これは誰も悪くないだろう
「っ……ぅあ、………っぁ」
「…は……っ、ごめ、なさい……っ」
彼も悪くないし自分にも罪はない
あるとしたら未成年に無理に飲ませたあの馬鹿女がいけないだろう
「ふ……んぅ……」
「ょ……ん、ごう……っは」
だから 咎められないんだろう
『午前4時、夜明け前』
ことのきっかけは本当に些細だった
いつもの如くみんなが家に集まっていた
まどつきが何だかんだと愚痴を吐きつつ料理をしていたし
うろつきとちえが楽しそうに手伝ってさびつきが酒を持って家に戻ってきたし
うそつきも やみつきもくらやみもいらつきもたつき達も 皆皆楽しそうだった
4号も同様に楽しそうだった Ericと永付き、それからなきつきと遊んでいた
4号と恋人という関係になってからもう半年経ったと思う
半年経ったところで何か変るかといったらそうでもなかった
休日に出かけるのは前から何度もあったし 手も繋いだり抱き合ったり普通に慣れた行為だった
ただ キスをすると照れたように笑うのは半年経ったいまも変わらない
それが可愛くてしょうがないのだ。
しかし、それで気が済むのかと言われたら嘘になるだろう
そりゃ自分だってけんぜんな成人男性だし好きな相手を前にして『そういう事』をしたくなるのは自然なことだ
ただそれが出来ないから困るのだ。
4号だって年頃だしそういう話をする時もあるけど 手を出せるわけじゃない
恋人の前に大事な弟なのだ というか男同士でするなんて人並みに知識があるかないかだし 4号が嫌がりそうで怖いのだ
そんな葛藤を日々続けていた 今日まで我慢してきたし明日もしていくつもりだった
準備が終わって机いっぱいの料理を前に各々席についた
今思うと何故4号の隣に座らなかったんだろう
「しーどーにぃっ!!」
「え、うわ、4号どうしたんで………酒臭っ!!!」
いきなり飛びついてきた4号は赤い顔でへらへらと笑っていた
手から伝わる体温は高く何より酒臭い ってか何で酔ってんだ
「どうしたんですか4号……」
「へへーなんか楽しいねー!!!うん!!」
「誰だー!!こんなにしたのー!!」
「何を隠そう私だ!!!!」
そういって嬉々として名乗り出たのは4号と同じく真っ赤になったさびつきだった
「何やってんだー!!!」
「いやーちょっとくらいならってね!!可愛かろう!!!」
「ばか!!ダメに決まってんだろ未成年だ!!!」
「口調がおかしいぞ〜しどのこぉ〜」
「誰のせいだと思ってんだあああああ!!!」
口調が素になってるのはわかっていたがそれどころじゃない
ニヘニヘと楽しそうに笑う弟 自分を呼ぶ恋人の声
温かい体温 見上げるのは赤くなった恋人
……いけない、これはいけない!!!
何がいけないって未成年が飲酒していることもだし何よりこれは自分が危ない!!
こんな大衆の前で理性なんか失いたくない!!!失ったら人として終わりだ!!!
「へ、部屋行きましょう4号!!!」
「おー!!」
「変な事すんなよーしどのこー!!」
「誰かこの酔っ払いどうにかしてくれ!!!」
酔ったさびつきと他の女性陣に茶化されながら4号を俗にお姫様だっこと呼ばれる形でリビングから連れ出した
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「大丈夫ですか……?」
とりあえずは4号の部屋に運んだ 男の子にしては片付いた部屋だろう
ベットに座らせる向かい合う形で床にしゃがみ込む
「うへーなんかクラクラするー」
「もう、さびつきは何してんだ……」
「えへへ」
ため息をつく自分と反対に嬉しそうにユラユラと体を左右に揺らす
さっきよりも良いもののまだ顔は赤みを帯びて視線がように湿っぽい
「ふふ、すげー楽しかったー」
「もう、未成年は駄目なんですよ」
「えーケチ!」
「そういう問題じゃないんです」
もう と呆れると顔をペタリと触れる 温かい
「しどにぃも飲めばいいのにー」
「まだ19ですよ」
「でも来月で20だろー一緒だろーえへへ」
屁理屈を言いながら笑う 手は相変わらずフニフニと頬をいじっている
(…気持ちいいな)
「しーどーにー 」
「ん? ってうおっわっ!!!」
気を抜いていたところに4号が名前を呼びながら飛び込んできた
受け止めきれず4号を上に倒れ込む
「ちょ……よ、よんごンむ…」
口を開いたところを塞がれる 柔らかい温かい感触 酒臭い
嬉しそうに首に手を回して離れようとしない
引きはがそうとするのに離れない 「男の子だなー」とかどうでもいいことを考え出す
「っ………っはぁ! ハァ………」
「えへへー 」
「4号…………お前ぇ……」
息一つ乱すことなくニコニコと笑う4号 なんだこれどうすればいいんだ
「しどにー好きー」
「はいはい」
「すげー好きなんだよー」
「うん」
知ってるからできたらこれ以上は
「大好きなんだよー一番好きー」
「……そう」
これ以上は
「………4号」
「んー?」
「これ以上ふざけたら……何するかわかりませんよ」
「……? うん、俺何されても怒んないよーしどにぃだもん」
これ以上は 限界だろう
その肯定を聞き終えたと同時に床に押し倒す
そこからは本当にぼんやりとしか覚えてない
それくらい 必死だったのだろう 離したくないと 必死だったのだろう
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目を覚ます どれくらい時間がたっただろう
一階からみんなの声が聞こえないところからして深夜だろうか
そう思いつつ枕元の時計に目をやると4時
……自分は何をしてただろう
確か酔った4号を部屋に運んでそれから……………
「…………………」
いや、待て何かの間違いかもしれない
ただ夢を見ただけかもしれないし 押し倒してそのまま寝たかもしれないし
でも横に静かに寝ている4号を見てそんな可能性が全てかき消される
「………んー」
「あ」
4号が小さく唸ったかと思ったら静かに目を覚ます
怪訝そうに眉を潜めてゆっくりと目を開ける
「………ぁ しど兄……あれ……?………ぁ」
ここは何処だと言うようにしばらく迷ってから思い出したのか小さく声を上げる
「あーそっか昨日……あ、あはは……」
「………ごめんなさい」
「え、何でなんで!? しど兄何もわるくないじゃん」
「……」
「そもそも昨日のはさび姉が飲ませるからだよーったく」
必死にごまかそうと笑う でも恥ずかしそうに目だけは他をむいていた
「…………4号」
「ほい」
「結婚してください」
「…………あぁ!?」
自分でも何を言ってるんだと思った
でも、ここまでして責任を取るというのがどういう方法か考えてこれしか出なかったのだ
そりゃ4号の反応は正しいだろう 起きてみたらベットの上で土下座の男に求婚されるなんて
俺だって嫌だ
「ごめんなさい、あんなことして……しかも4号も酔っていて正確な判断ができてないのに」
「………あのさ 順序逆じゃね?」
「………」
「普通さ?結婚してからこういうことはするもんじゃない?」
「……結婚前からする人もいますよ」
「そういう話をしてんじゃなーいの。 ってか準備とかしてなかったからしょうがないけどさー中出しちゃってんじゃん
どーすんのこれ絶対一日腹痛いよ」
「はい」
これは嫌われたんだろう 嫌われて別れようといわれるだろう
「あーあ俺初めてだったのになー……だからさ」
「…………」
「責任とってね」
「……!!!い、いいの」
「だってここまでして終わりってのもおかしいでしょー。しちゃったし」
「……4号」
「はい」
「結婚してください」
「喜んで」
ヘラリと笑う4号を抱きしめる 酔ってる時とは違う心地よい温かさだった
とりあえずあの馬鹿女………さびつきには感謝しなければならない
このままもうひと眠りして朝起きたら不満と感謝をこめて軽く殴っておこうと思った
『午前4時、夜明け前』
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Twitterでのむらぐちとの会話から産まれた産物です。
しど4可愛いよねー
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