東から徐々に空が滲みながらゆっくりと白くなる
砂漠の真ん中 沈まる中に二人は静かに座っていた
揃って目が覚めてしまった二人は声にするでもなくお互いの顔を見てため息をついた。
どうしようにもねる気にもならないし花京院は車の外を指さして承太郎を連れ出した
何もせず佇んで広大な空と砂漠を見つめる。時には座り込んで話をするときもある
長い旅の途中で朝夜は問わずに時折あることだった。
そして話を切り出すのは決まって花京院だった
「ねぇ、承太郎」
花京院からの呼びかけに答えるように目をやる承太郎
「死ぬまでにやっておきたい10の事って、あるかい?」
「10?」
怪訝そうに眉間にシワがよる
急に何を言い出すのかと思ったし、そういう話題はテレビなんかで見かけるが、それでも50とか100とかもっと大きな数だったと考えた
「10ってのはやけに少ねえじゃねぇか」
「…君ってばそんなに欲張りだったかい?」
「誰もそんなこと言ってねぇ」
「まぁ、50でも100でも10000でも…いくつでもいいけど 僕は容量がいいわけではないからね。10もあればいいのさ」
それまで承太郎に向いていた顔はゆっくりと目の前の夜明けに移動してゆく
「で、てめーはその『10の事』があんのか。」
「あぁ、あるとも。まぁそれは君がいないとできないんだけどね」
「俺だと?何でまた」
自分がいないと出来ない事とはなんだろうか。そもそも自分じゃないとできないこととは何なのか
「そうだなーまずは登下校を一緒にするんだ 他愛もない話をしながらね」
ゆっくりと語りはじめると同時に指折り数え始める。その視線はやけに楽しそうだ
「二つ目は一緒にお昼を食べるんだ。屋上でもどこでもいい。君が好きなところで 三つ目は互いの家に遊びに行くんだ。君の家に行ったことはあるけれど、遊びにって感じじゃなかったしねそれからーーー」
「ちょっと待て」
たまらずに制止をかける。花京院が目を見開いて自分を見ているが しょうがないだろう
「え…それは俺じゃなくてもいいんじゃあねえか……というかそんなくだらねえ事でおめえの人生使い切るのか…」
「…失礼だなぁ承太郎。知ってるだろ?僕が友達いなかったの」
少し不満そうにする花京院の事はわかっている。それでも承太郎はそんな事で…とぶつくさと何か言いたげに口をぱくぱくとしている
「それにね 承太郎とするから楽しいんだよ。きっと毎日が楽しい」
ふと耳に届いた言葉に承太郎は伏せていた顔をあげて花京院を見る その横顔は口を固く結び目はどこか遠くを見ているように凛としていた
「まだあるんだ。えーとね」
またさっきの続きから指を折数える花京院
四つ目は休みの日に出かけるんだ。どこでもいい。図書館でも長期休みは海とかもいいね
五つ目は…そうだなぁ。あ、今回回ってきた国を巡りたい!楽しいだろなぁ
六つ目は君に勉強を教わりたいな。できなくてもいいんだよ教わってみたい
七つ目は誕生日を祝いたい。プレゼントもケーキもいらない 二人でお互いに祝いあいたい
八つ目は…ここまで来るとスラスラでないなぁ…ケンカとかしてみたい。本音を言い合って最後は前より仲良くなってたり
九つ目は君とまた冒険をしたい。なにか起こったときは傍で支えたい
十個目は………
そこまでいって言葉が止まる
「十個目は?」
「…恥ずかしいけど、引かないでくれるかい?」
少し気まずそうにこちらを伺う花京院。ここまできて何を今更
「引かねえさ」
「そうかい?じゃあ言うけど」
ひと呼吸おいてこっちを見つめて嬉しそうに彼は口を開く
「君と、ずっと友達でいたいんだ」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
雨
土砂降りの中傘も刺さずに真新しい墓石の前に承太郎は立っていた
周りには人はおらず何も聞こえない
「……」
承太郎は何も言わず佇んでいる
「死ぬまでにしたい10の事…だったか」
重く開く口から静かに溢れたのはあの時の話だ。
「てめー……あの時のこと一つも終わってねぇだろうが…」
本来なら日本に戻ってきたらできたであろう事をもうしてやれない
承太郎が、花京院の為にどんなに足掻いてもしょうがない
「起きろよ、花京院」
俺のしてー事はどうなるんだ。
あの後承太郎のしたい事は何だい?と問われたが教えてやれなかった
教えたくなかったわけではないけれど 10なんかじゃ足りなかった
静かに座り込んで考えるように3つ沈黙があってからもう一度言葉は流れる
「俺がしたい事は……被っちまうが登下校をしたい。なかなか起きれねぇ俺をお前が起こしに来るんだ」
早くしろよ承太郎!毎朝毎朝ァ!
あら〜ごめんねぇ花京院君
あ、ホリィさんおはようございます。
そんなやりとりをする母親と彼が安易に想像でしてしまう自分が情けない
「二つ目は教科書の貸し借りだ。でも学年がひとつ違うから教科書が違うことに気づいておめーが怒りながら返しに来る」
承太郎!教科書が違う事知ってたろ!あぁもう!恥かいた!
忘れたのがいけないのに教科書片手に真っ赤になりながら返しに来るのだろう
「三つ目は飯を食うんだ。晴れた日は屋上で雨の日はどこかの教室で 」
「四つ目はうちで正月を迎えたらいい。でかいコタツが出るんだぜ、ウチは」
「夏休みは互いの家を行き来する。これが五つ目だ」
「六つ目は…似たようなもんだが海と花火だな。ジジイに頼んで遠出とかな」
「七つ目はお前と好きなものの話をしたい。何が好きか嫌いか。お前の好きなゲームの話をいくらでも聞いてやるぜ」
「八つ目は…そうだなぁ 大学に入ったらひとつの部屋で暮らすのもいいな。二人だから少し贅沢していい部屋借りたりな」
「お前とずっと友達でいるのは九つ目だ………それから」
口の中で小さくそれからともう一度繰り返して 言葉が出ずにだまり込む呼吸を一つして下げていた視線をあげて目の前の花京院を見つめる
「それから、10個目はお前とじゃないとできない。いや、お前がいても俺にはできなかったかもしれねぇ」
「それはな、花京院 」
――
やっと言えた言葉のあとに急に寂しさとかそういうものが込み上げて嗚咽する
「俺はまだひとつもやりとげてねぇ……やりとげられねえじゃねえかよ花京院!」
俺は、まだ
お前に好きと言えてないのに!
この先死ぬまでできやしないのだ一から9つ目まで、そして10個目も
『死ぬまでに君としたい10の事』-Fin-
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やだ承太郎さん女々しい。
砂漠の真ん中 沈まる中に二人は静かに座っていた
揃って目が覚めてしまった二人は声にするでもなくお互いの顔を見てため息をついた。
どうしようにもねる気にもならないし花京院は車の外を指さして承太郎を連れ出した
何もせず佇んで広大な空と砂漠を見つめる。時には座り込んで話をするときもある
長い旅の途中で朝夜は問わずに時折あることだった。
そして話を切り出すのは決まって花京院だった
「ねぇ、承太郎」
花京院からの呼びかけに答えるように目をやる承太郎
「死ぬまでにやっておきたい10の事って、あるかい?」
「10?」
怪訝そうに眉間にシワがよる
急に何を言い出すのかと思ったし、そういう話題はテレビなんかで見かけるが、それでも50とか100とかもっと大きな数だったと考えた
「10ってのはやけに少ねえじゃねぇか」
「…君ってばそんなに欲張りだったかい?」
「誰もそんなこと言ってねぇ」
「まぁ、50でも100でも10000でも…いくつでもいいけど 僕は容量がいいわけではないからね。10もあればいいのさ」
それまで承太郎に向いていた顔はゆっくりと目の前の夜明けに移動してゆく
「で、てめーはその『10の事』があんのか。」
「あぁ、あるとも。まぁそれは君がいないとできないんだけどね」
「俺だと?何でまた」
自分がいないと出来ない事とはなんだろうか。そもそも自分じゃないとできないこととは何なのか
「そうだなーまずは登下校を一緒にするんだ 他愛もない話をしながらね」
ゆっくりと語りはじめると同時に指折り数え始める。その視線はやけに楽しそうだ
「二つ目は一緒にお昼を食べるんだ。屋上でもどこでもいい。君が好きなところで 三つ目は互いの家に遊びに行くんだ。君の家に行ったことはあるけれど、遊びにって感じじゃなかったしねそれからーーー」
「ちょっと待て」
たまらずに制止をかける。花京院が目を見開いて自分を見ているが しょうがないだろう
「え…それは俺じゃなくてもいいんじゃあねえか……というかそんなくだらねえ事でおめえの人生使い切るのか…」
「…失礼だなぁ承太郎。知ってるだろ?僕が友達いなかったの」
少し不満そうにする花京院の事はわかっている。それでも承太郎はそんな事で…とぶつくさと何か言いたげに口をぱくぱくとしている
「それにね 承太郎とするから楽しいんだよ。きっと毎日が楽しい」
ふと耳に届いた言葉に承太郎は伏せていた顔をあげて花京院を見る その横顔は口を固く結び目はどこか遠くを見ているように凛としていた
「まだあるんだ。えーとね」
またさっきの続きから指を折数える花京院
四つ目は休みの日に出かけるんだ。どこでもいい。図書館でも長期休みは海とかもいいね
五つ目は…そうだなぁ。あ、今回回ってきた国を巡りたい!楽しいだろなぁ
六つ目は君に勉強を教わりたいな。できなくてもいいんだよ教わってみたい
七つ目は誕生日を祝いたい。プレゼントもケーキもいらない 二人でお互いに祝いあいたい
八つ目は…ここまで来るとスラスラでないなぁ…ケンカとかしてみたい。本音を言い合って最後は前より仲良くなってたり
九つ目は君とまた冒険をしたい。なにか起こったときは傍で支えたい
十個目は………
そこまでいって言葉が止まる
「十個目は?」
「…恥ずかしいけど、引かないでくれるかい?」
少し気まずそうにこちらを伺う花京院。ここまできて何を今更
「引かねえさ」
「そうかい?じゃあ言うけど」
ひと呼吸おいてこっちを見つめて嬉しそうに彼は口を開く
「君と、ずっと友達でいたいんだ」
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雨
土砂降りの中傘も刺さずに真新しい墓石の前に承太郎は立っていた
周りには人はおらず何も聞こえない
「……」
承太郎は何も言わず佇んでいる
「死ぬまでにしたい10の事…だったか」
重く開く口から静かに溢れたのはあの時の話だ。
「てめー……あの時のこと一つも終わってねぇだろうが…」
本来なら日本に戻ってきたらできたであろう事をもうしてやれない
承太郎が、花京院の為にどんなに足掻いてもしょうがない
「起きろよ、花京院」
俺のしてー事はどうなるんだ。
あの後承太郎のしたい事は何だい?と問われたが教えてやれなかった
教えたくなかったわけではないけれど 10なんかじゃ足りなかった
静かに座り込んで考えるように3つ沈黙があってからもう一度言葉は流れる
「俺がしたい事は……被っちまうが登下校をしたい。なかなか起きれねぇ俺をお前が起こしに来るんだ」
早くしろよ承太郎!毎朝毎朝ァ!
あら〜ごめんねぇ花京院君
あ、ホリィさんおはようございます。
そんなやりとりをする母親と彼が安易に想像でしてしまう自分が情けない
「二つ目は教科書の貸し借りだ。でも学年がひとつ違うから教科書が違うことに気づいておめーが怒りながら返しに来る」
承太郎!教科書が違う事知ってたろ!あぁもう!恥かいた!
忘れたのがいけないのに教科書片手に真っ赤になりながら返しに来るのだろう
「三つ目は飯を食うんだ。晴れた日は屋上で雨の日はどこかの教室で 」
「四つ目はうちで正月を迎えたらいい。でかいコタツが出るんだぜ、ウチは」
「夏休みは互いの家を行き来する。これが五つ目だ」
「六つ目は…似たようなもんだが海と花火だな。ジジイに頼んで遠出とかな」
「七つ目はお前と好きなものの話をしたい。何が好きか嫌いか。お前の好きなゲームの話をいくらでも聞いてやるぜ」
「八つ目は…そうだなぁ 大学に入ったらひとつの部屋で暮らすのもいいな。二人だから少し贅沢していい部屋借りたりな」
「お前とずっと友達でいるのは九つ目だ………それから」
口の中で小さくそれからともう一度繰り返して 言葉が出ずにだまり込む呼吸を一つして下げていた視線をあげて目の前の花京院を見つめる
「それから、10個目はお前とじゃないとできない。いや、お前がいても俺にはできなかったかもしれねぇ」
「それはな、花京院 」
――
やっと言えた言葉のあとに急に寂しさとかそういうものが込み上げて嗚咽する
「俺はまだひとつもやりとげてねぇ……やりとげられねえじゃねえかよ花京院!」
俺は、まだ
お前に好きと言えてないのに!
この先死ぬまでできやしないのだ一から9つ目まで、そして10個目も
『死ぬまでに君としたい10の事』-Fin-
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やだ承太郎さん女々しい。
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