――おはよう、ジョセフ・ジョースター君。
―ここは、どこ…ってうおお!?体若い時に戻ってるゥーーーッ!?
――君は長い人生を全うした今、こうやってさ迷っているんだよ
―フゥン……いわゆる『あの世とこの世の間』ってコト?
――そう思ってくれて構わないよ。

さて、ジョセフ・ジョースター君。長い人生を勇敢に、そして無事乗り越えた君にひとつねがいをかなえてあげよう
―ハァ?何それ。何でも叶えてくれちゃうわけぇ?ハン、アホらしい。こちとらそんなんで釣られるほど若かねえのよ。今は若いけどな
――そうだね。なんでもいいよ。次の人生はこんな人間がいい、大金持ちでもなんでもいい。なんなら、前世やり残したことをやりたいとかね。
―そんな夢みたいな話がねぇ…まぁ夢みたいなもんか
――何かないかな?心残りなことをなくしたいとかなんでもいいんだよ。
―…なんでもいいんだな?
――あぁ。もちろんさ
―じゃあ俺は人生で一つだけやり遂げられなかったことがある。俺はそれをずっと悔やんできた。それを、やり直したい
――そう、その願いは問題なく遂げられるだろう。
ところで、その『一つ』を教えてくれるかな?

――………一人の友人を、いや…








―シーザーを救えなかった事、かな。



Connect01:いつかどこかで会った、ような。

高い天井は崩れて、見上げれば外の景色が見える。
広いフロアは瓦礫で溢れ、砂埃で視界がぼやける。ただ、中央の一箇所と入口から光が差し込んでいる。
体は動かない。ただ、血と埃にまみれたその手には一本のバンダナと小さな指輪のようなもの。
……誰かが呼ぶ声がする
立っているのは一人の若い男。何かを叫んでいるようだが何も聞こえない。
ふいに視界に影がさして上を見上げれば崩れた天井が落下してきていた。
若い男にそれを託す。本当に最後の一瞬、見えたのは見えなくなるその姿と、赤い、赤いシャボン玉
それで―――

「シイイイイイザアアアアアアアアッ!!!」

「っ!」
ハッと意識が戻るとそこは車の硬い座席の上だった。
ハ、ハと短い呼吸を繰り返して脳に新鮮な酸素を送る。
波紋使いに会うために、という理由でとあるホテルに向かっている車の中、いつの間にか眠っていたらしいシーザーは今見た夢のことを考える
なんだ、今のは。身に覚えのないその記憶。それでも鮮明に思い出すことができる。
呼吸を繰り返してなんとか思考がはっきりとし始める。ホテルに着く頃には夢のことなど少しばかり違和感は覚えるが特に問題はないものとして結論づけることができた。

ホテルの1階にある食堂のガラスドアを開ける。落ち着いた音楽が流れるその空間には何組かの客が嬉しそうに話をしながら食事をとっているのが伺える。
周りを見渡していると、一人の男に気がつく。
座っているから正確にはわからないものの190はあるんじゃないかという高身長とがっしりとした肩幅の広い体格。
ブルネットの髪と透き通るようなグリーンの瞳。
どこかで会っただろうかと考える。だが、あんな特徴的な人物を忘れることがないだろうと思ったが、どこでいつ会ったのかが全く思い出すことができない。
じっと見つめていたら不意にこちらに気がついて、見過ぎたかと思ったら立ち上がりこちらに近づいてきた。
リーチの長いその足は交互に大きく踏み出されて目の前に並んだと同時に声をかけられる
「アンタが、シーザー・A・ツェペリだろ?」
どうしても見上げる形になってしまうその男の顔は明るく、にこやかだ。
一瞬どうしていいかわからずに間があいたが差し出された手を見て握り返す
「ああ、俺がシーザーだ。あんたは」
「ジョセフ・ジョースターだ。よろしくな。」
そう名乗った男に何か引っ掛かりを感じたが、特に気にはならなかった

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
その後ジョセフ・ジョースターと名乗る男とともに仲介役になったスピードワゴンの元へ向かう
「ニューヨークからわざわざ来たんだろ?なれない環境で疲れてるんじゃあないのか?」
「いや、ちょっとした旅行だと思ったらなんともないさ。それにここはいいところだ」
他愛もない会話をしながら説明された部屋まで歩く。ジョセフの後ろを追いかけるように付いていく。
突き当たりまで行くとジョセフは迷いもなく左折する。
「……迷わないんだな」
「ん?」
「道だよ。初めて来たホテルだろ?よく迷わないじゃあないか」
振り向かないから表情が見えないが一瞬考えるような間があく
「……ほら、部屋番号とかプレートにあるだろ?だから何となくな。」
「そうか…それはわるかったな。」
「いーや、いいって。」
そして再び訪れる沈黙。なかなか会話が思うように弾まない。緊張しているのも多少あるだろうか、いや。ふった話題そのものが弾むようなものではなかったが、ただそんな理由のためだけに部屋までこの廊下を黙って歩くのは長すぎる。シーザーは口を開いた
「なぁ。」
「ん?今度は何か?」
「お前とは、どこかであったことがあるだろうか」
それを聞くとジョセフは歩を止めた。
「……なんでそんなことを?」
「え?あぁ、いや。なんだか初めてあった気がしなくてな。まるで……」

「いつかどこかで会った、ような」


シン、と廊下が沈まる。なにか気に障るようなことを言っただろうか
「あ、あの」
何か喋ろうと口を開くとジョセフが振り返る。先程とちがう、冷たいような視線で体に力が入る
「シーザー」
「な、なんだよ…」
何を言われるのだろうと不安になる。数秒、いやもっと短かったけもしれない沈黙のあとジョセフはパン、と手のひらを目の前で合わせる
「ごめん、階間違っちゃった」
「……はぁ?」
さっきの態度とは裏腹にヘラヘラと笑うその男にやっぱり気のせいだったかと肩を落とすことになった。



Connect01:いつかどこかで会った、ような-fin-
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