「おかえり、ほむらちゃん」
気づくと目の前にいたのは親友だった
「……まどか」
「お疲れ様、もう頑張らなくていいんだよ」
そう言って小走りで近寄って抱きついてきた彼女は記憶に焼き付いた制服姿のままだった。見れば私も制服姿だ
自分はどこで何をしていたんだろう。何も思い出せない
「もう魔獣を倒す必要もない。ほむらちゃんだけじゃないよ?マミさんも杏子ちゃんも」
「あ……」
小さく声を漏らす。そうだ、私はまどかのいた世界を守ろうと必死になっていたのだ。
「みんなは……?」
「あぁ、みんな先に行って待ってるよ。ほむらちゃん遅いんだもん」
笑った顔もあの時の可愛らしいままだ。それを見て安心してつい顔が緩むのがわかる
「早く行こうよ!ね?」
「うん……あぁでも少し疲れてしまったから、ゆっくり歩いていきましょうか」
「うん!」
不意に手を握られて温かさが伝わってくる。どちらからともなくゆっくりと歩き始める。
そこは白くぼやけて建物も何もない場所だ。霧に包まれたような、それでも不快ではない不思議な場所
歩く度にカツンカツンと足元がなるから床や天井という概念はあるんだなと思う
「あれから大変だったんだ。魔女も魔法少女もみんな迎えに行って。でも今ではみんな楽しそうに暮らしてるから嬉しいんだ」
「そう」
「さやかちゃんもね、いるんだよ!最近は箱の魔女……エリーって言うんだけど二人で仲良くしてるみたい」
「そう……」
箱の魔女といえばあのマネキンような使い魔を連れたブラウン管テレビにまとわる様にしていた黒髪のあの娘だろうかと思い出す。
「そう!そういえばね!ワルプルギスの夜だった子もちゃんといるんだけれど!何だか昔のほむらちゃんみたいなの!」
「なっ………その例え方はやめてちょうだいよ!」
「えー!あのほむらちゃんも可愛くて好きだよ!」
恥ずかしさから顔が熱くなるのがわかる。 思い出したくないことを引っ張りだしてきたなぁと思った
「それでね、一度お話したんだけど、皆を助けたくて魔法少女になったけど結局無力でごめんなさいって泣きながら謝られちゃって、その場にさやかちゃんもいたんだけど二人で困っちゃった」
「そう……」
何事もなかったように話された言葉に純粋に感心していた。
魔法少女が何らかの幸せを求めて契約したのであって、悪い事ではないとは思っていたが、それでも何度も苦戦した相手がそんな風に思っていたんだと知って一方的に恨んでいたのが後ろめたく感じた
「だからね、」
急にまどかが歩を止める。つられて立ち止まると自分と向かい合うようにまどかは立っていた
「これからはみんなで仲良く楽しく暮らそ!輪廻転生で戻らなきゃいけなくなる時があるかもしれないけど。その時までは皆で、ね?」
嬉しそうに笑うまどかに頷き返そうと思って一瞬違和感を覚える
なんだ、何かが違う。
恐る恐る問いかける
「まどか」
「なぁに?ほむらちゃん」
「髪……縛ってないのね。リボンも…」
そうだ、リボンがないのだ。あの赤くて可愛らしいまどかのチャームポイントのリボンが
それゆえ髪は束ねられておらずサラサラと流れている
まどかの表情がしまったというように一瞬歪む。握られた手が冷たく汗ばんでいる
「え、あー……だってあれはほむらちゃんにあげちゃったもん!もう忘れちゃったの?」
「でも私はリボンつけていないわ」
アハハと笑うまどかに畳み掛けるように言葉を投げる。いつもならリボンでうしろに流れる髪は縛られることなく肩や背中にそって垂れている
まどかは眉を寄せ目線を泳がせる
「えっと、あの」
「それにマミも杏子もまだあなたに導かれていないはずよ。さっきまで一緒にいたもの」
「ほむらちゃん」
「ねぇ、まどか教えてちょうだい」
「ほむらちゃ」
「ここは」
「もう、やめて」
「ここはどこなの!」
つい尖ったような聞き方になる。焦っている戸惑っている
まどかはとうとう俯いて声を震わせている。
「ごめんなさい……ごめ、なさ」
「まどか、怒っていないから。ね?教えて」
「ごめんなさい……ほむらちゃ…あぁ」
ごめんなさいごめんなさいと繰り返しながら膝から崩れ落ちて手のひらで顔を覆う。肩が震えている。泣いている
「だって、ほむらちゃんが、辛いと思って」
「大丈夫よ、貴方が残してくれた世界を私は」
「大丈夫じゃないよね!?だって、全部の時間軸の記憶を見たよ。そうしたら!アナタは私のせいで何回も辛い思いをして泣いていて!」
「まどか…」
「無理だよ……自分で決めたことだけど……貴方をこれ以上苦しめられない」
そう呟いたのを最後に彼女は嗚咽を漏らして泣き始める。私はしゃがみこんでその背中を撫でる
「大丈夫、私は頑張れる。まどかがいるもの」
あぁ、この背中はこんなに小さく頼りなかっただろうか
最初と最後に見たあの頼もしくて大きな背中はこんなに今にも消えそうに小さかっただろうか
「それにね、今はマミも杏子もいる。タッくんもいるんだよ?一人じゃないってこんなに頼もしい」
「……でも」
「それにね、こんな寂しいところでお迎えは嫌だわ。まどかとさやかと、他のみんなで待っててくれなきゃ。」
「………うん」
「ごめんね、辛い思いをさせて」
ふるふると首を振ってみせるまどかに安心して私は立ち上がる。制服姿じゃなく魔法少女の姿で
まどかが見上げてくる。その目は潤んでいて、少し赤くなっていた
「…私は今どうなってるの?」
「むこうでは、眠ってる状態だよ」
「そう」
これ以上いたら、戻れなくなりそうだ。私は踵を返して元来た道を歩き出す
「まって、ほむらちゃん」
まどかに呼ばれて振り返る。白い空間は少しずつボロボロと崩れ始めていた。
崩れて、壊れて―最後に一瞬見えた少女たちはきっとまた逢えるだろう
まどかは笑顔でこういった
「いってらっしゃい、ほむらちゃん」
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「暁美さん!」
「ほむら!」
誰かに呼ばれた気がして目を開けるとマミと杏子が覗き込んでいた何度も自分の名前を繰り返していた
「………ゥ」
「良かったぁ…暁美さんったら魔獣が消えると同時に倒れ込むんだもの。そのままいなくなるかと思っちゃった」
「まったくだよ。心配させやがって」
起き上がってみるとそこはいつかの駅だった。人はいなく静まり返っている。
ふと、気になって頭に手を伸ばすとリボンがちゃんとあった
「よかった…」
「ん?なんか夢でも見たか?」
杏子が怪訝そうに尋ねる
「ちょっとしんゆうのところにいってたの」
「はぁ?」
不思議そうな顔をする二人だけど、特に気にはしない
「まぁ、いいか。ほむら」
「暁美さん」
「「おかえり」」
聞き覚えのある言葉につい顔が綻んだ
-Fin-
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なんとなく書いたけど納得いかねーーーー
難しい。
タイトルが帰ってきたドラえもんみたいだね。
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