ここはどこだ。
まっしろで、椅子のひとつもないその空間が夢の中なのだと気づくのは何秒もかからない。
いや、夢というか、夢のような別物というか。まぁ、そこはこの後話そう。
こんな所に来ることにももう何も感じなくなった。
ただ一つ考えるとすれば「あぁまたか」ということだ
東方仗助、俺には
「やぁ仗助くん。こんばんわ」
一人厄介な友人がいた
『夢の中の』
「どうもっす、花京院さん。」
花京院という男。正確には花京院典明というらしい。
本人から聞いた名前だが明らかにインパクトのある苗字しか俺の頭には残らなかった
ふわふわと揺れる前髪が目にかかるのか手でよけるような仕草をする。
「だからその花京院さんってやめようよ」
「だってあんた俺より年上なんでしょ?」
「生きてたらそうなるけど…君と同じくらいで死んでるんだから関係ないじゃないか」
「そういうもんっすかねぇ。」
花京院典明……花京院さんは承太郎さんと同級生で、17歳で命を落としているらしい。
だから夢に出てくる彼は若いままだし学生服を着ている。
『同い年みたいなものだから呼び捨てで構わないのに』と彼はいうけれど、正直あの承太郎さんと同級生なんていわれたら敬語にもなるというもんだ
とりあえずたって長話もなんなので……というか毎回のことだからどちらからというわけでもなくその場に座る。
あぐらを書く俺とは正反対に花京院さんは姿勢よく正座で座る。
最終的には足崩して座るんだから…と思うがあえて言わない。
「最近なにかあったかい?」
「そっすねぇ……あ、億泰がトニオさんとこでバイトはじめた。」
「そうなの?トニオさんってあのイタリア料理の人だろ?」
夢の中で彼と一つすること、それは話をするだけだ。
花京院さんがエジプトに行った時の話をしてくれたり今日みたいに俺がその日あったことを話したりする
今日は俺の話みたいだ。
「すごいなぁ。でもあの子料理とかできなさそう」
「いや、あいつは結構デキるみたいっすよ。試しにやらせたら腕が良かったらしくて、弟子にしたいーってトニオさんが。」
「そしたら彼、なんだって」
「そーいうのは人の作ったもんのがうまいってさ。」
「アハハ、彼らしいじゃあないか。」
そういえば夢はその人の深層心理の表れだとか、欲求の表れだとか難しーことなんかできいたけど、この人に関してはそれだけはないと思う。
そもそも最初に自分から「僕幽霊だから」みたいなこと言ってきたし俺はこの人のことを一切知らなかったから会おうとか思うわけがない。
だから本当に花京院さんが俺のところに話をしにきてるんだと思うけどこんなこと話したら露伴センセーあたりに笑われかねないから誰にも言わない
もちろん、承太郎さんにもだ。
「彼が料理覚えたらお弁当作ってもらえば?」
「うぇー…野郎に弁当作ってもらってもよぉ…」
「美味しければいいと思わないかい?」
「思わー…………ねえっ!いくら考えても無理っ!かわいー女の子がいい!」
「じゃああの子は?えっと……由花子ちゃん、だっけ?」
「もっ……とねえッ!!」
ふざけてその場に倒れ込むと「わがままだなぁ」と笑い声が聞こえる。
「承太郎のお母さんは料理がうまかったらしいよ」
「そーなんすか?」
「うん、ジョースターさんに聞いただけだけど、見るからに家庭的な人だったから相当上手だったんじゃあないかな?」
「へー。承太郎さん羨ましいなあ。うちの母親ホントに簡単なもんしか作らねえっすもん。」
「でも手料理たべれるって羨ましいなぁ。僕は一生無理だから。」
「……」
じ、と花京院さんの顔を見る。切れ長の目はどこか遠くを向いていて、本人は大きくて嫌だというがさほどきにならない口はきゅっと結ばれている。
綺麗な顔だなと男相手に思うのはおかしいかな、じゃあこれなんて言い表すの?日本男児ってやつ?
でもそれもなんか違うんすよねぇ……やっぱ綺麗って言い方が一番しっくりくる。
「やっぱり、母親に会いたくなるもんスか?」
「…さすがに何年も経ってるからすっごく会いたいとかはないけど、たまに会いたくなるね。それに黙って家を出たから」
「じゃあ、承太郎さんは?」
「……」
自分でも何を考えてるのかわからないがそんなことを口にすると花京院さんがこちらを向く。
「…僕らは会って間もなかったし、最初の時は承太郎を殺そうとしていたから友達かと言われたら微妙なんだよね。もしかしたら承太郎は僕が嫌いかもしれないね。」
「この間、じじいが昔話始めたついでにあの人にアンタの話を聞こうとしました。」
「なんだって?」
「なんも答えてくれなかったすよ」
表情に変化はないが口元が動いたのを見逃さなかった。
「ただ、話とか、もっとしとけばよかったとは言ってたけど」
「……」
「それって少なくとも友達になりたいと思ってるんじゃあないんスか?仲良くしとけばって思ってるってことじゃないんすか?」
「仗…」
「あの人でさえそんな風に自分のこと言えるのになんであんたは何も言わないんだ……行こうと思えばあの人の夢にだって行けるんだろ?」
夢の中に会いに行くなんてそんなの乙女チックな発想だと自分でも思っているけれど問い詰めずにはいられない。
この人は昔のことは全部話してくれるけれど自分が何を考えたかなんて言ってくれたことはない
「あんたは、あの人とどうなりたかったんすか!」
「……」
さすがにもう座る体勢に戻っているが今度は花京院さんの顔が見えない。俯いていて伺えない。
ふと、顔を上げた。にっこり、というかやんわりと微笑んでいる。
「そうだね。僕は友達が欲しかったのかもしれないし、そういう目で承太郎を見ていたかもしれない」
「……じゃあ」
「それがわかったところでどうしろと言うのさ?今更夢に現れても困るだろ?」
「…俺のとこには容赦なく来るのにな」
「まぁそれは単に暇つぶしと、君が気になるってのもあるよね」
「……なんだって?」
まっすぐにこちらを見据えて笑っているが瞳だけは冷たく輝いている
「じゃあ逆に聞くけど、君は承太郎をどう思うんだい?」
「そんなの…」
「ただの甥だと思うかい?突然あんな奴が自分の甥だとやってきて、何度も何度も戦っている姿を見せられたらそりゃあ思春期の男子らしく憧れたりするだろうね」
「……」
「でも君のソレは憧れじゃないだろう?」
「やめ……」
「君こそ、あいつとどうなりたいのさ」
「やめ、て」
喉から出た声は消えかかって頼りのない声だった。
所詮夢だと割り切ればいい。そんな、俺が承太郎さんをどう思っているかなんて、こんな夢で左右されるようなことじゃあないし
そもそも、夢なのだから覚めてしまえばそれで終わるのだから
は、と気づく。
これが夢じゃないといったのは自分じゃないか。
この人がこうやって現れるのは夢とかじゃなくて本当に話をするために干渉だとかしてるなら
夢だと割り切る以前の話だ。
つい、下げていた目線をあげて花京院さんを見る。まだニコニコとしている。
どこかで、電子音が聞こえる気がする
「俺、は」
「うん」
「好きかもしれない」
「うん」
「どうしたらいいんすか…」
「そんなこと言われても君のことだから僕にはなんにもできないよ」
「そんなっ……」
「ここからは君が考えることだ。ほら、目覚ましが呼んでるよ」
先ほどから聞こえていたのは目覚ましの音だったのか。
いつも気になんかしないでギリギリまで寝てるというのに今日に限って鳴り響いている
「花京院さんっ!!」
「ほら、また会いに来るよそれまで頑張って」
目覚ましの音は更に大きさを増して自分の声さえ聞き取りにくい。
「正直いま僕は承太郎より君が―」
だから、花京院さんが何を言ったか理解できなかった。
ガシャンッ
衝突音のような音で意識が戻る。床に目をやると壊れた目覚ましが転がっていた。
どうせスタンドで治せるから、と特に気にしない。
「…」
最後に彼はなんと言っていたんだろう。承太郎さんより俺がなんだというのだろう
彼の口の動きを思い出す
承太郎より、君が……
「…気になるだって?」
口にするとその言葉の意味がさらに形を作り出す。
つまり、それは、そういうことになるのだろうか
「……あんのクソったれ…!!」
なんと夢見の悪い朝だと言わんばかりに外は土砂降りらしかった。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ネタメモ_(:3 」∠)_
夢だけど夢じゃなかった的な空間。
多分花京院は仗助に昔の承太郎さんの粗さを見てるといい。
絵にするから大体わかればいいかと思ったら長い。
花京院→仗助→承太郎さんくらい。
まっしろで、椅子のひとつもないその空間が夢の中なのだと気づくのは何秒もかからない。
いや、夢というか、夢のような別物というか。まぁ、そこはこの後話そう。
こんな所に来ることにももう何も感じなくなった。
ただ一つ考えるとすれば「あぁまたか」ということだ
東方仗助、俺には
「やぁ仗助くん。こんばんわ」
一人厄介な友人がいた
『夢の中の』
「どうもっす、花京院さん。」
花京院という男。正確には花京院典明というらしい。
本人から聞いた名前だが明らかにインパクトのある苗字しか俺の頭には残らなかった
ふわふわと揺れる前髪が目にかかるのか手でよけるような仕草をする。
「だからその花京院さんってやめようよ」
「だってあんた俺より年上なんでしょ?」
「生きてたらそうなるけど…君と同じくらいで死んでるんだから関係ないじゃないか」
「そういうもんっすかねぇ。」
花京院典明……花京院さんは承太郎さんと同級生で、17歳で命を落としているらしい。
だから夢に出てくる彼は若いままだし学生服を着ている。
『同い年みたいなものだから呼び捨てで構わないのに』と彼はいうけれど、正直あの承太郎さんと同級生なんていわれたら敬語にもなるというもんだ
とりあえずたって長話もなんなので……というか毎回のことだからどちらからというわけでもなくその場に座る。
あぐらを書く俺とは正反対に花京院さんは姿勢よく正座で座る。
最終的には足崩して座るんだから…と思うがあえて言わない。
「最近なにかあったかい?」
「そっすねぇ……あ、億泰がトニオさんとこでバイトはじめた。」
「そうなの?トニオさんってあのイタリア料理の人だろ?」
夢の中で彼と一つすること、それは話をするだけだ。
花京院さんがエジプトに行った時の話をしてくれたり今日みたいに俺がその日あったことを話したりする
今日は俺の話みたいだ。
「すごいなぁ。でもあの子料理とかできなさそう」
「いや、あいつは結構デキるみたいっすよ。試しにやらせたら腕が良かったらしくて、弟子にしたいーってトニオさんが。」
「そしたら彼、なんだって」
「そーいうのは人の作ったもんのがうまいってさ。」
「アハハ、彼らしいじゃあないか。」
そういえば夢はその人の深層心理の表れだとか、欲求の表れだとか難しーことなんかできいたけど、この人に関してはそれだけはないと思う。
そもそも最初に自分から「僕幽霊だから」みたいなこと言ってきたし俺はこの人のことを一切知らなかったから会おうとか思うわけがない。
だから本当に花京院さんが俺のところに話をしにきてるんだと思うけどこんなこと話したら露伴センセーあたりに笑われかねないから誰にも言わない
もちろん、承太郎さんにもだ。
「彼が料理覚えたらお弁当作ってもらえば?」
「うぇー…野郎に弁当作ってもらってもよぉ…」
「美味しければいいと思わないかい?」
「思わー…………ねえっ!いくら考えても無理っ!かわいー女の子がいい!」
「じゃああの子は?えっと……由花子ちゃん、だっけ?」
「もっ……とねえッ!!」
ふざけてその場に倒れ込むと「わがままだなぁ」と笑い声が聞こえる。
「承太郎のお母さんは料理がうまかったらしいよ」
「そーなんすか?」
「うん、ジョースターさんに聞いただけだけど、見るからに家庭的な人だったから相当上手だったんじゃあないかな?」
「へー。承太郎さん羨ましいなあ。うちの母親ホントに簡単なもんしか作らねえっすもん。」
「でも手料理たべれるって羨ましいなぁ。僕は一生無理だから。」
「……」
じ、と花京院さんの顔を見る。切れ長の目はどこか遠くを向いていて、本人は大きくて嫌だというがさほどきにならない口はきゅっと結ばれている。
綺麗な顔だなと男相手に思うのはおかしいかな、じゃあこれなんて言い表すの?日本男児ってやつ?
でもそれもなんか違うんすよねぇ……やっぱ綺麗って言い方が一番しっくりくる。
「やっぱり、母親に会いたくなるもんスか?」
「…さすがに何年も経ってるからすっごく会いたいとかはないけど、たまに会いたくなるね。それに黙って家を出たから」
「じゃあ、承太郎さんは?」
「……」
自分でも何を考えてるのかわからないがそんなことを口にすると花京院さんがこちらを向く。
「…僕らは会って間もなかったし、最初の時は承太郎を殺そうとしていたから友達かと言われたら微妙なんだよね。もしかしたら承太郎は僕が嫌いかもしれないね。」
「この間、じじいが昔話始めたついでにあの人にアンタの話を聞こうとしました。」
「なんだって?」
「なんも答えてくれなかったすよ」
表情に変化はないが口元が動いたのを見逃さなかった。
「ただ、話とか、もっとしとけばよかったとは言ってたけど」
「……」
「それって少なくとも友達になりたいと思ってるんじゃあないんスか?仲良くしとけばって思ってるってことじゃないんすか?」
「仗…」
「あの人でさえそんな風に自分のこと言えるのになんであんたは何も言わないんだ……行こうと思えばあの人の夢にだって行けるんだろ?」
夢の中に会いに行くなんてそんなの乙女チックな発想だと自分でも思っているけれど問い詰めずにはいられない。
この人は昔のことは全部話してくれるけれど自分が何を考えたかなんて言ってくれたことはない
「あんたは、あの人とどうなりたかったんすか!」
「……」
さすがにもう座る体勢に戻っているが今度は花京院さんの顔が見えない。俯いていて伺えない。
ふと、顔を上げた。にっこり、というかやんわりと微笑んでいる。
「そうだね。僕は友達が欲しかったのかもしれないし、そういう目で承太郎を見ていたかもしれない」
「……じゃあ」
「それがわかったところでどうしろと言うのさ?今更夢に現れても困るだろ?」
「…俺のとこには容赦なく来るのにな」
「まぁそれは単に暇つぶしと、君が気になるってのもあるよね」
「……なんだって?」
まっすぐにこちらを見据えて笑っているが瞳だけは冷たく輝いている
「じゃあ逆に聞くけど、君は承太郎をどう思うんだい?」
「そんなの…」
「ただの甥だと思うかい?突然あんな奴が自分の甥だとやってきて、何度も何度も戦っている姿を見せられたらそりゃあ思春期の男子らしく憧れたりするだろうね」
「……」
「でも君のソレは憧れじゃないだろう?」
「やめ……」
「君こそ、あいつとどうなりたいのさ」
「やめ、て」
喉から出た声は消えかかって頼りのない声だった。
所詮夢だと割り切ればいい。そんな、俺が承太郎さんをどう思っているかなんて、こんな夢で左右されるようなことじゃあないし
そもそも、夢なのだから覚めてしまえばそれで終わるのだから
は、と気づく。
これが夢じゃないといったのは自分じゃないか。
この人がこうやって現れるのは夢とかじゃなくて本当に話をするために干渉だとかしてるなら
夢だと割り切る以前の話だ。
つい、下げていた目線をあげて花京院さんを見る。まだニコニコとしている。
どこかで、電子音が聞こえる気がする
「俺、は」
「うん」
「好きかもしれない」
「うん」
「どうしたらいいんすか…」
「そんなこと言われても君のことだから僕にはなんにもできないよ」
「そんなっ……」
「ここからは君が考えることだ。ほら、目覚ましが呼んでるよ」
先ほどから聞こえていたのは目覚ましの音だったのか。
いつも気になんかしないでギリギリまで寝てるというのに今日に限って鳴り響いている
「花京院さんっ!!」
「ほら、また会いに来るよそれまで頑張って」
目覚ましの音は更に大きさを増して自分の声さえ聞き取りにくい。
「正直いま僕は承太郎より君が―」
だから、花京院さんが何を言ったか理解できなかった。
ガシャンッ
衝突音のような音で意識が戻る。床に目をやると壊れた目覚ましが転がっていた。
どうせスタンドで治せるから、と特に気にしない。
「…」
最後に彼はなんと言っていたんだろう。承太郎さんより俺がなんだというのだろう
彼の口の動きを思い出す
承太郎より、君が……
「…気になるだって?」
口にするとその言葉の意味がさらに形を作り出す。
つまり、それは、そういうことになるのだろうか
「……あんのクソったれ…!!」
なんと夢見の悪い朝だと言わんばかりに外は土砂降りらしかった。
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ネタメモ_(:3 」∠)_
夢だけど夢じゃなかった的な空間。
多分花京院は仗助に昔の承太郎さんの粗さを見てるといい。
絵にするから大体わかればいいかと思ったら長い。
花京院→仗助→承太郎さんくらい。
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