暖かな布団。聞こえるのは鳥のさえずりと車が遠くで行き交う音
チラ、と携帯に目をやると無機質な文字は7時を記している。
幸い今日は日曜日だ。あぁ、もう一眠りしてもいいなぁと布団に潜り直したところで

「いつまで寝てんだスカタンッ!」
「おうっふぇ!?」

背中の衝撃と罵声に驚いて布団から顔だけのぞかせるとそこにいたのは腕を組んで朝から機嫌が悪そうに口をへの字に曲げたシーザーだ。その片脚はまだ自分の背中を踏んでいる

「…Good morning Caesar………」
「あぁ、Good morningだぜJojo。さぁ、早く出ろ。俺が5数えるまでにな。」
「だーーっ!!折角の日曜日なんだぜぇ!?頼むから寝かせてくれよっ!!」
「バカ言ってんじゃあねぇッ!!だいたい今日は一日忙しいんだッ!!」
「はぁ?なんで……ってあぁ、そうか。そういうことねン」
寝起きにしては回転の早い頭で理解したジョセフを見てシーザーはふん、と鼻を鳴らす
「わかったら早く起きろよ」
「へいへい、わかったよ。なんたって今日は……」


JLDK! 01:ジョースターハウスへようこそ。

「やぁ、おはようジョセフ。」
リビングに行くと思ったとおりジョナサンが起きて朝食の用意をしていた。なんだかんだ眠くても馴染みのコーヒーの香りを嗅ぐとスイッチが入って眠気が飛ぶ。
「おはよージョナ兄。」
「シーザーありがとね。」
「いえ、まぁ一番はコイツが自主的に起きてくれることなんだけどなぁ?」
ジョナサンに返事をしつつ睨むような目でジョセフを見上げるシーザーと目を合わせないように視線を明後日の方向へ流す。
テーブルに目をやるとディオが定位置で新聞を捲っている。こちらには見向きもしない
「ささ、ご飯にしよう。ディオ、新聞たたんで」
ジョナサンが席につきながら声をかけると少しばかり眉間にシワを寄せながらも素直に新聞をたたんでテーブルの端に置いた
シーザーとジョセフも自分の場所につく。それを確認すると嬉しそうにジョナサンが手を合わせる、それに続くようにほかの三人が手を合わせる

「いただきます。」

全員の声が重なって食事が始まる。いつもの変わらない光景だ。
「それにしても……んぐ、ジョセフはそろそろ自分で起きた方がいいよ」
サラダを咀嚼しながらジョナサンが話し始めた
「それをいうなら兄ちゃんもモノ食べながらしゃべる癖直した方がいいぜ」
それに対してジョセフも言い返す。
「お前もそんな変わんないぜ。ガチャガチャうるさいし」
「いや、俺はちゃんと飲み込んでからしゃべるぜ?」
「どっちもどっちだこのマヌケ」
ディオが正論を叩きつけたところでジョナサンが話を戻す
「でも、さすがにその年で起きれないのはダメじゃないかい?」
「いやーさすがに3人も体内時計が正しいやつと暮らしてるとどうも甘えちまうな」
「嘘吐け。お前昔も起きれてなかったじゃねえか」
「そう?」
「え、もしかしてジョセフ…二人で暮らしてた時もシーザーに起こしてもらってたのかい?」
「おう!」
シーザーとジョセフはここに来る前はシーザーのアパートで暮らしていた。特にこの点については今説明することではないが、その頃からジョセフは朝誰かに起こしてもらっていたのだ
「すいません…俺が甘やかさなければこんなことには…」
「いや、シーザーは悪くないよ。悪いのはジョセフだしね」
「えーっ俺かよ」
「ジョセフ、お前がしっかりしてないからシーザーに迷惑をかけてたんだよ?というか、なんで自宅勤務のシーザーより学生だった君の方が遅いんだい?」
「いや、だってさ…シーザー毎朝起こすときさぁ…」
そこまで聞いてシーザーが焦ったように顔を上げる。
「毎朝毎朝、ジョージョー、おーきろーって起こすんだぜ?自分も寝起きだから寝ぼけてるし、舌っ足らずでもう可愛くて余計起きれないってえの。それに起きないとそのま」
「ジョジョ」
「ん?何?」
ジョセフの言葉を遮ったシーザーはジョセフの方を向く
「そっから先言ってみろ……殺すぞ」
「怖っ!昔の話しただけじゃんっ!!!」
このままだとシーザーが本気で怒りかねないのでジョナサンが仲裁にはいる
「と、とにかく!ジョセフは周りに頼らずに起きれるようにした方がいいよ。」
「だって、誰かに起こしてもらうって幸せじゃん…」
「まぁ、それはわかるけど……」
「わかっちゃうんですかっ!?」
つい流されるジョナサンにシーザーがすかさずにツッコミを入れる。いつもどおりのシーザーに戻ったようだ
「誰かに起こされるってわかってるから安心して眠れるし、気ィ張らないから疲れないし。なぁ」
「そうなんだよ。お布団暖かいんだよこの時期……」
「そのおかげでこのディオが余計な働きをするんだがな」
「感謝してるよぉ……ディオのおかげで僕寝坊してないし……」
ジョナサンがディオの肩にもたれるように横に倒れ始めるのでこのままでは話が進まないとばかりにシーザーは話を変える

「そ、そういえば!ジョータロウと、かっかきょういんは何時頃来るんですか?」
まだ二人の名前に慣れていないのか発音が怪しいシーザーの横でジョセフが笑いをこらえようとしているが堪えきれずニヤニヤと笑っている
「ああ、お昼頃に来るよ。部屋の掃除は昨日のうちに済ませてしまったし、あとは二人が来るのを待つだけだね」
「はー楽しみだなぁ。承太郎なんて、前あったのいつだろうなぁ…」
「新年の集まりじゃないかい?そういえばシーザーは実家に帰っていたから会ってないんだね。」
「そうですね、ドキドキしますね…」
「おやぁ〜?シーザーちゃん、緊張してるの?かぁわい」
「お前だけ昼食ビーフシチューにハンバーグつけてやるな。」
「重いッ!!」

そんな他愛もない話をしている端でテレビではニュースキャスターが8時を伝えた

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二人が来たのは予定より15分ほど早かった
とりあえず荷物を全員で家の中に運び入れたがそんなに大きな荷物はなく、あったとしても本棚や机しかなく、あとは衣類などの細々したものだった為それほど時間を要さなかった
仕事を終えた引越し社のトラックが遠ざかっていくのを見届けた後ジョセフがパン、と手を鳴らした
「よっしゃ!つーわけでっ!よく来たな二人ともっ!」
「何様なんだ貴様っ!」
「あはは…お疲れ二人とも」
「まぁ、よく来たな。」
それぞれが声をかける先にはボストンバッグを持った承太郎とその後ろに隠れるように一歩引いて花京院が立っていた。

「悪いな。突然で」
「いいんだよ。家族が増えて楽しいじゃないか」
「一人分の家賃せるしなっ!」
「ジョセフ黙って。いらっしゃい花京院君。」
「あ、どうも」
ジョナサンが声をかけると一瞬驚いたような顔をしてから小さく返事をした。 それを見てジョナサンは何が嬉しいわけでもないだろうがふわりと笑う。
「ほら、自己紹介しろ」
承太郎はそう促すとトン、と花京院の背中を押して前に立たせる。一瞬躓きそうになりながらもなんとか立ち直った。スッと伸ばされた背丈は承太郎に比べれば劣るもののそれなりに高く、大きな体だった。赤い前髪が揺れて翡翠色の瞳にかかる
「あ、えっと…花京院典明、です。よろしくお願いします…」
「うん、よろしくね」
「いやーっしばらく見ねえ間に背伸びたなぁカキョーイン!」
そういってジョセフが近寄ると花京院の表情が少し和らぐ。
「あ、お久しぶりです。ジョースターさん」
「もーっ!何でいつまでたってもそっちで呼ぶんだよォ!」
「ジョジョ、」
ジョセフの袖を引いてシーザーが呼ぶ
「ん、あぁ。そうかシーザーちゃん二人とも初対面だもんな。えっとこのデカいのが俺の弟の空条承太郎。で、こっちがカキョーインな。」
「でかいのっておめえも似たようなもんだぜ…」
そういいながら向き合った承太郎にシーザーは一瞬怯む。身長はジョセフとほぼ同じくらいだろう。だか、威圧感に押された
「…あんたがシーザーか」
「え、あぁまあ……」
シーザーのほうが年上のはずなのに何故か立場が逆転しているような気がするがそんなことを気にするほどシーザーに余裕はない。
だからなのか突然目の前に差し出された手に一瞬戸惑った
「え…」
「いつもうちの兄貴達が世話になってるな……よろしく頼むぜ」
「あ、あぁ……」
握り返した手の暖かさにジョセフやジョナサンと似たものを感じてやっぱり兄弟なんだな、と思うと一瞬で頬が緩む
「こちらこそよろしく、承太郎」

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そのあと承太郎とディオがなんとなく険悪な空気を漂わせ始めたのでジョナサンが家の中に荷物を運び込むことを

「さっ!大きな荷物は部屋まで引越し屋さんが運んでくれたけど他の物はまだ玄関にあるし、それにこんなところで話してないで早く中で落ち着こうよ。」
ジョナサンの提案に真っ先にジョセフがのった
「よっしゃ。じゃあ早く運んで休もうぜ。しかしお前ら段ボールに名前書いて分けてあるじゃん、几帳面なー」
感心しながら目をやったのは積まれたダンボールだ。それぞれに黒のマーカーか何かで二人の名前が書かれている。もっと細かく見ればさらに「衣類用(冬物)」とか分類されていてさすがに自分じゃここまでできないとジョセフが口にした
「普通はここまでするんだよ。おめーがやらねえだけで」
「だってぇ。めんどくさくない?どうせ部屋で広げれば一緒なんだし」
「そういって引っ越してきたときにアレがないーコレがないーって騒いだのはどこのどいつだっかなぁ」
「ンもう。シーザーちゃん冷たいなぁもう」
「はーいはい。じゃれてないで運ぶよ。承太郎と僕とディオ、花京院君とジョセフとシーザーに別れて運ぶよ」
「あの……」
ジョナサンが簡単に分担を発表したところで花京院が申し訳なさそうに声を上げる
「ん?どうしたんだい?」
「あの、えっと…僕屋根裏とかでいいんですけど…」
「は?」
素っ頓狂な声をあげたのはジョナサンだった。思いもしなかった言葉につい声が上がる。しまったと言うように口元を押さえる。
「どォしたんだよ花京院」
「いや……部屋借りるの申し訳ないですし、それに星とか綺麗に見えるところがいいなって…」
恐らく屋根裏ならば天窓から空が見えるとかそんな発送だろう。だが残念なことにこの平屋には文字からわかるように二階などないしあったとしても屋根裏なんて贅沢なものはない。
花京院に返答したのはジョナサンたちの誰でもなく承太郎だった
「この平屋には屋根裏なんかねえぜ花京院」
「え、そうなの?」
「あぁ、あったとしても駄目だ。使わせねぇぜ」
「なんでだい?いいじゃないか別に……」
「じゃあ貴様は屋根裏を使わせるんだな?」
突然、承太郎とは別の声が聞こえてそちらに目を向けるとそれまで黙っていたディオが腕を組んで壁にもたれかかっていた
「え……」
「じゃあ僕は邪魔になるので屋根裏でいいです。そうやって誰かが言い出した時、お前は黙って使わせるのかと聞いているんだ」
「つ、使わせない…です」
「何故だ」
「せっ、折角皆でいるのに…なんだか…それじゃいけないと思うから」
「そのとおりだ。そしてそれはお前も同じだ」
下をむいていた花京院の視線が上がる。少し怪訝そうな顔だ
「ここにいる奴らはだれも迷惑だとか思ってないぞ。そんな気を使う必要もないしな」
「ちょっとォ、それどういうこと」
不満そうにジョセフが声を上げるがそれに反応することなくディオは続ける
「それに、家族にそんな気を使う必要も意味もないしな」
「……」
花京院の目が少しばかり開かれる。息を呑んだがその音は誰の耳にも届いていなかった
「そうだよ、家族なんだから気を使わないでくれていいんだよ。」
「むしろ、もっと頼ってくれていいんだぜ〜?」
「お前にだけは頼りたくないがな」
「……シーザーちゃんほんっと可愛くないね。」
驚いたままその会話を半分聞き流していた花京院に承太郎が声をかける
「言ったろ。こういう奴らだって」
「……そうだね」
そう頷くとやっと落ち着いたように花京院は姿勢を正した
「あの、花京院典明です。これから、迷惑もかけると思います。でもよろしくお願いします」
そう一息に言うと綺麗にお辞儀をする。その動きと一緒に前髪が揺れた。
一瞬間があってからジョセフが明るい声を出す
「そう!それだぜカキョーインッ!よろしくなぁ!」
「痛いっ!ジョースターさん痛い!」
バンバンと花京院の背中を叩くジョセフにシーザーが怒鳴る
「ジョジョ!お前ただでさえ馬鹿力なのにそんな強く叩いたらなぁ!」
「へーへー!ホラ、早く運んじまおうぜ!!」
逃げるようにジョセフが段ボールを担いで廊下をかけて行く。それに次ぐようにシーザー、承太郎、そして花京院が続く。最後に残された形になったのはジョナサンとディオだ。段ボールに手をかけながらジョナサンが話しかける
「驚いた」
「…なんのことだ」
「さっきのことさ。家族なんて君がいうと思わなかったよ」
「いつまでもウジウジしてるのに腹が立っただけだ。」
「それでも驚いたんだよ。君って態度に出さないけど昔からそうだよね。そういうとこ好きだよ」
「……フン」
不機嫌そうな顔のまま去って行くディオをみてジョナサンが笑う。

それが照れ隠しだって僕、知ってるんだけどなぁ

まぁ、いいか。と呟いて残りのダンボールを取りに来たシーザーとすれ違いながら廊下を歩いていった



いらっしゃい!承太郎、花京院!




JLDK !01:ジョースターハウスへようこそ。 end


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承太郎と花京院がやってきました。

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空条承太郎(25)
ジョースター家三男。苗字が違ったりするのはまた後々。
冷静で物静か。お酒が入ると誰よりもはしゃぐ。
実はすごく頼りになる優しいお兄ちゃんだがそれが表情に出ない
大学で海洋学専門の講師。
花京院のことは好きだし大事にしてるけどやっぱり表に出ない

花京院典明(18)
人見知りが激しい。慣れるとものすごく頼りにしてくれるし頼りになる
多分六人の中で一番冷静な目で物事を見れる人。
承太郎のいる大学で天文学を習う。なんで天文学に進んだかはまた別のお話で。
付き合ってるとかではないけど人生の先輩として、恋愛対象として承太郎は好き。
承太郎がすごく自分のことを大事にしてくれるなぁってのは理解してる。
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