土曜日の昼下がり
お昼ご飯も食べた、お昼寝も存分に楽しんでやることがなくなって暇になった少女は家の中を人の名を呼びながら走り回っていた

「かきょーいーん」

パタパタと足音を鳴らしながらフローリングの長い廊下を進む

「かーきょーいーん」

つややかな黒髪。同じ色のお団子を緑色の髪で可愛く結び、また同じ色の三つ編みを揺らしている
名を空条徐倫という。


「かーきょーいーん!」
「徐倫」

名前を呼ばれて振り返ると父の書斎から申し訳なさそうに顔だけ出した朱色の髪の毛が眩しい男が立っていた
大きな特徴的な唇に人差し指を当てて「シー」と言うとサクランボを型どったようなピアスが揺れる

「かきょういん!」
どこにいたの!と文句を吐きつつ今来た道をパタパタと戻り花京院の腰に腕を回して抱きつく

「んもう!起きたらダディ花京院もいないんだもの!」
「アハハごめんごめん。承太郎の仕事を見てたんだ」

ぷぅと頬を膨らませると子供特有の柔らかい肌が少しばかり赤みをさす

「ダディのお仕事はじゅんちょうなの?」

最近覚えたばかりの言葉を得意そうに使う徐倫に少しだけ笑をこぼして花京院は徐倫の髪をサラサラと梳く

「うーん……ちょっと行き詰まってるみたいだねぇ。ここずっと調べ物したりしてて、疲れたみたいで寝てしまったよ。」
「お布団かけてあげた?」
「うん。かけてきたよ」

承太郎が仕事の途中で寝落ちしてしまった時に風邪をひかないようにと毛布をかけるのが花京院の仕事であり、唯一の承太郎にしてあげれることだ
それが花京院の仕業だと承太郎は気付いていないし、気づくはずもなく起きると必ず徐倫に礼を言っていた

「なんでダディには花京院のこと秘密なの?」
「だって、いきなり死んだはずの人間が出てきたらビックリしちゃうだろ?」
「うーん…でも喜ぶと思うわ」
「それでも、言えないなぁ」

自分のことを知ったらきっと承太郎は驚いてしまうし、やっと吹っ切れそうな所なのに、また引きずってしまうかもしれない
自分のせいで好きな人が落ち込んだり悲しんだりするのは花京院の嫌がることだった

徐倫と出会ったのは二ヶ月ほど前である
庭で一人遊びしていた徐倫につい声をかけてしまったのが始まりだ
幼い それでも承太郎によく似た強い目に惹かれたのだ

驚いて泣くかもしれないと思ったが以外にも徐倫はキラキラと自分を見つめて駆け寄ってきて「興味津々ですよ」と全身からオーラを出して色んなことを聞いてきた。
あなたは誰?お名前は?
こんなにお天気のいいのにそんなに大きな服を着て暑くない?
グリーンの煌めく目に根負けして結局自分のことを全部話していた

「僕は花京院典明 君のパパの……友達さ」
少しだけためらったのは自分たちが友達だったのか曖昧だったからだ

「僕はもう何年も前に死んでいるんだ…」
「そうなの…」
そこまで話しても怖がる気配はなくむしろ少し悲しそうな目になった

「僕が怖くないのかい?オバケなんだよ?」
「だってダディのお友達なんでしょ?怖くないわ!それに」
ン、と背伸びをしてーしゃがみこんではいたが、それでも花京院のほうがずつと背が高いー徐倫は花京院の髪を触る
普通ならば見てることもないはずなのに触られることに花京院は内心驚いていた

「チェリーみたいに綺麗な色でこんなにフワフワなのよそれだけでも素敵だわ怖くないわ!」

ニッと白い歯をのぞかせて笑う徐倫に花京院は目を見張った

「…かきょういん?」
まだ発音になれないのか少しだけ不自然に名前を呼ぶ徐倫に笑いかける

「そうか、ありがとう。ねぇ徐倫、僕と友達になっておくれよ」
「まぁ!嬉しいわ!もちろんよ!」
「でも、承太郎にはナイショだよ?」
「? どうして?」
「きっと僕がいきなり現れたりしたら承太郎はびっくりするからね。」
「うーん……わかった!ナイショにするわ!」
「ありがとう」
笑ってどちらからともなく小指を差し出して絡めた


その日から花京院はほぼ毎日空条家に住み着いている。
承太郎の手伝いを(ばれないように)してみたり
徐倫とこうやって話をしたり遊んだりする。
死んだはずの自分がこんなふうに平和に暮らしているのがいまでも時折不思議になる


「……ねぇ。かきょおいん」
「ん?何?」
考え事をしていたら徐倫の声で意識が戻ってくる

「いつか、ダディにもアナタのことが知れて、みんなで仲良く暮らせるかしら」

凛とした、大きな目でまっすぐと見つめながらそう言われる
そんなことは、本当は自分が一番知りたいけれど

「…きっと、いつかなるといいな。」

自分に言い聞かせるようにゆっくりとはっきりと言葉を紡ぐ

「いいな、じゃなくてそうするのよ!」
「あはは、徐倫は心強いな」

そう笑ってグリグリと頭をなで回すとやめてやめてと笑い出す
そんなことをしているとガタリとなにか音がした 承太郎が起きたんだろう

「徐倫?」
承太郎が後頭部をガシガシとかきながら顔を出す

「ダディ!」
「今、誰かと話してなかったか?」
「え、えぇと……」

少し騒ぎすきたろうかと戸惑う。
ばれないように花京院のほうに目をやると花京院は嬉しそうに笑われる

「徐倫?」
「え、えーと!」

胸を張っていたずらを思いついたようなキラキラとした笑顔で人差し指を唇に当てる

その横で花京院も見えないとはわかっているけど嬉しそうに同じように人差し指を唇に当てていた。





「「ナイショ!」」




ナイショの話-Fin-

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幽霊院と徐倫が仲いい妄想が止まりません。
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