あぁ幸福の花嫁!何をそんなに嘆くのか!

君は今幸福なんだ!
純白のドレスに身を包み隣には最愛の男
青い空のしたで愛しい友人や家族に囲まれ

君は今幸福で満たされているはずだ!

それなのに君は一体何を嘆くのか!






『幸福の花嫁の嘆き』


「結婚してください」

20歳の誕生日の夜
綺麗な夜景をバックになんて洒落たことはない
ただデートの帰り道 いきなり立ち止まるかと思えばそう告げられた

目の前にいる男は10以上も年上の男 ギャリー

9歳の時不思議な美術館で倒れている彼を見つけ冒険をして
不思議なものと出会って 逃げて 戻ってきた

その時はそれだけだと思った相手が友人になり親友となり恋人になった

今日はいつもみたいな格好をしていない
ボサボサの髪の毛を後ろで括り 綺麗なスーツに身を包んでいるけれど
いつものボロボロのコートの方が好きだと思った


「…ぇ」
「イヴももう大人になるし、私もそろそろいい年だし……って、そうじゃなくて!!」
いつもの口調はそのままだが真剣に彼はもう一度告げる

「私と結婚してほしいの、イヴ」

嬉しかった
そろそろ そんな話になるとは思ったがやはり嬉しいのだ

だが

「………」

なんだ、これは

「…イヴ?」

この、胸に何かつっかえるこれは 違和感は 感情は

「イーヴ?」
「えっ………あ、ごめんなさい」
「んもう!ちゃんと聞いててよね!!わりと恥ずかしいのよ」

拗ねるような仕草をするギャリーに謝りをいれる

「ごめんね、びっくりしちゃった………」
「まぁ……いきなりだもの……」
「…ギャリーは私なんかでいいの?」
「今更何いってんのよ。私はイヴじゃなきゃだめなの」
「…エヘヘ、ふつつかものですがよろしくお願いします」
「そんな言葉どこで覚えるのよ……うん、よろしくね」

そんなやりとりをして二人で笑う

だが胸のつっかかりは取れなかった
じわじわと もやもやと残っていた

- - - - - - - - - -

それからずっとその違和感は続いた

普段は小さくもやもやとするのにふとした時に大きくなるのだ

親への挨拶のときも
式の取り決め
ドレス選びのときも
友人へ招待状を出すときも

そして

「もう……明日なのねぇ」
「……」

こうしてギャリーといるとき一段と大きくなる

「……」
「イヴ、本当にいいの?」
「え?」

ギャリーの部屋 イヴが引っ越してくることを考えて少し物の減った部屋
その片隅の古ぼけたソファで隣にいるイヴに問う

「最近ずっとボーっとしてるから、嫌なのかと思って」
「ち、ちが」
「やぁね、わかってるわよ。もし嫌ならとっくにふられてるわ」

アハハと笑うギャリー 心配をずっとかけていたのか
「…ごめんなさい…」
「いいのよぅ!そりゃ嬉しいばっかじゃないわよね。不安よね」
「…最近ね、ずっとモヤモヤしてるの。それは結婚が嫌なわけじゃなくて」
「うん」
「…なんだろう…何かひっかかっているの……」
「……そう」

ぽつぽつと呟くイヴの言葉にただ相槌をうつギャリー

「わからないんじゃ、しょうがないわ。
いつか、その時がきたら消える」
「うん………ごめんね。ありがとう」

膝を抱え込むイヴの頭を静かに撫でる
それで少し違和感は和らぐ

「その時が来るまでは、頑張らなきゃ」
「うん」

- - - - - - - - - -

だが 当日になってもそれは消えなかった

控え室でギャリーがウェディングドレスのイヴを見て母とはしゃぐときも
教会に足を踏み入れたときも
愛しい人の横で愛の誓いを立てるときも

違和感は続いていた








一連の儀式が終わると友人や家族の待つ外へ出るため入り口にたつ

「まだ、違和感はとれない?」
「うん」
「…そう、まぁ今は楽しまなきゃね」
「…うん」

頷いて足を踏み出す

開いた扉の先にはたくさん友人と家族
花のゲートと青い空と それから

それから









ッゴーン ゴーン



「え…」

頭上から響く鐘の音

だが今回は鳴らす予定ではなかった筈だ


ゴーン ゴーン

イヴだけじゃなくギャリーも来客もみんなざわついていた
戸惑いを隠せていなかった


「誰が……こんな」



そう誰かが呟いたとき




「…あ」


空から舞い落ちてきたのは


「バラ…?」


青い空に綺麗に映える赤い薔薇と
赤を更に際立てる青い薔薇

わぁと歓声があがる
誰かのサプライズだろうという結論で落ち着こうとしていた

じゃあ

「誰の……?」
「……イヴ、上、みて」

ギャリーに名前を呼ばれ上を向けば



ゆっくりと


踊るように

赤と青の花弁と共に


黄色の薔薇が一輪 イヴの手に収まる


「………ぁ」
「たく、憎い演出するわよねぇあの子も 」

悟ったように呟くギャリーと
固まった思考がゆるゆると涙腺とともに解けるイヴ


「ギャリー……もやもやの意味がね、わかったの」
「うん」
「そうだ…メアリーだぁ…」


違和感の正体は一人の小さな友人だった


9歳の時迷った美術館で出会った少女
綺麗なブロンドに 海のような青い目と 明るい黄緑のワンピース
黄色い薔薇を持って嬉しそうに笑う

メアリーのことだ

最後のあの時目の前で悲しい顔のまま燃えてきえた


「ずっと、……気になってたの、…メアリー、は あそこで、一人だったのに、
私が、ともだ、ち……だった、の、に……あの時……私は」

「…あれはイヴだけの責任じゃない。私にもあるでしょ」

「でも…… 私だけ大人になって…………幸せでメア、リーはどう……思うかって………
ずっと、そればっかり…気、になってぇ」

嗚咽を混じらせつつ言葉にするイヴと背中をさするギャリー

「でも、心配いらなかったわね」
「ん……」

小さく頷いて目線をあげる

青い空にもう鐘の音は響かないけれど
薔薇の花弁もないけれど

それでも良かった もう大丈夫
胸の違和感は何処かに溶けて消えた


「ありがとう………メアリー」





幸福の花嫁は幸福に包まれる










幸福の花嫁



いつぶりに小説かいたかなぁ……

小説かな……これ









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