむけよ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ジョセシー:君が大事で仕方がないよ!
夜の道を二人きりで歩く。酒も手伝ってかこんなに気分のいいことは珍しい
「いやーやっと二人が親になるのネ!弟に先こされちまったなぁ……」
「そうだな。」
「ま、俺たちはゆっくり頑張ろーね!」
「うん……」
歩くのをやめて後ろからついてくるシーザーに振り向く。シーザーは俯いてコートの裾を掴んで動こうとしない
「シーザーちゃん、どったの?」
「ジョジョは、子供とかどう思う?」
「え?そりゃ欲しいけど、でもまーまだ二人で良くない?」
「………そっか、」
それだけいうとまた黙り込んだしまう。
今日のシーザーはおかしい。承太郎と花京院のお祝いのために家族で集まった時からどこか上の空だ。
こんなときは自分がなにかして怒らせたパターンだろう。先手必勝!とよくわからないやる気を込めてシーザーのところまでもどり手を握る
「シーザー、俺なんかした?ごめんね?」
「…違う。おまえはわるくないから……」
「じゃあ何?今日ずーっと機嫌悪かったろ?」
そう聞くとまただまり込む。短気なのはいけないと思いつつもイライラと感情が溜まる
「言ってみ?ね?」
「いい」
「大丈夫だって、なんかあったの?俺じゃ力にならない?」
「なるならないじゃないだろ………」
「…じゃあなんだよ!?言わなきゃわかんねえだろうがよぉ!?」
「だって!!言ったところで結局ダメじゃないか!」
「何言ってん………シーザー?」
上げられた顔はくしゃくしゃと歪んで目からボロボロと涙が後から後からこぼれては落ちていく。
高まった感情もそれを見て沈まってしまう
「なんだよ……どうしたんだよ」
「……子供が、できた」
それを聞いて心臓が跳ねる。
なんだって?子供?誰の
「一応聞くけど誰の…」
「お前以外にいる訳ねーだろこの馬鹿っ!!!」
啖呵を切ったようにわあわあと声をあげて泣き始める。どうしていいかわからずにいるとシーザーがしゃべり始めた
「うれしかった、から早く言おうとしたけど、お前いらないとかいうからっなんも言えなく、っわああ!!」
断片的でわかりにくいが、恐らく子供ができたことが嬉しかったから早く報告がしたかった。ただ、肝心の相手はまだいらないとか言っているからもし伝えたら何を言われるかわからなくてここまで言えなかったということだろう。
自分はバカだろうか。こんな思いを自分の大事な女性にさせて。祖母にしれたら殺されてしまう。
オーノー、と小さく吐き捨てるようにしてシーザーを抱きしめて背中をあやすように叩く。
「ごめんね、怖かったね。一人で、ずっとね」
「っぐ、うえぇ……」
「俺自分がガキだから、現実見たくなかったんだな。バカだよな 」
「バカ、スカタンッ…イモォ…」
その罵りは納得行かねえけどな。
「でも、シーザーちゃんが子供できたの喜んでくれて、すげえ嬉しい。」
「っうぅ…だって、ずっと夢だったし」
「そうだね。温かい家庭を作りたいって、言ってたもんね」
「ぐす……うん…」
「ありがとうシーザー、愛してる」
「うん…うん。」
目にかかる前髪をかきあげて目を見ると綺麗な翡翠色の瞳がキラキラとかすかに光る。
触れるだけのキスをしてもう一度見つめると嬉しそうに笑われた。
「大事にする。」
「あぁ、幸せになろう」
「もー俺これ以上幸せになったら死んじゃうんだけど」
「バカ言ってんじゃあねえよパーパ」
「…シーザーちゃん、それやばい」
「うるさい、ほら、帰るぞ」
「もー冷たいんだからァ。」
シーザーが歩き出すのを後ろから追いかけて手をつなぐ。
ずっとこの手を離すことはないだろう。
大事で大事で仕方のないこの子をもう一人家族が増えたときもっと大事に、幸せにするために。
君が大事で仕方がないよ!
ジャイジョニ:幸せの形なんていくらでもあるし。
寒空の下。家族の集まりの帰り道。いつものごとく車椅子を押しながらなんとなく空を見上げると星が瞬いている。
「ジョニィみてみろよ。星がすげえぜ」
「え?わっ!ホントだ、真冬だから空気が澄んでるのかな」
「そうだなー。あ、寒くない?ブランケットもう一枚出すか?」
「いいよそんなに出さなくて。今日は暖かいストッキング履いてるんだー。」
「よぅわからんな。」
「わからんでいいよ。」
嬉しそうに体を揺らしているのを見て溜息が出る。
ジョニィの兄の嫁が妊娠したことの祝いで家族が集まった。みんな騒ぎ通しったため疲れていないかと思ったが大丈夫そうだ。
ふと、ジョニィが口を開く
「それにしても、赤ちゃんいいね!美男美女カップルだからさ、きっとかわいいだろなぁ」
「さーてどうかねぇ。まぁ、あの二人ならいい子になりそうだな」
「ねぇ、ジャイロ」
「んー?」
「ものすごく、ものすごーく唐突なこというね」
「おう。」
なんだろうかと少しドキドキしながらニット帽を被った小さな頭を見下ろす
年下の可愛い恋人だ。いつもニコニコしながら楽しそうに話すから何を言われるのかと期待した。
期待したから、届いた言葉に心臓が止まるかと思った
「別れようよ。」
「……あ?」
つい歩くのをやめると一人でにタイヤを回してジョニィが少し前進する。回れ右をしてこちらを向いた顔はいつもどおりニコニコしている。
「だって、僕みたいなのといたらずっと君めんどくさい思いをするよ?だったら、もっと美人な女の人探して一緒になった方が君のためだ」
「お前何いってんだよ……何言ってんだよ!?」
「だって、僕こんなだし、そういう行為はできても、生殖機能自体が死んでるから子供なんてできないし。」
「だからなんだよ……だからなんだよ!?そんなの関係ないだろ!お前は俺と別れたいのかよ!?」
「別れたくないよ!でも、知ってるんだぞ!!お前が小さい子を連れた夫婦を羨ましそうに見てるのも、今日だって!承兄達とかジョナ姉たちのことずっと見てたし!!」
「それは…」
「それに…僕とそういうことした時だって終わったあと大丈夫っていいながら不満そうな顔するじゃんか!!」
「違う……それは違うって!!」
「さっきそういう行為はできるっていったけどさほぼ機能してないに等しいから全然満足するわけ無いよね!!」
「ジョニィッ!!」
名前を怒鳴るように呼ぶと一瞬肩を揺らして黙り込む。
黙り込んだかと思ったら嗚咽が聞こえる
「僕だって、別れるとか……嫌だよ。でも、こんな体で子供もできなくてさ、ジャイロにずっと迷惑かけて生きるとかできないんだよ…」
「ジョニィ…」
「だから……も、ぅ別れてよぉ…うわあああぁ……」
とうとう耐えきれなくなったのか声をあげて泣き始める。いつもちょっとしたことでなくこの娘はどれだけ考えて、泣きそうになるのを我慢したんだろう。
それを思うと胸が痛い。
歩み寄ってジョニィの膝に手を添えてしゃがみ込む。それでもジョニィはエグエグと泣くことをやめない
「ジョニィ」
「……、なんだよ」
「結婚すんぞ。」
「………は?」
面白いほど急に泣きやんだジョニィがこちらを向く。確実に何を言ってるんだという顔をしている。
「何言ってんの?頭沸いてんの?人の話聞いてたの?」
「あー聞いてたさ。頭も正常だぜ。だから明日籍入れに行くぞ」
「なんっもわかってないね!?別れようって言って籍入れるってどーいうこと!?」
「あのな、言っとくけどな。俺はお前のことめんどくさいとか思ったことねえぞ。むしろ可愛くて可愛くて誰にも渡したくねえな。」
怒ったような顔をしていたジョニィの顔がわかりやすく真っ赤になっていく。
「満足いかないどころが逆に俺ばっか得してどうしようかと思ってるくれえだし」
「そんなわけ、ないだろ……」
「なんか俺お前の体目的で付き合ってるとか思われてるの?んなわけあるかよ。バカ」
「バカじゃないし!!!」
「それに子供だって養子とればいいし」
「よ……し?」
「あーでも俺らの歳で取れんのかな。まぁそこらへんは後日要相談だな。」
「ま、待ってよ勝手に話進めないでよそんなでいいの!?簡単すぎない!?」
顔を真っ赤にして焦ったように捲し立てる。多分もうひと押しだ
「好きな子といっしょならなんでもいいし」
「………ばかー」
ブツブツと言いながら倒れ込んできそうになるので落ないように抱き止める。
「つーか。幸せの形なんていくらでもあるし、なんとかなるだろ。つかなんとかする」
「君はそーやって何も考えないから後で困るんだよ……」
「お前はそーやって考えすぎるから今困ってんだろうが」
「大好き」
「……あぁ」
サラサラとした髪を指で梳くと背中に腕が回される。
わがままで泣き虫で可愛くてしょうがないこの子を離すなんてできるわけがない。
そうやってこの娘の兄も姉もみんな幸せになってるのだ。
「俺たちが幸せになれないはずがないよなぁ。」
幸せの形なんていくらでもあるし!
それぞれのアレコレ おしまい。
スポンサードリンク