夢を見た

それは、いつもの世界を歩き回るような夢とは別だという感覚があった

薄暗い ぼんやりとしたその空間は上下感覚があまりなく、それでも自分の足がついているこちらが『下』なんだろうと思う
どうしたものかと思っているといつの間にか数m先に人が立っている

見覚えのある自分よりわずかに高い背丈と服装 茶色の少しカールのかかった髪
そして最初は暗さで確認しにくかった顔を見てその人物が誰か特定される

あぁ、Eric.じゃあないか。
(なんで、この男を知っているんだろう)
そんな違和感を覚えながらも自分はこの男のことを認識していた

その整った顔はいつもと同じに考えている事がわからない読み取れない表情だ
(いつも?いつもって何だよ。)


「やぁ永付き」
「…よう」

ふにゃりと顔を歪め―それで考えがわからない。貼り付けたような表情だ―笑顔を作る
知っているはずなのに警戒してしまうのが自分でも良くわからなかった

「もっとこっちで話をしよう。おいでよ」

そういって手を伸ばされる。ゆっくりと歩いて近づく
ピタ、と何故か永付きの足は彼の二歩手前で止まる。伸ばされた手に答えることができない
なんだ、なんだろう。ここに何か境界線があるようななにか違和感で進めない
そう思っているとグッと腕をひかれる
転ばぬようにと咄嗟に足を踏み出す。

「はい。到着」

Eric.に手を引かれたことで戸惑っていた『何か』をあっさりと越えてしまった。足元を見つめるがもう何も違和感はない

ふと視線を上げると薄暗かったそこはぼんやりと靄のかかったように白く明るい場所だった。ただ、明るさが変わっただけで上下感覚がつかめないのは変わらなかった

「ここで座って話をしよう」

そう言いつつペタリと座り込んだEric.の向かいに座る。膝を抱えて座っていたのでなんとなく自分も同じ座り方だ


「なにか言いたいことはないかい?」
「…俺はお前が嫌いだ」
いまいち誰かもわからない男に急にこんなことをいうのもおかしいと分かっていたがそれでもするりと口からでたのは嫌悪だった

「どんなところが?」
「…何を考えているかわからないところ、誰にでも好かれるところ、いつもヘラヘラしてるとこ、俺は何も知らないのにお前は俺を知ってるところ」

自分は何を言っているんだろう 何を一体。彼が自分を知ってるなんてどこに確証が
ふと寂しさのような何かを感じて膝を抱え込む。自分の声はひどく弱かった

「…それ以上に俺は、俺のことが嫌いなんだ」
「君は、自分のどこが嫌いなんだい?」
「…いつも下をむいて歩くところも、すぐ嫌なこととかが顔に出るのも、さっきもそうだ。何かのせいで一歩踏み出せなくて臆病なところも」
全部、嫌いなんだ 後半は消えそうな声で絞り出す
きっと、めんどくさいと思われてるんだろうなぁ。と思っていた

「…足元を見ているということは、不注意で転ばない」
聞こえた声に耳を傾ける。落ち着いた、子供をあやすような声だ

「感情が顔にでやすいのは人に不快感も与えるかもしれないが、不安を与えないことでもある」
「それに、臆病なのは注意深くものを考えられることだ」

彼は視線を膝に落としたまま語っていた

「君は、僕にないものを持っているから、嫌いじゃないよ」

この人は一体どこまで知ってるんだろう。本当に。どこまで。

視線は永付きを向いている。その考えを読み取れない表情が今はとても暖かく穏やかに見えた

「君は、自分のどこが嫌いなんだい?」

さっきと何一つ変わらない質問をされる 。
ただ、さっきと同じに答えを返すことができない
僅かな言葉だけで、目の前の男をあっさり信用していることには気づいていなかった

「俺は、」

自分の声は震え

「俺の、どこが嫌いなんだろう」

表情は酷く、歪んでいることだろう




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「っ!」

勢いで布団を剥いで飛び起きた
部屋の外はまだくらい。夜明けはまだ来ないのだろう

嫌な汗はかいていないが息が少し上がっている
つ、と頬を線をなぞるように涙が伝うとなにかがこわれたようにボタボタと涙が出た

「っ……ふ、ぅ」

掌で目を覆うがそれでも指の間からボタボタと涙は伝う

もう夢の中であった男はぼんやりとしか覚えてないし名前も思い出せないけれど

それでもあの一言は頭から離れないでいた



―君は、自分のどこが嫌いなんだい?―


「俺は、」




夜明けはまだ、来ないのだ







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ずっと書きたかったのだけど即効で書くといまいちようわからん。
おやすみなさい。
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